- 2026年07月29日
建設業の実行予算とは?作成目的・内訳と見積り・原価との違いを解説
原価管理・利益管理

「実行予算」という言葉は知っていても、見積りや原価とどう違うのか、いつ、何のために作る数字なのかが分からない、という方は少なくありません。
実行予算は、工事ごとに作成する社内の原価計画です。この記事では、実行予算の定義、積算・見積り・実際原価などの類似概念との違い、作成する目的、内訳の構成、そして作成後の活用イメージまでを順に解説します。具体的な作成手順や運用方法については、関連記事で詳しく解説しています。
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建設業における実行予算とは
実行予算とは、受注した工事を実行・管理するために作成する、社内向けの原価計画です。工事ごとに費目別の原価上限を設定し、工事中に発生する実際の原価と比較するための基準として使います。一般的には、積算・見積りで受注金額が決まった後、着工前を中心に作成されます。ただし、作成のタイミングや詳細な手順は、会社のルールや案件の状況によって異なります。
実行予算は、「この工事にいくらまで使えるか」を費目ごとに明確にしたうえで、工事中の原価を管理するための社内基準として機能します。顧客へ提示する見積金額や、完成後に確定する実際原価とは、目的も使用場面も異なります。
積算・見積り・実行予算・実際原価の違い
建設業では、受注から工事完了までの過程で複数の「数字」が登場します。それぞれの目的と使われる時期が異なるため、整理しておくと実行予算の位置づけが理解しやすくなります。| 用語 | 主な時期 | 目的・性質 | 主な利用者 |
|---|---|---|---|
| 積算 | 受注前〜見積り段階 | 図面・仕様書から数量・費用を算出する作業 | 積算担当者 |
| 見積り(見積金額) | 受注前 | 顧客へ提示する価格をまとめる業務・金額 | 営業・積算担当者 |
| 見積原価 | 受注前 | 見積りの過程で社内算出する原価の見込み | 積算・原価管理担当者 |
| 実行予算 | 受注後〜着工前(目安) | 工事を実行・管理するための社内原価計画 | 現場責任者・管理部門 |
| 実際原価 | 工事中〜完了後 | 実際に発生した原価の集計 | 現場・経理・管理部門 |
積算と見積りの違い
積算は、図面や仕様書をもとに、工事に必要な材料の数量や作業量、それに対応する費用を算出する作業です。見積りは、その算出結果などをもとに、顧客へ提示する価格をまとめる業務全体を指します。積算は見積りの前段階として行われることが多く、両者は密接に関係していますが、作業の性質は異なります。積算の具体的な方法については、積算とは?意味や見積りとの違いで詳しく解説しています。
見積原価と実行予算の違い
見積りの過程では、顧客へ提示する「見積金額」とは別に、工事に必要な原価の見込みを社内で算出します。これが見積原価です。実行予算は、受注後に工事の実行・管理を目的として作成する社内の原価計画です。見積原価を参考に作成することもありますが、着工前の現場条件の確認や社内調整を経て、より実務に即した内容へ組み立て直す場合もあります。見積原価が「見積り段階の概算」であるのに対し、実行予算は「この工事をどう管理するかの基準」という性質の違いがあります。
なお、見積原価と実行予算の関係や作成方法の粒度は、会社や案件によって異なります。
実行予算と実際原価の違い
実行予算は事前に設定する原価の計画値(目標値)、実際原価は工事中・工事後に実際に発生した原価の集計値です。工事を進める中で、実際原価が実行予算をどれだけ上回っているか、または下回っているかを把握することが、原価管理の基本になります。工事原価の区分や計算の詳細については、工事原価とは?主な内訳と計算方法をご参照ください。
実行予算と基本予算の違い
「基本予算」という言葉が使われることもありますが、その意味や範囲は会社によって異なります。会社全体の年間・四半期予算を指す場合もあれば、工事ごとの初期予算を指す場合もあります。自社で「基本予算」という呼称を使っている場合は、社内の定義を確認してください。本記事では、工事単位の原価計画を「実行予算」として説明しています。
実行予算を作成する目的
実行予算を作成する主な目的は、次の3点です。工事の目標利益を明確にする
受注金額が決まっていても、工事を実行するうえで費目ごとにいくらまで原価を使えるか、どの程度の利益を目標とするかが、管理基準として整理されていないことがあります。実行予算を作成することで、費目ごとの原価上限と目標利益を社内で明示できます。
受注金額から実行予算の合計(原価計画)を引いた差額が、その工事の目標利益の目安になります。この数字を工事開始前に確認しておくことが、利益管理の起点になります。
現場・発注・購買の判断基準をそろえる
費目ごとに予算を設定することで、材料の購買や外注先への発注、現場での判断において、「この費用は予算内か」を確認できる基準が生まれます。予算がないと、担当者ごとに判断基準が変わりやすくなります。実行予算は、複数の担当者や部門が関わる工事において、共通の管理基準として機能します。
予算と実績を比較して工事の状況を把握する
工事中に実際原価を集計し、実行予算と比較することで、その時点での原価の過不足を把握しやすくなります。差異が大きい費目を早期に発見できれば、工事完了前に対応を検討する余地が生まれます。建設業における実行予算の内訳
実行予算に含める主な費目
実行予算書には、工事に発生する原価を費目ごとに分類して記載します。一般的な費目の例は以下のとおりです。- 材料費:工事に使用する資材・材料の費用
- 労務費:自社作業員に支払う賃金・手当など
- 外注費:下請業者や協力会社への発注費用
- 機械費:建設機械・重機のリース・運搬費など
- 仮設費:足場・仮設電気・養生など工事に付随する一時的な費用
- 現場経費:現場監督の人件費、交通費など現場運営に関わる費用
工事原価の詳しい区分や計算については、工事原価とは?主な内訳と計算方法をご参照ください。
実行予算書の簡易例
以下は、実行予算書のイメージを示す簡易な例です。実際の書式や費目設定は会社によって異なります。| 費目 | 予算額(円) |
|---|---|
| 材料費 | 1,200,000 |
| 労務費 | 800,000 |
| 外注費 | 2,500,000 |
| 機械費 | 300,000 |
| 仮設費 | 200,000 |
| 現場経費 | 300,000 |
| 原価合計 | 5,300,000 |
| 受注金額 | 6,500,000 |
| 目標利益 | 1,200,000 |
実行予算の作成から予実管理までの全体像
作成から実際原価との比較までの流れ
実行予算の活用は、作成して終わりではありません。一般的な流れは以下のとおりです。- 必要情報を確認する:図面・仕様書・見積書・現場条件などを確認する
- 費目ごとに予算を設定する:工事に必要な原価を費目別に見積もり、予算額を決める
- 社内で承認・共有する:現場責任者や管理部門と内容を確認し、関係者へ共有する
- 工事中に実際原価と比較する:発生した原価を集計し、実行予算との差異を確認する
紙・Excel・原価管理システムで管理する
実行予算の管理方法は、紙の台帳、Excel、原価管理システムなど、会社の規模や運用に応じてさまざまです。紙やExcelでも管理は可能です。一方で、工事情報が複数の帳票やファイルへ分散し、工事中の原価・利益の状況を確認しにくいと感じている場合は、専用のシステムの利用を検討する選択肢もあります。
弊社の建設業向け原価管理システム「要 〜KANAME〜」は、工事台帳をベースに見積り・請求・注文書・日報・現場資料等をまとめ、工事ごとの収支をリアルタイムに把握できるシステムです。Excelで工事台帳を作成する具体的な方法については、工事台帳をExcelで作成する方法もあわせてご参照ください。
建設業の実行予算に関するよくある質問
Q1. 実行予算は工事中に見直す必要がありますか?
会社や案件のルールによりますが、工事の条件が大きく変わった場合や、実際原価が実行予算を大幅に上回るような状況が生じた場合は、必要に応じて見直すことがあります。「必ず見直す」「見直さない」という一律のルールではなく、自社の管理方針を確認してください。Q2. 実行予算と見積原価は同じ金額になりますか?
同じ金額になる場合もありますが、必ずしも一致するとは限りません。実行予算は、受注後に現場条件や発注予定、施工方法などを確認し、工事管理に使用する基準として調整されることがあります。Q3. 実行予算はいつ作成しますか?
一般的には、工事を受注した後から着工前までを中心に作成します。ただし、案件の規模や社内の承認フローによって、作成・確定する時期は異なります。まとめ
実行予算は、受注した工事を管理するために作成する、社内向けの工事別原価計画です。顧客へ提示する見積金額や、工事後に確定する実際原価とは目的が異なり、費目ごとの原価上限と目標利益を工事開始前に明示する役割を持っています。積算・見積り・実行予算・実際原価の関係を理解しておくことで、工事の原価管理の全体像が把握しやすくなります。




