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  • 2025年10月29日

建設業の工事原価管理のやりやすい方法|難しい理由と実践メリットを紹介

建設業に関する知識案件管理
建設業の工事原価管理のやりやすい方法|難しい理由と実践メリットを紹介

建設業における工事原価管理は、多岐にわたる費用構成や長期にわたる工期、外部環境の変化といった業界特有の事情から「難しい」と感じる方が少なくありません。
しかし、適切な原価管理は企業の利益確保と安定経営に不可欠です。

この記事では、建設業の工事原価管理が難しいと言われる理由を深掘りし、その上で効果的な管理方法について詳しく解説します。
この記事を読むことで、経営者や管理部門の担当者様が直面する工事原価管理の課題を解決し、安定的に利益を出し続けるための具体的なヒントを得られるでしょう。

建設業の工事原価管理とは?

建設業の工事原価管理とは、建設工事で売り上げを出すためにかかった費用、すなわち材料費、労務費、経費、外注費などの原価を管理し、コストを改善することです。売上から工事原価を差し引いたものが利益となるため、この管理は企業の利益に直結します。

工事原価管理が必要な理由は、原材料の高騰や人件費の増加、残業規制といった外部環境の変化により、建設業が財務状況の悪化リスクに直面しているためです。
適切な原価管理を行うことで、工事の利益を最大化し、持続可能な事業運営が可能になります。

具体的には、積算の最適化や適正価格での受注、実行予算の策定を通じて、工事ごとの収益性を高めることが重要です。
また、原価管理は、品質や工期を守りながら利益を確保するために、工事にかかる費用を管理することでもあります。

関連記事:
【すぐ実践できる】原価管理とは?目的やメリット、管理方法の全体の流れをわかりやすく解説
 

工事原価管理の目的は「利益の見える化」

工事原価管理を行う最大の目的は、会社が手掛ける各工事の利益を正確に把握し、最終的な収益の最大化を図ることです。
建設業においては、材料費、労務費、経費、外注費など、多岐にわたる費用が発生します。
これらの原価を計画通りに管理することで、予算超過を防ぎ、無駄な支出を削減できるメリットがあります。

例えば、工事の途中で材料費が高騰した場合でも、早期にその情報を把握できれば、代替品の検討や仕入れ先の見直しといった対策を迅速に講じることが可能です。

 

工事原価管理がもたらす3つのメリット

この工事原価管理がもたらすメリットは、単にコストを削減するだけでなく、会社の経営判断を迅速かつ正確にすることにも繋がります。

 

コスト削減で利益率を高められる

まず、コスト削減につながることが挙げられます。
工事にかかる材料費、労務費、外注費、経費などの費用を詳細に把握し、計画通りに進んでいるかを確認することで、予算超過を防ぎ、無駄な支出を削減できます。

例えば、工事の途中で材料の単価が上がってしまった場合でも、その変動を早期に察知できれば、より安価な代替品を検討したり、他の仕入れ先を探したりといった対策を迅速に講じることが可能です。

これにより、全体の費用を抑え、結果として利益率の向上に貢献します。

 

リアルタイムの把握で迅速な経営判断ができる

迅速な経営判断が可能になることも大きなメリットです。
リアルタイムで原価状況を把握できれば、「この工事は計画通りに進んでいるか」「現時点での利益率はどのくらいか」といった情報を常に確認できます。

問題が発生した場合でも、すぐにその原因を特定し、適切な対応策を打ち出すことができるため、赤字工事のリスクを低減し、会社の安定的な経営基盤を構築するのに役立ちます。

例えば、特定の工程で作業が遅れていることが判明すれば、人員配置の見直しや作業手順の改善を早急に行うことで、工期遅延による追加費用を未然に防ぐことができます。

 

積算精度の向上で競争力ある見積もりができる

最後に、積算精度が向上し、競争力のある提案ができるようになります。
過去の工事実績データを詳細に分析することで、次の工事の積算(見積もり)の精度を高めることができます。

どの費用がどのくらいかかったのか、計画と実績にどのような違いがあったのかを具体的に把握することで、より現実的で正確な見積もり金額を算出できるようになります。

これにより、適正な価格で工事を受注できるだけでなく、他社との競争において優位に立ち、会社の収益性をさらに高めることにつながるでしょう。

 

建設業の工事原価管理が難しい理由

建設業の工事原価管理は、その複雑さから「難しい」と言われることが少なくありません。
しかし、この工事原価管理の難しい理由を理解することは、適切な対策を講じ、メリットを最大化するために非常に重要です。

建設業が抱える特有の課題が、原価管理を難しくしている主な原因です。
具体的には、下記のようなことが挙げられます。
  • 勘定科目の特殊性
  • 工事の性質による原価変動の複雑さ
  • 外部要因や業界構造の複雑さ
  • 現場と経理の情報分断と属人化
これらの理由を詳しく見ていくことで、なぜ工事原価管理が難しいのかを理解し、今後の対策を検討する上での重要なヒントが得られるでしょう。

 

勘定科目が特殊だから

建設業における勘定科目は、その特殊性から工事原価管理を難しくする要因の一つです。
一般の企業会計で用いられる勘定科目とは異なり、建設業では「完成工事高」や「完成工事原価」、「未成工事支出金」といった建設業特有の科目を使用します。
これらは、工事が着工から完成までの長期にわたる期間を考慮したもので、工事の進捗に応じて会計処理を行う「工事進行基準」や「工事完成基準」といった会計処理の方法と密接に関係しています。

例えば、未成工事支出金は、完成前の工事にかかった材料費、労務費、外注費などの費用を一時的に資産として計上するための勘定科目です。工事が完成して売上が計上されるタイミングで、この未成工事支出金が完成工事原価に振り替えられます。

このような特殊な会計処理は、一般的な商品売買を行う会社とは異なり、工事の途中で正確な利益を把握することを困難にします。
月次や四半期ごとに経営状況を把握しようとしても、工事が完成するまで費用が売上原価として認識されないため、実際の費用発生と会計上の費用計上に時間差が生じてしまいます。

この時間差が、経営者や管理部門の担当者がリアルタイムで工事の利益状況を把握するのを難しくし、迅速な経営判断を妨げる要因となるのです。
特に複数の工事が同時並行で進行している場合、それぞれの工事の進捗度合いや費用発生状況が異なるため、この特殊な勘定科目体系が原価管理の複雑さを一層高めます。

 

工事の性質上「売上や原価が動くタイミング」が複雑だから

建設業では、材料費や人件費などの原価が変動するタイミングが複雑であるため、工事原価管理が難しくなります。
その理由として、工事の着工から完成までには長期にわたる期間を要することが挙げられます。

例えば、大規模な建築工事では、計画段階から基礎工事、躯体工事、内装工事と、複数の工程を経て数ヶ月から数年に及ぶことも珍しくありません。
この長い期間の中で、材料の仕入れや外注費の支払い、労務費の発生といった原価は、それぞれ異なるタイミングで発生するため、売上計上と原価発生に時間差が生じやすいのです。

また、建設業では、工事の進捗に応じて売上を計上する「工事進行基準」や、工事が完了した時点で売上を計上する「工事完成基準」といった特殊な会計処理が用いられます。
これらの基準によって、費用が発生した月と、それが売上原価として計上される月が一致しないことがあり、月次や四半期ごとの正確な利益を把握するのを困難にしています。

例えば、ある月に材料を大量に仕入れて費用が発生しても、工事が完成するまでその費用が売上原価として計上されない場合、一時的に費用だけが先行して計上され、会計上の利益が実態と乖離してしまうことがあります。

さらに、工事の途中で設計変更や追加工事が発生すると、それに伴って原価も変動します。
当初の計画にはなかった資材の追加購入や、工期の延長による人件費の増加など、予期せぬ費用が発生する可能性も考慮しなければなりません。

これらの要因が重なり、建設業における売上や原価の動きは非常に複雑になり、計画と実績の比較や、リアルタイムでの利益把握を難しくしているのです。

 

外部要因と業界構造が複雑だから

建設業の工事原価管理が難しい理由の一つに、外部要因と業界構造の複雑さが挙げられます。
建設業界は景気や金利の変動、資材価格の高騰、人件費の上昇、労働力不足など、多様な外部要因の影響を受けやすい性質があります。

例えば、近年の原油価格の高騰は、アスファルトやセメントといった建設資材の製造コストに直結し、材料費を大きく押し上げる要因となります。
また、円安の進行は輸入資材の価格上昇を招き、国内の建設費用全体に影響を与えることがあります。

このような外部要因によるコスト変動は、長期にわたる工事において特に顕著であり、当初の計画と実績との間に大きな乖離を生じさせる原因となります。

さらに、建設業界特有の多重下請け構造も、原価管理を複雑にしています。
工事は元請け会社が受注し、その一部または全体を専門工事業者に外注することが一般的です。
時には、さらにその専門工事業者が別の業者に再外注するケースもあり、複数の会社を介して工事が進められます。

このような構造では、各段階で異なる利益が上乗せされるため、元請け会社が工事全体の正確な原価を把握することが難しくなります。
また、各下請け業者からの請求書のタイミングや形式が統一されていないことも多く、経理部門での集計作業が煩雑になり、リアルタイムでの原価把握を妨げる要因となります。

こうした外部要因と多重下請け構造の複雑さは、建設業の工事原価管理において、計画段階での精度の高い積算を困難にし、実行予算と実績のズレを発生させやすくしています。
予期せぬコスト増が発生した場合でも、原因の特定や対策の実施が遅れがちになり、結果として利益率の低下を招くリスクが高まるのです。

 

現場と経理で情報が分断され、属人化しているから

建設業の工事現場では、その日使った材料や作業した時間など、費用に関わる様々な情報が発生しますが、これらの情報が経理部門にリアルタイムで正確に伝わらないことが多々あります。

例えば、現場担当者が手書きの伝票や日報で情報を管理し、それを月末にまとめて経理に提出するような運用では、データの集計や入力に時間がかかり、タイムラグが生じてしまいます。

このような情報伝達の遅延は、経理部門が最新の工事原価を把握することを困難にし、予算と実績の乖離に気づくのが遅れる原因となります。

また、現場で発生する費用は多岐にわたり、一つ一つの費目を細かく追っていく必要がありますが、これらの情報が特定の担当者の知識や経験に依存してしまう「属人化」の問題も深刻です。

特定のベテラン社員しか知らない費用発生のルールや、特定の業者との取引履歴など、共有されていない情報が多いと、担当者が不在の際に原価把握が滞り、業務がストップしてしまうリスクがあります。

さらに、現場と経理の間で使われる言葉や認識が異なることも、情報の分断を加速させます。
現場では「あの資材」や「この作業」といった感覚的な言葉が使われがちですが、経理では「材料費」「労務費」といった勘定科目に落とし込む必要があります。
このギャップがスムーズな情報連携を阻害し、互いの業務を理解しづらくする要因となります。

このような情報の分断と属人化は、本来であればリアルタイムで正確に把握すべき工事原価の透明性を低下させ、経営判断の遅れや誤りを引き起こす可能性があります。

特に、長期にわたる工事や複数の工事が同時進行している場合、この問題はより顕著になり、最終的な利益を圧迫する大きな要因となるのです。

 

建設業の工事原価管理を効果的に行う方法

建設業の工事原価管理を効果的に行うには、コストを抑えながらエクセルで行う方法と、コストをかけてでも原価管理システムを導入する方法の2通りがあります。
どちらの方法を選ぶかは、会社の規模、予算、管理体制によって異なりますが、工事原価管理を効率よく進めるには、情報の一元化とリアルタイムでの状況把握が不可欠です。

本章では、それぞれの方法の具体的な進め方と、効果的に工事原価管理を行うためのポイントを詳しく解説していきます。

 

エクセルで工事原価管理を行う

建設業の工事原価管理をエクセルで行うことは可能です。
特に、中小規模の会社や、同時並行で進行する工事件数が少ない場合は、初期費用を抑えつつ柔軟な管理を実現できる有効な方法と言えるでしょう。

エクセルで原価管理表を作成するやり方は、まず「工事名」「材料費」「労務費」「外注費」「経費」などの項目を列挙し、各費目に対して「実行予算」「実績」「差額」を設けるのが一般的です。
月次で各費目の実績値を入力し、実行予算との差額を算出することで、リアルタイムに近い形で原価状況を把握できます。
これにより、予期せぬコスト増が発生した場合でも早期に気づき、対策を講じることが可能になります。

関連記事:
【建設業向け】エクセルで原価管理を仕組み化する方法と運用のポイント
 

メリット

会社独自の管理方法や項目に合わせて自由に原価管理表を作成できる点です。
例えば、材料費や労務費、外注費、経費といった主要な費目を一覧で管理し、実行予算と実績を比較することで、各工事の利益状況を「見える化」できます。

 

デメリット

工事件数が増えたり、管理するデータ量が多くなったりすると、ファイルの共有や同時編集が困難になる場合があります。
また、手作業での入力が主となるため、入力ミスや更新漏れが発生するリスクが高まります。

さらに、過去の工事データを検索したり、複数工事の横断的な分析を行ったりする際には、手間がかかる上に時間がかかることもあります。

このような課題を抱える場合は、原価管理システムへの移行を検討することも重要です。

 

原価管理システムで工事原価管理を行う

建設業における原価管理は、工事期間の長期化や費用構成の複雑さから、エクセルだけでは管理しきれない限界があります。

特に、複数の工事が同時進行する規模になると、手作業による入力ミスや情報の更新漏れが発生しやすく、正確な原価を把握するのが困難になるでしょう。

また、リアルタイムでの進捗状況や収益性を把握できないため、迅速な経営判断が難しくなるという課題も発生します。このような状況では、属人化が進みやすく、担当者不在時に業務が滞るリスクも高まります。

そこで有効なのが、建設業の原価管理に特化した原価管理システムの導入です。

 

メリット

原価管理システムを導入するメリットはいくつかあります。
  • 材料費、労務費、外注費、経費などの原価データを一元管理し、リアルタイムで共有・確認できる
  • 現場と経理、経営層の間で情報共有がスムーズになり、入力漏れや二度手間を防止し、業務効率が向上する
  • 建設業特有の必要書類を自動で作成できるシステムも多く、経理業務の負担を軽減できる
 

デメリット

一方で、原価管理システムにはデメリットも存在します。
  • 導入には初期費用や月額費用がかかるため、会社の規模や予算によっては負担に感じる可能性がある
  • 従業員の習熟期間が必要で、使い方を覚えるための時間や手間が発生する場合がある
  • 自社の業務フローと合わない場合のカスタマイズ対応によって、追加費用が発生する可能性がある
システムによっては、特定の機能が不足している場合や、既存の会計システムとの連携が難しい場合もあるため、選定時には注意が必要です。

「利益が出ているはずなのに手元にお金が残らない」「エクセルでの管理に限界を感じている」「現場と経理の情報連携がうまくいかない」といった課題を感じている経営者や管理部門の担当者様は、原価管理システムの導入を検討してみると良いでしょう。

自社の規模や業務内容、改善したい点を明確にした上で、建設業特有の商習慣や会計処理に対応したシステムを選ぶことが、導入成功の鍵となります。

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まとめ

この記事では、建設業の工事原価管理が難しいと言われる理由と、そのメリット、そして具体的な進め方を解説しました。
勘定科目の特殊性や工事の性質による原価変動の複雑さ、外部要因や業界構造の複雑さ、現場と経理の情報分断と属人化といった理由で、管理が難しいと感じる会社も少なくありません。

しかし、適切な工事原価管理を行うことで、会社の利益を最大化し、安定した経営基盤を構築できます。
エクセルでの管理や原価管理システムの導入など、自社に合った方法で工事原価を「見える化」することが重要です。

この記事が、貴社の工事原価管理を見直すきっかけとなれば幸いです。

 

建設業における工事原価管理に関してよくある質問

Q1. エクセルで工事原価管理をするのは現実的ですか?

A. はい。扱う工事件数が多くない中小規模の会社であれば、エクセルでも十分対応できます。
材料費・外注費・労務費などの主要な費目をまとめた管理表を作り、月次で更新していくだけでも「どの工事がどれくらい利益を出しているか」を把握できます。最初は複雑にせず、「実行予算」「実績」「差額」を並べるシンプルな表から始めるのがポイントです。

 

Q2. エクセル管理の限界はどのあたりにありますか?

A. 工事件数や担当者が増えると、エクセルでは「ファイルの共有」「同時編集」「更新漏れ」のリスクが出てきます。
また、過去データの検索や分析が手間になり、属人化もしやすいため、数十件規模の工事を扱うようになった段階でシステム化を検討するのが理想です。

 

Q3. 原価管理を始めるタイミングはいつが良いですか?

A. 「利益が出ているはずなのに、手元にお金が残らない」と感じた時が始めどきです。
受注が安定している段階で取り組むと、赤字案件の早期発見や次の見積もり精度向上に繋がります。最初は1〜2現場だけでも「原価を見える化」することで効果を実感できます。

 

Q4. 原価管理を始めるには、どんなデータを集めれば良いですか?

A. まずは「材料費」「外注費」「労務費」「経費」の4つを集めましょう。
仕入れ伝票・外注請求書・給与データなどをもとに、どの工事にいくら使ったかを工事番号ごとにまとめるだけでも、利益の構造がはっきり見えてきます。

 

Q5. 原価管理と経理の違いは何ですか?

A. 経理は「過去に使ったお金を正確に記録すること」、原価管理は「今どこでお金がかかっていて、どう減らせるかを考えること」です。
経理データをもとに改善を考えるのが原価管理の目的なので、経理業務に一歩プラスするイメージで始めるとスムーズです。

 

Q6. 原価管理を続けるためのコツはありますか?

A. 「毎月決まったタイミングで数字を確認する習慣」をつくることです。
最初から完璧を目指さず、「ズレを見つけて修正する」ことを目的にすることで、自然と会社全体のコスト意識も高まります。エクセルでの入力をチームで共有できるようにしておくと、属人化も防げます。

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