- 2025年06月19日
作業日報をつけるメリットとは?建設業の工事現場管理おける作業日報の目的や書き方について解説

毎日の業務で欠かせない作業日報。「ただ書くだけ」「面倒な作業」と思っていませんか?実は、作業日報はあなたの仕事の質を高め、チームの生産性を向上させ、ひいては会社の利益に貢献する強力なツールになり得ます。
本記事では、作業日報の基本的な目的や書き方から、効率化のためのシステムの選び方などを徹底解説します。あなたの作業日報が、今日から「未来を変える報告書」になるヒントを見つけていきましょう。
コンテンツ
作業日報とは?
作業日報とは、建設現場でその日に行われた作業内容を記録した文書のことです。工事に関わるすべての作業者の作業内容をまとめ、把握・管理するとともに上司に報告する目的で作成します。
基本的に、作業員1人ひとりが、その日の工事終了後、業務の締めくくりとして記入し提出することが一般的です。ただ、場合によっては準備工事など複数の日にまたがる作業では1つの日報でまとめて作成する場合もあります。
建設業に関する法律では「作業日報を作成しなければならない」といった規定が存在するわけではありません。ただ、法律には「元方事業者は、労働者が法律違反をしないよう、必要な指導や指示をすること(労働安全衛生法第29条)」と記載されており、作業日報は現場での指示指導が適切に行われている裏付けとなるのです。
こうした背景から、作業日報の作成と保管は、実質的には社内義務と捉えられ、多くの建設現場や工事現場で導入されています。
作業日報に決まった書式やフォーマットはなく、自社で使いやすいものを採用することが一般的です。内容を上司が確認し、社員へのフィードバックをコメントするケースもあります。記載する項目としては、作業内容や行動記録、工事の進捗など。詳細は後述します。
作業日報をつける目的
先述した通り、作業日報の作成や保管は法的な義務ではありませんが、作業日報は、工事進捗や労務状況の把握、現場での情報共有といった重要な役割を果たします。ここでは、作業日報をつける目的について詳しく解説します。
工事進捗の正確な把握
作業日報は、工事の進捗状況を可視化し、予定通りに施工が進んでいるのかを確認するのに役立ちます。作業日報に書かれた作業内容を確認し、工事の進捗に遅れがある場合は、当日以降の予定を変更するなどの対策を考えることが可能です。
現場での業務が終わった後に、作業日報を作成することを負担に感じる社員もいるかもしれませんが、現場の状況を正しく把握し、必要な調整を行うためにもその日の終わりに書き上げることが大切です。必要に応じて作成スキルの指導も行いながら、うまく運用しましょう。
現場の情報共有の円滑化
多くの場合、作業日報は上司が必ず目を通しますが、記載されている情報は、社内だけでなく、現場に携わる他の作業員とも共有します。現場では各作業員がそれぞれの担当業務に取り組んでいるため、関係者全員が集まってミーティングする時間を取れないことも少なくありません。
作業日報をつけていれば、その情報をもとに、作業上の気付きやヒヤリハットなどを、関係者全員でシェアし、今後の改善に活かしていくことが可能です。作業日報の運用方法や目的をあらかじめ設定し、全員に共有しておくことで、無駄なくまとめられた作業日報が集まり、情報を把握しやすくなるでしょう。
労務状況の可視化と管理
作業日報は、適切な労務管理を行ううえでも重要な役割を担っています。労務管理とは、社員が健康的に働くために、労働環境を管理することです。作業日報によって、労働時間や作業内容が適切かどうかを把握、管理することで、安全な労働環境を確立でき、社員の生産性向上にもつながります。
また、直行直帰の建設現場では、タイムカードなどによる勤怠管理をしづらいですが、作業日報に作業開始時刻と終了時刻の項目を設けておけば、適切な勤怠管理が可能です。
作業日報をつけるメリット
工事現場の作業日報を付けることで、工事の進捗状況を確認できるだけでなく、現場の課題把握やコスト節約、トラブルの予防などさまざまなメリットが期待できます。ここでは、作業日報をつけることによる主な5つのメリットを紹介します。
現場監理の最適化
作業日報の記録は、工事現場管理の最適化に欠かせない重要な書類です。各作業員がその日の作業内容や現場の状況を記した作業日報を見ると、無駄な作業はないか、労働力が足りていない箇所はどこか、といった現場全体における偏りや停滞が明らかになります。
そのため、追加の人員を手配するなど早期に対策を実践するなど、現場作業を円滑化させることが可能です。
労務管理の最適化
作業日報は、労働環境に関する課題把握などの労務管理にも役立ちます。特に、直行直帰が多い現場の勤務管理を適切に行うためには、各作業員が働いた時間や具体的な作業内容が書かれた作業日報が有用です。
また、作業日報の内容から、本人の心身状態や現場における人間関係を把握するための参考になる場合があります。トラブルが発生する前に現状を把握することで、課題解決に必要な対策を取り入れて、社員の心身の健康や安全な労働環境を確保できるでしょう。
長時間労働や過剰労働などのイメージを持たれやすい建設業界において、適切な労務管理による働きやすい労働環境の確保は、同業他社との差別化や離職防止につながるといった効果も期待できます。
コスト管理の最適化
作業日報は、結果としてコスト管理の最適化にも直結します。作業日報で、現場作業員の働き方を把握し、最適な人材配置を実現することで、人件費の削減につながる可能性があるのです。
経費のなかでも人件費は特に大きな比重を占めるもの。作業員の割り振りが偏っている箇所を見つけて調整することで、人件費の無駄をカットできます。同時に、作業の無駄やミスの削減により、余計な資材や設備にかかるコストも節約できるでしょう。
経営判断のためのデータ活用
作業日報は、単なる日々の記録ではなく、経営層が会社の未来を考える上で非常に重要なデータソースとなります。日報に蓄積された情報は、工事ごとの正確な原価管理や利益率の分析を可能にします。どの作業にどれだけの時間や資源が費やされたかを把握することで、無駄なコストを特定し、削減に向けた具体的な施策を立てることができます。
また、過去のデータを分析すれば、より精度の高い見積り作成や受注戦略の立案に役立ちます。労務状況の可視化は、適切な人員配置の最適化や、人材育成計画、さらには働き方改革といった経営課題への対応にも繋がります。税務調査や会計監査の際にも、作業日報は客観的な工事実績や経費の発生状況を証明する信頼性の高い資料となるでしょう。日報を経営に活かすことで、データに基づいた迅速な意思決定が可能になり、会社の競争力強化に貢献します。
トラブルの防止
作業日報は、現場での事故やトラブルの防止にも役立ちます。天候の影響を受けやすい現場などでは、計画通りに工事が進まないこともありますが、クライアントとの信頼関係を守るためにも納期通りに工事を完了させなければなりません。
作業日報を活用して毎日の状況を細かく把握し、上司と作業員とが連携して作業に臨むことで、工期遅延によるトラブル回避につながるのです。
また、先に挙げたメリットに重なる項目として、人件費などのコスト削減は予算関連のトラブル防止にも繋がるでしょう。そして、労務管理の最適化による労働環境の改善は、現場作業員の心身の健康や人間関係におけるトラブル予防に有用です。
万が一トラブルが起きてしまった際には、作業日報を通じて状況を詳しく把握して、早急な対処や解決ができるうえ、トラブルを繰り返さないための対策を講じることもできます。
作業日報に記載すべき項目
作業日報には、正式な書き方やフォーマットはありませんが、作業内容や現場の状況を記録し、読んだ人に伝えるという目的で作成するうえで、盛り込むべき内容や記載項目はある程度決まっています。
一般的な作業日報に含まれる記載項目は、下記の通りです。
項目名 | 内容・記載例 |
---|---|
日付・天気・気温 | 作業日の状況を把握するために重要(例:6月19日、晴れ、32℃) |
工事名・現場名・作業場所 | どの工事・どの現場・どの場所での作業か(例:○○ビル新築工事、2階トイレ) |
作業責任者・作業員名と人数 | 作業者の氏名と人数(協力会社含む)を記載 |
作業内容(5W1H) | When(いつ):開始・終了時刻 Where(どこで):作業場所 Who(誰が):作業担当者 What(何を):作業内容(例:コンクリート打設) Why(なぜ):目的(必要に応じて) How(どのように):作業方法、使用機材など |
作業時間 | 始業時刻、終業時刻、休憩時間、時間外労働などを正確に記録 |
使用機材・資材 | その日に使った重機、工具、主要資材など(例:バックホー、鉄筋) |
特記事項 | 問題点や課題、対応策など(例:資材納入遅れ、仮設で対応) |
上司への連絡事項・報告事項 | 必要な報告や伝達事項(例:○○資材の追加手配依頼) |
翌日以降の作業予定・指示 | 翌日以降の作業内容や注意点(例:仮設足場の撤去予定) |
ヒヤリハット・安全の気づき | 危険予知・事故未然防止の記録(例:工具落下未遂) |
効果的な工事日報の書き方とコツ
客観的な事実に基づいた記述:憶測や感情を交えず、事実のみを記載します。
具体的かつ簡潔に: 誰が読んでも状況が理解できるよう、専門用語を避け、要点を押さえて記述します。
写真や図の活用: デジタルツールを使用する場合、写真や簡単な図を添付することで、現場の状況がより正確に伝わります。
ネガティブな情報も正確に記載: 問題点や遅延、トラブルなども隠さずに正確に記録することが、早期解決や再発防止に繋がります。
【目的別】作業日報管理ツールの選び方とおすすめサービス
いまだに多くの現場で手書きやExcelでの工事日報が使われていますが、現代の建設業界ではそのデジタル化が急速に進んでいます。手書きやエクセル管理の限界を感じたら、自社に合った工事日報管理ツールの導入を検討しましょう。ここでは、目的別にツールの種類と選び方のポイント、おすすめサービスをご紹介します。
作業日報管理ツールの種類
エクセルの無料テンプレート
特徴:
導入コストがゼロで、手軽に始められるのが最大の魅力です。特にエクセルテンプレートは、自社の業務に合わせてある程度のカスタマイズが可能なため、既存のフォーマットを大きく変えずにデジタル化を進めたい場合に便利です。
こんな方におすすめ:
とにかくコストを抑えて日報のデジタル運用を試したい個人事業主や小規模事業者。
まずはデジタル日報の運用フローを確立したいと考えているチーム。
課題:
データ集計や分析は手作業になりがちで、手間がかかります。また、リアルタイムでの情報共有には向かず、スマートフォンからの入力もしにくい点が挙げられます。
作業日報に特化したシステム
特徴:
日報作成と管理に特化しているため、現場や外出先での利用に最適化されています。スマートフォンやタブレットからの入力がしやすく、写真添付、リアルタイムでの情報共有、そして入力されたデータの自動集計・分析機能が充実しています。
こんな方におすすめ:
現場作業や外出が多い職種で、入力効率を大幅に上げたいと考えている企業。
手軽に情報共有を強化し、日報データを具体的な業務改善に活かしたい中小企業。
チーム全体の生産性向上を目指し、日報から得られる情報を活用したいと考えている場合。
建設業向けの一元管理システム
建設業に特化し、日報機能を含む幅広い業務を網羅するシステムです。工事原価管理、工程管理、勤怠管理、見積り、請求、顧客管理など、建設プロジェクト全体の情報を一元的に管理し、業務フロー全体を効率化します。
こんな方におすすめ:
複数の工事現場を抱え、プロジェクト全体の進捗と収支をリアルタイムで把握したい建設会社。
日報データと原価管理や勤怠管理を連携させ、経営判断に役立てたい経営者。
建設業特有の複雑な業務フローをデジタル化し、基幹業務全体の効率化を目指したい場合。
課題:
多機能であるため、導入コストが高くなる傾向があり、システムの定着までに時間と従業員の教育が必要になることがあります。
ツール選定のポイント
自社に最適なツールを選ぶためには、以下の点を考慮しましょう。
使いやすさ(操作性):
特に現場や外出先で入力する従業員が多い場合、スマートフォンやタブレットでの入力がスムーズか、直感的な操作が可能かを確認しましょう。
必要な機能の有無:
写真・動画添付、チャット機能、GPS連動、データ分析、他システム(会計ソフトなど)との連携など、自社にとって本当に必要な機能が備わっているかを確認しましょう。
導入コストと運用コスト:
初期費用だけでなく、月額利用料やオプション料金など、継続的に発生するコストを把握しましょう。無料トライアル期間を活用して、実際の使い勝手を試すのがおすすめです。
サポート体制:
導入後の不明点やトラブル発生時に、適切なサポートが受けられるかを確認することも重要です。
自社の規模や業態に合っているか:
小規模なチームであればシンプルなツールで十分な場合もあれば、大規模な組織ではより高度な連携機能が必要になることもあります。
原価管理ソフト「要 〜KANAME〜」の日報機能は入力も集計もラクラク!
日報を送る時に意外と面倒なのが、複数人でまとまって仕事をしているのでやったことは同じなのに、それぞれ送信しないといけないことではないでしょうか?
建設業向け原価管理ソフト「要 〜KANAME〜」なら、作業者を複数選択してまとめて日報を送信することができるので、現場後の作業の手間が削減できます!
また、日報の集計も人ごと・現場ごと・出面など1発で集計できるため、何度も集計し直す必要がなくいため、事務作業も大幅に効率化できます。
▼紹介動画をご覧ください▼
まとめ
作業日報は、工事進捗や労務管理の把握を通して効果的な現場管理を行ううえで重要です。1日の作業終わりにその日を振り返ることで、課題の明確化と早期解決に役立ちます。また、人員配置の最適化によるコスト削減やトラブルの予防といった効果も期待できます。
作業日報にスマホやタブレットに対応した専用アプリを使用すれば、場所や時間を問わずに更新でき、スムーズな日報作成に役立ちます。また、管理者側は、全員分の日報を効率的に管理できるというメリットが得られます。
建設現場におすすめの作業日報アプリは下記記事で紹介していますので、あわせてご参照ください。
工事日報についてよくある質問
Q:工事日報は必ずつけなければいけませんか?
建設業関連の法律に、工事日報の作成を義務付けるような規定はありません。そのため、法的には工事日報を作成し、管理するかどうかは企業次第ですが、工事の進捗や労務管理を適切に実施するうえで、毎日の工事日報は重要な情報源となります。
工期に遅れが出ないよう、人員配置や作業内容の見直しを行い、必要に応じて調整していく上で、毎日現場の状況が的確に記録された工事日報が重要な役割を担います。また、工事日報は、各作業員の労働状況を把握し、適切な指導や指示を行うために役立ちます。
Q:工事日報を作成するタイミングはいつですか?
工事日報は原則として、1日の業務終わりにその日の作業について記録します。工事名や現場名など、項目によっては前もって記入できるものもありますが、当日の作業内容や現場の状況を振り返り、明日以降の作業につなげていくためには、当日中に作成するのが一般的です。
Q:紙とデジタル、工事日報を選ぶ基準は?
工事日報は、紙とデジタルの2タイプがあります。紙媒体は、従来から建設現場の工事日報によく用いられている形式で、作成後にファイルなどにまとめて保管します。デジタルのように誤って上書きされる、データを消してしまう、といった可能性は極めて低いものの、物質的な容量があり、持ち運びには向きません。
デジタルの工事日報は、現場管理用アプリやExcelデータなどに直接記入する方法です。ノートパソコンやタブレットからいつでも更新でき、保存した後はデータを他の人と簡単に共有できます。また、特定の日の日報を探す場合にも、すぐに検索して閲覧できて便利です。
Q:デジタル工事日報の作成ツールには何がありますか?
デジタルの工事日報には、WordやExcelのレンプレートや、工事日報専用のアプリなどがあります。WordやExcelは汎用性が高く、おおむねどのパソコンにもデフォルトで入っているため、誰でも使い始めやすく、テンプレートを挿入してすぐに記入を始められます。
専用アプリは、工事日報や工事現場管理に特化したシステムのため、工事日報をより効率的に作成できます。さまざまなサービスがあるので、自社に適したものを選ぶことが大切です。