- 2026年09月30日
建設業の経営管理とは?見るべき数字と経営改善につなげる方法を解説
原価管理・利益管理

「売上は伸びているのに、思ったほど利益が残っていない」「工事ごとの数字は分かるが、会社全体としてどれくらい利益が出ているのか分からない」——建設会社の経営者や管理者の方から、こうした声を聞くことは少なくありません。
決算のタイミングになって初めて利益状況を把握する、経営者の経験や感覚を頼りに判断する、といった状態は、多くの建設会社で起こりがちです。工事ごとの採算は現場担当者が把握していても、それが会社全体の経営状況にはつながっていない、というケースもよくあります。
経営管理とは、単に数字を記録することではありません。売上・原価・利益といった情報を継続的に把握し、経営の判断や改善に活用していく取り組みのことを指します。この記事では、建設業における経営管理の考え方から、具体的に見るべき数字、そして数字を経営改善につなげるまでの流れを、把握 → 見える化 → 判断 → 改善という一連のストーリーとして解説します。
監修:室田茂樹
株式会社プラスバイプラス 代表取締役
コンテンツ
建設業における経営管理とは
経営管理とは、会社の経営状況を数字で把握し、その情報をもとに判断・改善を行っていく一連の活動です。売上を確認するだけでなく、原価や利益とあわせて継続的に見ていくことで、会社が今どのような状態にあるのかを客観的に捉えられるようになります。建設業では、この経営管理に独特の難しさがあります。工事ごとに売上や原価が大きく異なるうえ、複数の工事が同時に進行することも珍しくありません。材料費・労務費・外注費といった原価は工事ごとに発生し、それぞれの工事の情報を積み上げて初めて、会社全体の売上や利益が見えてくる構造になっています。つまり、工事単位の情報と会社全体の数字をどうつなげるかが、建設業の経営管理における一つのポイントになります。
原価管理との違い
経営管理と混同されやすい言葉に「原価管理」があります。両者は密接に関わり合っていますが、対象とする範囲が異なります。原価管理は、工事単位で予定原価・実績原価・利益などを管理する取り組みです。一方の経営管理は、各工事の原価管理の情報も含めながら、会社全体の売上・原価・利益を把握し、経営判断へとつなげていく、より広い視点の取り組みといえます。
工事ごとの原価管理を積み上げた先に、会社全体の経営管理がある、というイメージを持っておくと理解しやすいでしょう。建設業における原価管理の考え方や進め方については、関連記事で詳しく解説しています。
建設会社の経営で把握しておきたい数字
経営管理では、具体的にどのような数字を見ればよいのでしょうか。代表的なものとして、売上・原価・粗利・粗利率・利益・経費、そして予定と実績の差といった項目が挙げられます。| 経営で見る数字 | 確認できること |
|---|---|
| 売上 | どれだけ売上を上げているか |
| 原価 | 工事にどれだけ費用がかかっているか |
| 粗利 | 売上から原価を差し引いてどれだけ残っているか |
| 粗利率 | 売上に対してどの程度粗利を確保できているか |
| 経費 | 会社運営にどれだけ費用がかかっているか |
| 利益 | 最終的にどれだけ利益を確保できているか |
| 予実差 | 予定と実績がどの程度ずれているか |
完成工事高
建設業では、一般的な「売上高」にあたる考え方として「完成工事高」という勘定科目が使われます。完成工事高は、建設業の経営状況を評価するうえで基本となる指標の一つであり、完成工事高の計上時期や考え方には、工事契約に関する収益認識のルールが関わります。完成工事高の意味や計算方法については、関連記事で詳しく解説しています。
工事途中で発生している費用
工事がまだ完成していない段階でも、材料費や外注費などの費用はすでに発生しています。こうした未完成の工事にかかった費用は、「未成工事支出金」として管理されることがあります。未成工事支出金の考え方や会計処理については、関連記事で詳しく紹介しています。
経営状況を正しく把握するためには、完成した工事の売上だけでなく、進行中の工事でどれだけ費用が発生しているかも確認することが大切です。
建設会社の経営状況が見えにくくなる理由
建設業では、なぜ経営状況が把握しにくくなるのでしょうか。よくある背景として、見積りはExcel、原価は工事台帳、日報は紙、請求は別のシステム、入金情報は経理担当だけが把握している、といったように、工事に関する情報が担当者ごと・ツールごとに分散していることが挙げられます。こうした状態が続くと、工事ごとの利益が把握しづらくなるだけでなく、会社全体の利益状況もつかみにくくなります。数字を集計するだけでも時間がかかり、結局のところ経営者しか会社の状況を把握できていない、という状態に陥りがちです。その結果、経営判断が経験や感覚に頼らざるを得なくなってしまいます。
このように、特定の人にしか経営状況が見えない状態は「経営のブラックボックス化」と呼ばれることがあります。経営がブラックボックス化する原因や打開策については、関連記事で詳しく解説しています。
経営状況は月次で確認する
経営管理では、決算のタイミングだけで数字を確認するのではなく、継続的に状況を追いかけていくことが重要です。特に売上・原価・粗利・利益・経費といった数字を月単位で確認することには、いくつかのメリットがあります。例えば、利益率の低下や原価の増加といった変化に早い段階で気づけるほか、前月や前年の数字と比較することで、会社の状況を客観的に捉えやすくなります。決算を待って初めて問題に気づくのではなく、月々の変化を追うことで、経営上の課題をより早く発見できるようになるのです。
建設会社が毎月どのような数字を確認すべきかなど、月次で経営状況を把握するための管理方法については、関連記事で詳しく解説しています。
経営データを見える化して活用する
数字を記録するだけでは、経営改善にはつながりません。工事別・月別・担当者別・費目別といった切り口でデータを整理・比較することで、どの工事で利益が出ているのか、どの工事で原価が増えているのか、どこに改善の余地があるのかが見えてきます。ここで大切なのは、データを集めること自体を目的にしないことです。重要なのは、集めたデータを経営判断に使える状態に整理し、実際に活用することです。経営データを利益改善に活用する方法については、関連記事で詳しく紹介しています。
数字から経営上の課題を見つける
経営数値やデータを継続的に見ていくと、さまざまな課題が見えてきます。工事ごとの利益率が低い、原価が予定より増えている、外注費が増加している、特定の工事で赤字が発生している、売上は増えているのに利益が伸びていない、集計や転記といった業務に時間がかかりすぎている——こうした兆候は、いずれも数字を継続的に確認していなければ気づきにくいものです。大切なのは、数字を見ること自体が目的ではなく、問題を発見するために数字を見る、という姿勢です。数字の変化に敏感になることで、経営上の課題を早い段階で拾い上げられるようになります。
経営改善につなげる
数字から見つけた課題は、原因を確認し、具体的な業務改善へとつなげていくことで初めて意味を持ちます。例えば、原価が高いのであれば原価管理や仕入れ方法を見直す、利益率が低いのであれば見積りや価格設定を見直す、赤字工事が多いのであれば予実管理の仕組みを改善する、情報の集計に時間がかかっているのであれば管理方法そのものを見直す、といった対応が考えられます。経営改善という言葉を抽象的なままにせず、数字から課題を発見し、原因を確認し、具体的な業務改善につなげる、という一連の流れとして捉えることが大切です。建設会社の経営課題を改善する具体的な方法については、関連記事で紹介しています。
経営管理を仕組み化することが重要
ここまで見てきたように、経営管理は経営者が毎回手作業で数字をかき集めて行うものではなく、継続して数字を確認できる仕組みをつくることが本質的に重要です。見積り・売上・原価・請求・入金・日報といった情報がExcelや紙、複数のシステムに分散していると、転記や集計、確認作業に時間がかかり、状況をタイムリーに把握することが難しくなります。一方で、これらの情報を工事単位でまとめて管理できる仕組みが整っていれば、会社全体の経営状況を確認しやすくなります。
こうした仕組みづくりを支援するツールの一つが、建設業向け原価管理・工事管理システム「要〜KANAME〜」です。見積り・原価・請求・入金・日報・工事台帳といった情報を工事台帳をベースに一元管理でき、工事単位での数字を管理しやすくなります。工事ごとの原価や利益状況を把握しやすくなることで、情報の分散や転記作業の負担を減らし、経営状況を確認するためのデータをまとめやすくなります。
もちろん、システムを導入すれば必ず経営が改善するというものではなく、そこで得られる数字をどう活用するかが引き続き重要になりますが、経営管理の土台となる「数字を継続的に把握できる状態」をつくる選択肢の一つとして検討する価値はあるでしょう。
まとめ
建設業の経営管理では、経営に必要な数字を把握すること、その数字を継続的に確認すること、データを見える化すること、そこから問題を発見すること、発見した問題を改善につなげること、そして何より、それらを継続できる仕組みをつくることが重要です。売上だけでなく原価や利益とあわせて数字を捉え、月次で継続的に確認し、そこから見えてきた課題を一つずつ改善につなげていく。
建設会社の経営管理とは、会社の数字を継続的に把握し、見える化し、経営判断・改善につなげていく取り組みだといえます。この記事を入り口として、原価管理や利益率の改善、データ活用経営といった個別のテーマについても、ぜひあわせて確認してみてください。





