- 2025年02月04日
水道工事を外注する際のポイント|業務委託と協力会社の選び方
案件管理

水道工事は、専門知識や技術を求められるため、自社ですべてを行うのは難しい場合があります。外部業者に委託することで、水道工事の一部を外注でき、自社の負担軽減につながります。外注には業務委託や協力会社への依頼などいくつかの形態があり、違いや特徴を理解したうえで選ぶことが重要です。
この記事では、水道工事を外注する際に必要な知識として、水道工事における業務委託の種類や、外注するメリットとデメリット、業務委託と協力会社の選び方などを詳しく解説します。
コンテンツ
外注と業務委託の違い
「外注」とは、自社の業務の一部または全部を、外部業者に委託することを指す言葉です。外部の業者などに対して仕事を発注すること全般を指し、正式な契約形態を指しているわけではありません。外注のなかで、契約形態が派遣や請負などに分けられ、契約書を交わして締結します。法律に基づいた契約形態で、受託者へ業務を依頼し、受託者が業務を遂行することは「業務委託」と呼ばれます。ただ、業務委託は民法上では存在しない言葉で、民法に沿った呼び方では、請負契約や委任契約、準委任契約などが挙げられます。
水道工事における業務委託の種類
水道工事での業務委託には、大きく分けて水道法の適用外である「一部業務委託」と、水道法が適用される「第三者委託」、そして複数の業務を委託する「包括業務委託」の3種類があります。「一部業務委託」は、水道工事業者の管理下において、業務の一部を委託する形式です。水道工事は通常、自治体が管轄しますが、施工は自治体が認可した指定事業者である水道業者のみが行えます。一般的に、指定事業者は一部業務委託という形で受注し、必要な申請を行ったうえで工事が進められます。
「第三者委託」とは、2002年の水道法改正から認められるようになった業務委託の形式です。具体的には、浄水場の運転管理業務など水道の管理に関わる技術上の業務を、一括で委託する場合に採用され、委託範囲の水道法上の責任を受託者が負います。従来までの施設の維持管理を外部業者に委託することで、民間水道工事業者の技術力や経営ノウハウが活かせる点がメリットです。
「包括業務委託」は、主に下水道事業などで利用される業務委託の形態です。包括業務委託では、国交省によって定められた委託ガイドラインに従う必要があります。
水道工事を外注するメリット
水道工事を外注することで、以下のようなメリットが期待できます。- 固定費の削減
- 設備投資の不要化
- 専門知識・技術の活用
- リソースの最適化
- 拡張性の向上
それぞれについて詳しく解説します。
固定費の削減
外注により、自社の人件費や設備投資などの固定費を抑えられ、コスト削減につながります。自社だけで水道工事を行う場合、人員を雇う必要があるため、給与や賞与、社会保険料などの人件費の他、福利厚生費、教育費などが発生します。また、人員が不足していても、雇用を維持するために閑散期の人件費が過剰になる可能性もあります。外注により、必要なときだけスタッフを補充すれば、固定費として発生する人件費の削減が見込めます。
加えて、事業やプロジェクトの規模、受注量などに合わせて柔軟に固定費を調整できれば、経営の安定化を促すでしょう。
設備投資の不要化
水道工事ではさまざまな設備機器を使用しますが、外部業者を利用することで自社での設備投資の必要性が低くなります。例えば、配管加工機や溶接機、高圧洗浄機といった専門的な工具や機械を自社ですべて揃えるとなると多額の投資をしなければなりません。また、保管場所の確保や、定期的なメンテナンスにかかる費用、時間も考慮する必要があります。外部業者に委託することで、これらの設備投資を抑えられるため、コスト削減を促すことが可能です。
さらに、前述した人員削減に伴い、オフィスの賃料や社内用携帯電話、パソコンなどの設備費用も削減できます。
専門知識・技術の活用
水道工事には、専門的な知識や高い技術が求められます。実際に、現場では給水装置工事主任技術者や排水設備工事責任技術者といった専門資格を持つ技術者が必要です。しかし、人手不足やリソース不足などにより、自社で必要な人材を揃えることが難しい場合もあるでしょう。長年の経験と実績を持つ専門業者へ外注すれば、高度な知識や技術を活用した高品質な施工が実現します。また、最新の工法や技術トレンドにも精通している業者もあり、最適な施工方法で効率的かつ確実に工事を進めてもらえる場合もあります。
さらに、安全面についても安心して任せられる業者を選べば、精神的な負担の軽減にも寄与するでしょう。結果的に、工期の短縮や品質向上、トラブルの未然防止にもつながります。
リソースの最適化
外部業者を利用することで、水道工事の規模や受注数、事業規模などの変動に合わせて柔軟にリソースを調整できます。受注量が増える繁忙期には外注を増やし、反対に受注量が減る閑散期には外注量を削減するといった調整により、リソースを最適化できます。また、急な受注増加にも対応でき、ビジネスチャンスを逃すことなく事業を拡大していくことが可能となります。事業環境が急速に変化する現代において、リスクを抑えながら事業展開を進めることができるでしょう。
さらに、外部業者にルーティンワークなど定量的な業務を委託することで、社員が本来のコア業務に集中できます。自社でしか行えない企画開発や営業活動などコア業務にリソースを集中することで、生産性の向上や競争力の強化が見込めます。
加えて、社員の業務負担が軽減されるため、ワークライフバランスの向上や健康経営の実現といった効果も期待できるでしょう。
拡張性の向上
事業成長や市場変動への柔軟な対応は、企業が安定的な経営を実現するために重要です。業務の一部を外注することで、事業の拡張性を向上させることにつながります。また、新しい事業領域への進出を検討する際にも、業務委託によって専門技術を持つ業者と連携できれば、地理的な拡張性も向上します。事業所から離れた場所で案件が発生しても、その地域の専門業者と連携することで、移動にかかるコストや時間を節約しつつ受注できるでしょう。
水道工事における業務委託・協力会社の選び方
水道工事における業務委託や協力会社を選ぶ際には、以下のポイントに注目しましょう。- 経験・実績
- 資格や許認可の有無
- 費用の適正性
- コミュニケーション能力
各項目について詳しく解説します。
経験・実績
水道工事における実績が豊富な協力会社と提携することで、施工に必要な知識や技術を共有でき、自社にはないノウハウを見つけることが可能です。また、苦手な分野をカバーし合えば、双方にとってメリットが得られます。過去の施工実績や経験年数を確認し、自社のニーズに合った業者を選ぶことが重要です。経験年数の多さだけでなく、新設や改修、緊急対応といった工事の種類や具体的な事例、顧客からの評価なども選定の基準になります。
また、自社が受注する工事と類似した案件での実績があるかどうかも重要な判断材料です。委託業者のホームページやパンフレットに参考情報がない場合は、直接問い合わせて確認しましょう。
資格や許認可の有無
水道工事を受注するには、給水装置工事主任技術者や排水設備工事責任技術者などの国家資格、各自治体の指定事業者としての許認可などが必要です。資格や許認可を取得していないと、法令違反となる可能性があります。また、工事の品質や安全性にも問題が生じて、トラブルに発展するリスクも存在するため、事前に必ず確認しましょう。必要に応じて資格証の提示を求めるか、自治体のホームページ上で指定事業者としての登録を確認することが重要です。
費用の適正性
外注費用の妥当性や適正性は、正式な契約を締結する前に確認しておきましょう。複数の外部業者に見積りを依頼し、費用の内訳や詳細を比較検討することが重要です。ただし、極端に価格が安い、もしくは高すぎる見積りには注意が必要です。安さだけを追求すると、手抜き工事や粗悪な材料の使用により、トラブルが発生する可能性があります。単純に金額が一番低い業者を選ぶのではなく、内容と価格のバランスを見て選ぶことが重要です。
また、材料費や人件費、諸経費などが明確に記載されているか、見積りの内訳が妥当かどうか、といった点も漏れなく確認しましょう。見積りで不明点がある場合や、追加料金などについては事前に問い合わせて、納得できる説明を受ける必要があります。
コミュニケーション能力
連絡の取りやすさや説明の丁寧さなど、コミュニケーション能力も重要な選定基準です。工事期間中は、外注業者と密に連携を取り、進捗状況や変更点などを共有しながら円滑に進める必要があります。また、外注業者とは、施工が決まってから現場作業、アフターフォローまで、一定期間やり取りが続きます。質問や要望を伝えやすく、丁寧に対応してもらえる業者を選ぶことは、スムーズな工事進行のために不可欠と言えます。
見積り依頼時の応対や、問い合わせに対するレスポンスの速さなどもコミュニケーション能力の判断材料として有用です。
水道工事を外注する際の注意点・デメリット
水道工事を外注することで多くのメリットが期待できる一方で、以下のような注意点やデメリットも考えられます。- コストが割高になる場合がある
- 品質がばらつく場合がある
- 管理が難しい場合がある
- コミュニケーションミスが生じる可能性がある
- 情報漏えいリスクが生じる
外注を成功させるために、ここでポイントを押さえておきましょう。
コストが割高になる場合がある
外注する業務内容や時期によっては、自社で人員を確保するよりも業務委託の方がコストが高くなる可能性があります。特に、緊急を要する工事や特殊な技術を必要とする現場では、外注費用が高額な傾向があります。水道工事において外注費が費用の大部分を占めることはよくありますが、外注費が増えればその分利益が減ってしまいます。事前に複数の外注業者から見積りを取り、費用対効果を十分検討しましょう。
さらに、短期的なコストだけでなく、長期的な視点で比較することも重要です。自社で賄う場合の管理や教育にかかるコストも考慮できれば、より正確な費用を比較できます。外注費や経費を正確かつ効率的に管理するために、工事原価管理システムなどを導入する方法も有用です。
品質がばらつく場合がある
業者によって技術力や経験、品質管理体制などが異なるため、施工品質にばらつきが生じることが考えられます。実績の少ない業者や価格競争を優先する業者に依頼すると、品質が低下するリスクが高まるため、慎重に業者を選ぶことが重要です。過去の実績や顧客の評判、保有資格、品質管理体制などを必ず確認しましょう。また、必要に応じて試施工を依頼することでも、安定した品質を確保しやすくなります。工事が始まったら定期的に現場を確認し、品質を確認しておくと安心です。
管理が難しい場合がある
複数の業者に委託する場合には、進捗管理や施工品質の管理が複雑化することも考えられます。特に、規模の大きな工事や複数の場所で同時進行する案件では、管理の難易度は高まります。しかし、管理不足によって、工期の遅延や品質低下からの再工事などのリスクがあるため注意が必要です。綿密な計画を作成し、すべての業者の作業スケジュールを把握するとともに、工程間の連携が円滑になるよう管理体制を整えましょう。また、定期的な進捗状況の報告や現場会議の実施、進捗管理ツールやコミュニケーションツールの活用も有用です。
業者ごとに責任範囲を明確にすることで、トラブルが発生した際の責任所在が明確になります。
コミュニケーションミスが生じる可能性がある
外注によって工事に関わる人が増え、情報伝達が複雑化し、認識のズレや伝達の遅延、誤解などが生じる可能性があります。 連携不足やコミュニケーション不足により、間違った情報が伝わると、トラブルや発注ミスなどにつながります。結果的に工期の遅れや品質低下、現場での事故などのリスクも高まるため、コミュニケーションミスを未然に防ぐ対策が必要です。具体的には、紙やメール、チャットツールなどを活用して、情報共有の履歴を残すとともに、情報共有の手段を統一しましょう。
また、定期的にミーティングを実施し、施工の進捗状況や課題などを遅れずに共有することも重要です。作業員や担当者だけでなく、上位者も交えれば、よりスムーズな連携が実現します。疑問点や不明点があれば、遠慮せず業者に確認し、認識のズレを未然に防ぐことが大切です。
情報漏えいリスクが生じる
外注先の業者と社内の情報を共有するため、情報漏えいのリスクは少なからず存在します。管理方法次第では、新規事業や新しいシステムプログラムといった重要な機密情報が漏えいするリスクが高まります。万が一情報漏えいが発生すれば、企業イメージの低下や損害賠償などにより、事業経営にも支障が及ぶ可能性もあるでしょう。情報の管理の仕方が自社と異なる場合もあるため、受託側のセキュリティ対策について事前にすり合わせておくことが重要です。
また、セキュリティソフトの導入や対策指導に加え、情報漏えいが発生した際の対応マニュアルを作成する方法も有用です。
水道工事を外注する際の流れ
水道工事をスムーズに進めるためには、外注の手順を理解しておくことが重要です。ここでは、一般的な外注の流れを詳しく解説します。業務内容の整理
委託する業務範囲や内容を明確にします。給水管の引き込みや排水設備の設置、水漏れ修理など水道工事のどの範囲を外注するのか、具体的な作業内容などを明確化します。また、必要な資格や許認可や求める品質水準、希望納期なども具体的に洗い出すことで、適した委託形式が明らかになり、トラブル回避にも寄与します。施工に必要な図面、仕様書、現場写真など、工事内容を具体的に伝えるための資料があると、外注業者とのコミュニケーションが円滑になります。また、予算の上限がある場合は、事前に伝えておくことでより適した提案を受けられるでしょう。
曖昧な部分が残っていると、業者とのトラブルにつながる可能性があるため、できる限り詳細かつ明確に整理しておくことが重要です。
見積り依頼
外注する業務内容を整理できたら、複数の業者に見積り作成を依頼します。最低でも2〜3社から見積りを取ることで、相場を把握でき、適正な価格で発注できます。見積りを依頼する際には、できるだけ詳細な見積りを作成してもらうことが重要です。一旦見積りを受け取ったら、工事内容や使用する材料、数量、単価、合計金額などを確認し、不明点があれば問い合わせる必要があります。
この時、担当者の対応や説明の丁寧さなども選定材料となるため、チェックしておきましょう。業者から現場調査を依頼された場合は、可能な範囲で協力すると、より正確な見積りを提示してもらえます。
協力会社の比較
見積りの内容を比較検討します。合計金額だけでなく、業者の実績や保有資格、依頼時の対応などをトータルで判断し、最適な業者を選ぶことが重要です。また、使用する材料の品質や工期、保証内容なども確認しておくと無難です。インターネット上の口コミサイトや、過去の顧客からのレビューも参考になります。価格と、対応や品質の総合的なバランスの良い業者を選定しましょう。
契約締結
最適な業者を選定したら、契約書を締結します。契約書には、工事内容や費用、工期、支払いに関する条件に加え、保証内容、責任範囲などを明確に記載する必要があります。トラブルを避けるためにも、契約書の内容に不明点があれば事前に業者へ質問し、十分に理解した上で契約を締結することが重要です。
施工開始
契約の締結後、いよいよ施工を開始します。工事期間中は、外注業者の担当者と丁寧にコミュニケーションを取りながら、作業を進めることが大切です。定期的に連絡を取り、進捗状況を確認しつつ、必要に応じて現場に足を運んで確認しましょう。また、変更点や追加の要望が発生した場合には、速やかに業者へ伝え、合意を得ることが重要です。工事が完了した後は、業者と一緒に現場を確認します。仕上がりに問題があれば、業者に修正を依頼し、対応してもらいましょう。
まとめ
水道工事では、外注業者に業務を委託することは一般的です。外注することで、人手不足の解消やコスト削減、自社のコア業務に専念できるなどのメリットが期待できます。ただし、場合によってはコストが高くなり、情報漏えいや情報伝達ミスなどのリスクも高まるため、自社や現場に適した業者を選ぶことが重要です。応援外注が何人工入ったか一目で分かる!原価管理ソフト「要 〜KANAME〜」
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水道工事の外注についてよくある質問
外注と業務委託、協力会社の違いは?
「外注」とは、自社の業務の一部または全部を外部の業者に委託することです。広義の言葉であって、厳格な定義はありません。外注の中でも、法律に基づいた契約形態で委託者から受託者へ業務を依頼することは「業務委託」と呼ばれます。ただ、業務委託は民法上では存在しない言葉で、民法に沿った呼び方では、請負契約や委任契約、準委任契約などが挙げられます。
水道工事を外注する際のポイントは?
水道工事を外注する際のポイントとして、以下が挙げられます。- 相見積もりを取り、内訳を比較検討する
- 外注先とスケジュールやセキュリティ対策を事前に擦り合わせしておく
- 情報共有がしやすいツールを導入する
相見積もりを依頼することで、費用の相場を把握でき、適正価格で依頼できる業者を選定できます。また、数ヶ月先のスケジュールを把握しておけば、外注できるかどうかの判断に役立つでしょう。
情報漏えいのリスクを防ぐためには、業者のセキュリティ対策を確認するとともに、入念な対策を講じるよう促すことが重要です。スマホでも操作しやすいグループチャットやコミュニケーションツールを導入し、円滑なコミュニケーションを意識しましょう。
水道工事の外注にデメリットはある?
水道工事を外注することで、さまざまなメリットが期待できますが、コストが割高になる場合があるため、費用対効果を十分に検討する必要があります。また、工事の品質がばらつかないように、業者の実績や評判を事前にチェックすることも大切です。さらに、コミュニケーションミスや情報漏えいにより、トラブルに発展するリスクもあるため、連絡を密に取り、連携しやすい環境を整えておく必要があります。
外注業者の都合によっては、発注したいタイミングで依頼を引き受けてもらえるとは限りません。また、外注量や委託する業務範囲が増えるほど、自社の人材が育ちにくくなる可能性もあります。
水道工事の協力会社におけるコンプライアンスはどう確認する?
協力会社に依頼する場合、コンプライアンス(法令遵守)の意識を事前に確認することが重要です。水道工事は、さまざまな法令や規則に基づいて行われ、関係業者は法令や規則、倫理などに従って行動することを求められます。また、水道工事は人々の生活や健康にも直結する工事です。コンプライアンス意識がない協力会社は、工事品質や安全性の低下に加え、法的トラブルや企業イメージ、信用の失墜といったリスクもあります。
コンプライアンス意識を確認するには、関連資格の有無や水道工事に関わる法令、規則の知識を尋ねる方法があります。また、コンプライアンスに関する教育や研修を定期的に行うことも重要です。
水道工事の外注費と給与の違いは?
業者との契約形態によって、外注費を経費として計上できるのか、あるいは給与としなければならないのかが変わります。外注費が、外部の業者に業務を委託した場合に支払う報酬であるのに対し、給与は雇用されている従業員に対して支払う報酬です。外注費が税務上は給与であると指摘を受けた場合、消費税などの追加徴税や無申告加算税、延滞税といったペナルティが課されます。罰則を未然に防ぐために、契約形態や作業の裁量などの基準について事前に確認することが重要です。