- 2026年08月31日
予実管理とは?目的・進め方からExcelでの管理方法までわかりやすく解説
現場管理・業務管理

「目標達成のために予算を立てたものの、実績との間にズレが生じてしまう」「毎月の予実管理がただの数値報告で終わってしまい、経営改善に活かせていない」といった悩みを抱えている担当者は少なくありません。
予実管理とは、単に数字を比較するだけの作業ではなく、企業の目標達成に向けたPDCAサイクルを回すための重要な経営管理手法です。
この記事では、予実管理の基本的な意味や目的、具体的なやり方、そして予算管理との違いを分かりやすく解説します。
差異分析を的確に行うコツも紹介するため、自社に合った管理フローやツールの選び方を判断できるようになります。
監修:室田茂樹
株式会社プラスバイプラス 代表取締役
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予実管理とは?
予実管理とは、「予算」と「実績」を比較してその差異を分析し、目標達成に向けた軌道修正を行う経営管理手法のことです。単に計画と結果の数字を並べるだけでなく、なぜ差異が生まれたのか原因を追究し、次のアクションプランに繋げるまでの一連のプロセスを指します。
その意味で、予実管理は企業のPDCAサイクルを回すための根幹をなす活動といえます。
予算管理が計画(Plan)に重点を置くのに対し、予実管理は評価(Check)と改善(Action)のフェーズを担う重要な役割を持っています。
予実管理と混同されやすい「予算管理」や「原価管理」との違いを理解することで、より的な運用が可能になります。
予実管理は予算と実績の差を把握・分析すること
予実管理とは、企業が設定した売上や利益などの予算と、実際の経営活動によって得られた実績を比較し、その差を分析する活動を指します。このプロセスは、経営管理において目標達成への進捗状況を正確に把握するための不可欠な手段です。
単に差額を確認するだけでなく、「なぜ計画通りに進んでいるのか」「なぜ目標に届いていないのか」といった原因を深掘りすることで、経営課題の早期発見や改善策の立案に繋げます。
つまり、予実管理は企業の健全な成長を促すための進捗管理そのものです。
予実管理と予算管理の違い
予実管理と予算管理は密接に関連していますが、その目的と範囲が異なります。予算管理とは、企業の目標を達成するために、売上、費用、利益などの具体的な数値計画(予算)を策定する活動です。
これは主に計画(Plan)の段階に焦点を当てています。
一方、予実管理は策定された予算と実際の実績を比較・分析し、改善策を実行するまでの一連のプロセス(Check・Action)を含みます。
つまり、予算管理は予実管理を行うための前提であり、予実管理は予算管理を実効性のあるものにするための活動といえます。
予実管理と原価管理の違い
予実管理と原価管理は、どちらも経営管理の手法ですが、管理する対象範囲が異なります。原価管理は、製品の製造やサービスの提供にかかる費用である「原価」に特化した管理手法です。
目標となる標準原価を設定し、実際にかかった原価と比較分析することで、コスト削減や生産性の向上を目指します。
対して予実管理は、原価だけでなく、売上、販売費、一般管理費など、企業活動全体の数値を対象とします。
つまり、原価管理は予実管理の一部を構成する、より専門的なコスト管理の手法と位置づけられます。
原価管理の仕組み化については「エクセルで原価管理を仕組み化する方法」で詳しく紹介しています。
予実管理を行う目的
企業が予実管理を行う目的は、単に数字を管理することではありません。その必要性は、経営目標を達成するための羅針盤として機能する点にあります。
なぜ予実管理が必要かというと、計画と現実のギャップを可視化し、進むべき方向を常に確認・修正するためです。
具体的には、経営目標に対する進捗の把握、問題の早期発見、差異原因の分析を通じた改善活動、そして将来の적確な経営判断への活用という、経営の根幹に関わる複数の目的があります。
これらの目的を達成することで、企業はより健全な経営状態を目指せます。
経営目標に対する進捗を把握する
予実管理の最も基本的な目的は、企業が掲げた経営目標に対して、現在の進捗がどの段階にあるのかを正確に把握することです。月次や四半期ごとに予算と実績を比較することで、目標達成に向けたペースが順調か、あるいは遅れているのかを客観的な数値で可視化できます。
この進捗管理により、計画との乖離を早期に認識し、手遅れになる前に対策を講じることが可能になります。
定期的な進捗の確認は、組織全体の目標達成意識を高める効果もあります。
予算と実績のズレを早期に発見する
事業活動は常に市場の変化や内部的な問題など、予測不能な要素にさらされています。予実管理を行う目的の一つは、こうした要因によって生じる予算と実績のズレを、可能な限り早い段階で発見することです。
ズレを早期に検知できれば、その原因を迅速に特定し、影響が深刻化する前に対策を打つことができます。
これにより、経営上の課題に素早く対応し、損失を最小限に抑えることが可能となります。
また、定期的な実績のモニタリングは、将来の業績予測の精度を高める上でも役立ちます。
差異の原因を分析して改善につなげる
予実管理の目的は、予算と実績のズレを発見するだけで終わりません。その差異が「なぜ生じたのか」という原因を分析し、具体的な改善アクションに繋げることが極めて重要です。
例えば、売上未達の原因が営業活動の停滞なのか、市場全体の縮小なのかによって、打つべき対策は全く異なります。
原因を正確に特定することで、的な改善策を立案・実行でき、経営管理の質を高めることが可能です。
この分析と改善のサイクルこそが、企業の成長を促す原動力となります。
将来の業績予測の精度も高まります。
将来の予算や経営判断に活かす
過去の予実管理で蓄積されたデータは、将来の経営活動における貴重な財産となります。達成できた予算や未達に終わった予算、そしてその差異の原因を分析した結果は、次期の予算を編成する際の信頼性の高い根拠となります。
これにより、希望的観測や勘に頼らない、現実的で精度の高い計画立案が可能です。
また、新規事業への投資や不採算部門からの撤退といった重要な経営判断を下す際にも、過去の予実データが客観的な判断材料として活用できます。
建設業におけるデータ活用経営については「利益改善につながる実践手法」で詳しく紹介しています。
予算と実績を比較する方法
予実管理のやり方は、まず予実管理表を作成し、予算と実績の数値を並べて比較することから始まります。この手順は、目標達成に向けた計画と現実のギャップを可視化するための基本的なフローです。
具体的には、差異額や達成率を計算し、それを売上・費用・利益といった項目ごとに確認していく流れとなります。
この比較作業を通じて、どの部分に問題があるのかを特定し、次の分析や改善アクションへと繋げていきます。
では、なぜ予算と実績に差異が生まれるのでしょうか。
その主な原因を見ていきます。
予算・実績・差異を予実管理表にまとめる
予実管理の第一歩は、必要な数値を一覧できる「予実管理表」を作成することです。一般的に、行には勘定科目(売上高、売上原価、人件費、広告宣伝費など)を、列には月や四半期ごとの「予算」「実績」「差異」「達成率」といった項目を設定します。
この表に、事前に立てた予算計画の数値と、会計データなどから集計した実績の数値を入力します。
これにより、目標設定と実績が一目で比較できる状態になり、分析の土台が整います。
差異額を計算する
予実管理表に予算と実績の数値を入力したら、次にそれぞれの項目で差異額を計算します。計算式は単純で、「実績額−予算額」となります。
この結果、差異額がプラスであれば予算を上回る実績、マイナスであれば予算を下回る実績となります。
目標設定に対してどの程度の差が出ているかを金額で具体的に把握することで、経営へのインパクトの大きさを定量的に評価できます。
予算達成率を確認する
差異額と合わせて予算達成率も算出すると、進捗状況をより直感的に理解しやすくなります。達成率は「実績額÷予算額×100%」で計算します。
この比率を見ることで、目標に対してどれくらいの割合まで到達しているかが一目でわかります。
特に、部門間でのパフォーマンス比較や、過去の同じ時期との進捗度合いを比べたい場合に有効な指標です。
達成率が著しく低い、あるいは高すぎる項目は、重点的に分析すべき対象となります。
売上・費用・利益ごとに確認する
最終的な利益の差異だけを見ていては、問題の本質を見誤る可能性があります。正確な状況を把握するためには、利益を構成する要素である「売上」「費用(原価、販売管理費など)」の各項目に分解して差異を確認することが重要です。
例えば、利益が予算通りでも、内訳を見ると「売上は未達だが、経費削減でカバーしている」という状況かもしれません。
このように項目ごとに比較することで、企業の収益構造における具体的な課題を特定しやすくなります。
例えば、売上・費用・利益について予算と実績を比較すると、以下のようになります。
| 項目 | 予算 | 実績 | 差異 | 予算消化率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上 | 1,000万円 | 900万円 | ▲100万円 | 90% |
| 費用 | 600万円 | 650万円 | +50万円 | 108.3% |
| 利益 | 400万円 | 250万円 | ▲150万円 | 62.5% |
このように、最終的な利益だけを見るのではなく、売上や費用に分けて予算と実績を比較することで、「売上の不足が原因なのか」「費用の増加が原因なのか」を把握しやすくなります。
なお、費用については達成率が高いほど良いとは限りません。予算を超えて費用が発生している場合は、その原因を確認する必要があります。
予算と実績に差異が発生する主な原因
予算と実績に差異が生じる原因は多岐にわたりますが、いくつかの典型的なパターンに分類できます。売上や原価といった実績値の変動だけでなく、そもそも予算計画に無理があったり、実績の報告体制に問題があったりするケースも少なくありません。
これらの原因を正しく特定することが、効果的な対策を講じるための第一歩です。
自社の状況がどのパターンに当てはまるかを把握することで、表面的な数字のズレに一喜一憂するのではなく、根本的な課題解決に向けた効率化が可能になります。
これらの原因を特定した上で、具体的な管理プロセスを進めていく必要があります。
売上が予算を下回っている
売上予算が未達となる原因は、内部要因と外部要因に大別されます。内部要因としては、営業担当者のパフォーマンス不足、マーケティング施策の失敗、新商品の投入スケジュールの遅延などが挙げられます。
外部要因には、景気の後退、競合他社の台頭、顧客ニーズの変化、予期せぬ市場の縮小などがあります。
実績を詳細に分析し、どの製品やサービス、どの顧客層で売上が落ち込んでいるのかを特定し、適切なフローで見直すことが重要です。
原価や経費が予算を上回っている
原価や経費が予算を超過する主な原因として、原材料価格やエネルギーコストの高騰、想定外の設備修繕費の発生、人件費の上昇、外注費の増加などが考えられます。また、非効率な業務プロセスによる残業代の増加や、無駄な経費の発生も要因となり得ます。
会計システムやERPと連携して実績データを正確に把握し、どの費目が予算を圧迫しているのかを特定することが、コスト管理を効率化する上で不可欠です。
外注費管理については「建設業の外注費管理を強化する方法」で詳しく紹介しています。
価格や市場環境が変化している
予算策定時には予測できなかった急激な市場環境の変化も、差異を生む大きな原因です。例えば、為替レートの変動による輸出入価格の変化、競合他社による大幅な値下げ攻勢、新たな技術の登場による自社製品の陳腐化、法規制の変更などが挙げられます。
こうした外部環境の変化は自社でコントロールすることが難しいため、いかに迅速に変化を察知し、事業戦略を柔軟に修正できるかが重要になります。
予算そのものに無理がある
実績側に問題がなくとも、設定した予算自体が非現実的であるために大きな差異が生じるケースも少なくありません。過去の実績や市場の成長性を無視した高すぎる目標や、現場の状況を考慮しないトップダウンでの目標設定は、達成が困難であるだけでなく、従業員のモチベーション低下にもつながります。
予算は、挑戦的でありながらも、客観的なデータに基づいた現実的な計画でなければなりません。
実績の集計が遅れている
タイムリーな予実管理ができていない場合、その原因は実績の集計遅延にあるかもしれません。各部署からの実績報告が遅れたり、手作業でのデータ入力や集計に時間がかかったりすると、経営陣が最新の状況を把握するのが遅れてしまいます。
その結果、問題の発見が遅れ、対策を講じるタイミングを逃してしまうことになります。
迅速な意思決定のためには、実績データを効率的に収集・集計する仕組みが不可欠です。
予実管理の進め方
予実管理は、一度きりの作業ではなく、継続的なPDCAサイクルを回していくプロセスです。その進め方は、大きく6つのステップに分けられます。
まず目標と予算を設定し、定期的に実績を集計して比較します。
次に、そこで生まれた差異の原因を分析し、具体的な改善策を立てて実行します。
最後に、その結果を次回の計画に反映させるという流れです。
この一連のプロセスを繰り返すことで、経営の精度を高めていく手法です。
このプロセスをより効果的に進めるためには、いくつかのポイントを押さえることが重要です。
1.目標と予算を設定する
まず、企業の経営理念や中期経営計画に基づき、年度の具体的な目標を設定します。次に、その目標を達成するための行動計画を立て、売上や費用、利益といった項目に具体的な数値を落とし込み、予算として策定します。
この際、損益計算書の構造に沿って項目を設定すると、後の実績比較や差異分析がスムーズになります。
予算は全社レベルだけでなく、部門や事業部単位でも設定することが重要です。
2.実績を定期的に集計する
次に、設定した期間ごとに、実際の事業活動の結果である実績データを集計します。会計システムや販売管理システムなど、社内の各システムから必要な数値データを収集し、予算と同じ項目・形式でまとめます。
データの正確性と迅速性がこのステップでは重要です。
手作業での集計はミスが発生しやすく、時間がかかるため、集計プロセスを自動化・効率化することが難しい課題の一つです。
3.予算と実績を比較する
集計した実績データを、事前に作成した予実管理表上で予算と比較します。各項目について、予算額、実績額、そして両者の差額である「差異」と、目標に対する進捗度を示す「達成率」を算出します。
この比較作業により、どの項目が計画通りに進んでいて、どの項目に問題が生じているのかが数値として明確になります。
この段階では、まず客観的な事実を把握することに集中します。
4.差異が生じた原因を分析する
予算と実績の間に差異が生じている項目について、その原因を深掘りして分析します。単に「売上が未達だった」で終わらせず、「なぜ未達だったのか」を追求します。
例えば、「競合の新商品発売の影響で主力商品のシェアが低下した」「営業担当者のAチームの活動量が計画を下回った」など、具体的な要因を特定します。
原因は一つとは限らないため、多角的な視点から分析することが重要ですす。
5.改善策を検討・実行する
差異の原因分析で特定された課題に対し、具体的な解決策(アクションプラン)を検討し、実行に移します。例えば、売上未達の対策として「新たな販促キャンペーンの実施」や「営業エリアの見直し」、経費超過の対策として「特定の経費項目の使用ルール徹底」や「仕入先の見直し」などが考えられます。
改善策は、担当者、実行期限、目標数値を明確にして、実行可能なレベルまで落とし込むことが重要です。
6.次回の予算や計画へ反映する
一連の予実管理サイクルを通じて得られた実績データや分析結果、改善策の効果などを、次期の予算編成や事業計画にフィードバックします。例えば、「今期の実績は市場成長率を上回ったため、来期はより挑戦的な売上予算を設定する」「今期の経費超過の反省から、来期は特定の経費予算を厳しく管理する」といった形です。
これにより、計画そのものの精度が向上し、より実態に即した経営管理が実現します。
予実管理を行う際のポイント・注意点
予実管理を形骸化させず、実効性のあるものにするためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。計画の精度を高め、効率的に運用し、そして最も重要な「改善」につなげるための注意点です。
これらのポイントを意識することで、単なる数字合わせの作業に終わらせず、経営課題の発見と解決に直結する戦略的な活動へと昇華させることができます。
このプロセスをより効果的に進めるためには、いくつかのポイントを押さえることが重要です。
予算の根拠を明確にする
予算を設定する際は、「なぜこの数値目標なのか」という根拠を明確にすることが不可欠です。過去の実績データ、市場の成長率、競合の動向、そして具体的なアクションプランといった客観的な情報に基づいて予算を組み立てるべきです。
根拠が曖昧な予算は、現場の納得感を得られないだけでなく、差異分析の際にも原因の特定が困難になります。
論理的な根拠に基づいた予算策定の考え方は、予実管理を成功させるための重要な手法です。
管理する項目を細かくしすぎない
予実管理の精度を上げようとするあまり、管理項目を過度に細かく設定してしまうと、データ集計や分析にかかる負担が増大し、担当者が疲弊してしまいます。結果として、予実管理そのものが形骸化する原因になりかねません。
管理すべきは、経営判断に直接影響を与える重要な項目に絞り込むべきです。
どの項目が自社の改善計画や将来予測に不可欠かを見極め、シンプルで継続可能な運用を目指すことが重要です。
定期的に予算と実績を比較する
予実管理は、リアルタイムに近い形で経営状況を把握することが重要です。そのため、比較・分析のタイミングをあらかじめルール化し、定期的に実施する習慣をつけなければなりません。
多くの企業では月次でレビューを行いますが、事業のスピードが速い業界では週次での確認が必要な場合もあります。
期末にまとめて振り返るのではなく、定点観測をすることで、問題の早期発見と迅速な軌道修正が可能になります。
差異の大きさだけで判断しない
予算と実績の差異を分析する際、差異額や達成率といった数字のインパクトだけで良し悪しを判断するのは危険です。例えば、差異額が小さくても、その背景に市場シェアの低下といった構造的な問題が隠れている可能性があります。
逆に、差異額が大きくても、それは一時的な要因によるもので、長期的には問題ないケースもあります。
数字の裏にある定性的な情報(市場の動向、現場の声など)も考慮し、総合的に状況を判断することが重要です。
集計すること自体を目的にしない
予実管理でよくある失敗が、予算と実績の数値を集計し、報告書を作成した時点で満足してしまうことです。しかし、予実管理の本来の目的は、集計したデータから課題を発見し、次の改善アクションにつなげることです。
常に「このデータから何が言えるのか」「次は何をすべきか」という問いを持ち、分析と改善をセットで行う意識がなければ、予実管理は単なる事務作業で終わってしまいます。
担当者ごとに管理方法を変えない
部門や担当者ごとに異なるフォーマットや集計ルールで予実管理を行っていると、全社的な視点でデータを比較・分析することが困難になります。例えば、ある部署では経費を細かく分類しているが、別の部署では大雑把にしか管理していない、といった状況では正確な経営状況を把握できません。
全社で統一された勘定科目、集計期間、管理フォーマットといったルールを定めることで、データの一貫性が保たれ、効率的かつ正確な予実管理が可能になります。
予実管理をExcelで行う方法
多くの企業、特に中小企業や予実管理の導入初期段階では、Excelが主要なツールとして利用されます。手軽に始められ、柔軟にカスタマイズできる点が魅力ですが、一方で運用が属人化しやすく、事業規模の拡大に伴って限界が生じるという側面も持ち合わせています。
ここでは、Excelを使った予実管理表の基本的な作り方から、そのメリット・デメリットまでを解説し、効果的な進捗管理や評価への活用法を探ります。
Excelには手軽さというメリットがある一方、限界もあります。
そこで、システム化という選択肢も視野に入れる必要があります。
Excelによる予実管理表の作り方
Excelで予実管理表を作成する場合、まず縦軸(行)に損益計算書の項目(売上高、売上原価、販売費及び一般管理費など)を並べます。横軸(列)には、月次(4月、5月...)、年度累計、通期見込みなどを設定し、各項目に対して「予算」「実績」「差異」「達成率」の欄を設けるのが一般的です。
SUM関数で合計を、IF関数で条件に応じた表示を、VLOOKUP関数で他シートからのデータ参照を行うなど、基本的な関数を駆使して作成します。
ピボットテーブルを使えば、多角的なデータ集計や分析も可能です。
進捗管理や評価に使いやすいよう、グラフ機能で可視化するのも有効です。
Excelで予実管理するメリット
Excelで予実管理を行う最大のメリットは、多くの企業で既に導入されており、追加のコストがかからない点です。また、多くのビジネスパーソンが基本的な操作に慣れているため、特別なトレーニングなしで導入しやすいのも利点です。
関数やマクロを使えば、自社の業態や管理したい項目に合わせて、フォーマットを自由にカスタマイズできる柔軟性の高さも魅力と言えます。
小規模な組織や、特定のプロジェクト単位での予算管理など、初期の改善フローを構築するには十分な機能を備えています。
Excelで予実管理するデメリット・注意点
Excelでの予実管理には多くのデメリットも存在します。手作業での入力が多くなるため、入力ミスや計算式の破損といったヒューマンエラーが発生しやすい点が挙げられます。
また、データ量が増えるにつれてファイルの動作が重くなり、管理が非効率になります。
複数人で同時にファイルを編集することが難しく、バージョン管理が煩雑になりがちです。
さらに、担当者独自の複雑な関数やマクロが組まれると、業務が属人化し、異動や退職の際に引き継ぎが困難になるリスクも抱えています。
予実管理をシステムで行う方法
事業規模の拡大や管理の複雑化に伴い、Excelでの予実管理に限界を感じた場合、専用の予実管理システムへの移行が有効な選択肢となります。システムを導入することで、データ収集の自動化、リアルタイムでの業績可視化、そして高度な差異分析が可能になり、予実管理の精度向上に大きく貢献します。
ここでは、予実管理システムが持つ機能や導入のメリット、そしてExcelからシステムへ移行すべきタイミングの目安について解説します。
特に、専門的な管理が求められる建設業では、特有の課題に対応した予実管理が不可欠です。
予実管理システムでできること
予実管理システムは、Excelでは手作業になりがちな多くの業務を自動化・効率化する機能を備えています。会計システムや販売管理システムと連携し、実績データを自動で取り込むことができます。
これにより、リアルタイムでの経営状況の可視化が可能です。
また、多角的なレポート機能を持ち、部門別、製品別、プロジェクト別など様々な切り口での差異分析を容易に行えます。
予算編成プロセスを支援するシミュレーション機能や、ワークフロー機能を持つシステムもあり、これらは差異分析の精度を向上させるコツとなります。
導入には費用がかかりますが、業務効率化によって十分に回収できる可能性があります。
システムを利用するメリット
予実管理システムを導入する最大のメリットは、業務効率の大幅な向上です。データ収集やレポート作成が自動化されるため、担当者は単純作業から解放され、より付加価値の高い分析業務に集中できます。
また、システム連携によりデータの正確性と信頼性が担保され、ヒューマンエラーを削減します。
経営層はリアルタイムに更新される正確なデータに基づき、迅速かつ的な意思決定を下すことが可能になります。
これは、差異分析の精度を高め、効果的な改善策を導き出すための強力な手法となります。
Excelからシステムへの移行を検討する目安
Excelでの管理から専用システムへの移行を検討すべきタイミングには、いくつかの目安があります。「管理対象の拠点や部門が増え、データ集計に膨大な時間がかかるようになった」「Excelファイルの動作が重く、頻繁にフリーズする」「手作業による入力ミスや集計ミスが多発している」「経営層からリアルタイムでの業績報告を求められるようになった」といった状況が挙げられます。
年間の集計作業にかかる人件費とシステムの導入・運用コストを比較し、費用対効果を判断することも重要です。
リアルタイムでの進捗管理が事業の成否を分けるようになった時が、移行の好機と言えるでしょう。
建設業では工事単位の予実管理が重要
建設業における予実管理は、会社全体での管理に加えて、一つひとつの「工事(プロジェクト)」単位での管理が極めて重要になります。工事ごとに受注金額、工期、原価が大きく異なるため、個別の採算性を正確に把握しなければ、会社全体の利益を確保することが難しいからです。
ここでは、建設業特有の予実管理のコツと、それに伴う課題について解説します。
このような複雑な工事ごとの予実管理を効率化するためのツールも存在します。
建設業の原価管理の仕組み化については「工事原価を視える化する方法」で詳しく紹介しています。
工事ごとに実行予算と実績を比較する
建設業では、工事を受注した際、見積もりを基に詳細な原価を積み上げて「実行予算」を作成します。この実行予算が、その工事における利益目標の基準となります。
予実管理の基本は、この実行予算と、工事の進捗に伴って実際に発生した原価(実績)を定期的に比較することです。
この比較を通じて、工事が計画通りに利益を生み出しているか、あるいは赤字のリスクがないかを常に監視し、目標達成を目指します。
建設業の実行予算については「建設業の実行予算とは?」で詳しく紹介しています。
材料費・労務費・外注費・経費などの費目別に確認する
工事原価は、材料費、労務費、外注費、機械経費、現場経費など、複数の費目で構成されています。実行予算と実績の差異を分析する際は、原価の総額だけでなく、これらの費目ごとに比較することが重要です。
どの費目で予算オーバーが発生しているのかを具体的に特定することで、原因の追究と改善策の立案が容易になります。
例えば、「特定の材料費が高騰している」「想定以上に外注費がかさんでいる」といった課題が明確になり、次のアクションに繋げるための重要な報告となります。
工事途中から予算超過を把握する
建設業では、工事が完了してから最終的な原価が確定し、赤字が判明したのでは手遅れです。重要なのは、工事の進行中に予算超過の兆候を早期に掴むことです。
そのためには、日々の原価実績を正確に集計し、工事の進捗度(出来高)と照らし合わせて、現時点での原価率や最終的な原価見込みを常に把握しておく必要があります。
Excelでの管理も可能ですが、リアルタイムでの把握には限界があり、専門のシステムが有効です。
建設業の実行予算の作り方については「建設業の実行予算の作り方」で詳しく紹介しています。
完工後の結果を次の見積・実行予算に活かす
完了した工事の予実管理データは、会社にとって貴重な財産です。最終的な実行予算と実績原価を詳細に分析し、「なぜ利益が計画を上回ったのか」「なぜ赤字になったのか」を明らかにします。
例えば、特定の作業で想定以上に時間がかかった、ある材料の歩留まりが悪かった、といった具体的な知見が得られます。
この分析結果をデータベースとして蓄積し、次の同種工事の見積もり作成や実行予算編成の精度向上に活かすことで、会社の収益力を継続的に高めていきます。
工事ごとの予実管理を効率化するなら「要 ~KANAME~」
建設業の予実管理では、工事ごとに実行予算と実績原価を比較し、予算超過の兆候を早めに把握することが重要です。しかし、複数の工事をExcelで管理していると、実績の入力や集計、ファイルの更新に手間がかかり、最新の原価状況を把握しにくくなることがあります。建設業向け業務管理システム「要 ~KANAME~」を活用すれば、工事ごとの原価情報をまとめて管理できます。材料費・労務費・外注費などの費目単位で予算と実績を確認しやすくなるため、工事ごとの採算状況を把握する際にも役立ちます。
Excelによる工事管理に負担を感じている場合は、工事単位の原価管理を仕組み化する方法として建設業向け業務管理システム「要 ~KANAME~」を検討してみてはいかがでしょうか。
予実管理についてよくある質問
Q1. 予実管理と予算管理の違いは何ですか?
予算管理は、企業の目標達成を目指し、売上、費用、利益などの予算を策定し管理するプロセスを指します。一方、予実管理は、策定した予算と実績を比較し、その差異を分析して改善につなげる一連のプロセスと定義されることがあります。実務上、両者は同じ意味で使われたり、予実管理が予算管理の一部分として扱われたりすることもあります。Q2. 予算と実績の差異分析はどのように進めればよいですか?
まず、予実管理表などを使って予算と実績を比較し、差異額や達成率を確認します。次に、売上の減少や原価・経費の増加、市場環境の変化など、差異が発生した原因を分析します。原因を特定したら具体的な改善策を検討・実行し、その結果を次回の予算や計画へ反映することが重要です。Q3. 予実管理はどのくらいの頻度で行うべきですか?
予実管理を行う頻度は企業や事業によって異なりますが、月次で予算と実績を比較するのが一般的です。事業環境の変化が速い場合などは、週次で確認することもあります。期末にまとめて確認するのではなく、定期的に差異を確認し、問題があれば早い段階で対策できる運用にすることが重要です。Q4. Excelでの予実管理に限界を感じたらどうすればよいですか?
管理する部門やプロジェクト、工事などが増え、実績の入力や集計に時間がかかるようになった場合は、システムへの移行を検討する方法があります。特に、入力ミスやファイルのバージョン管理、担当者への属人化などが課題になっている場合は、システムによるデータの一元管理が予実管理を効率化する選択肢となります。Q5. 建設業ではどのように予実管理を行いますか?
建設業では、会社全体の予実管理だけでなく、工事単位で実行予算と実績原価を比較することが重要です。材料費・労務費・外注費・経費などの費目ごとに予算と実績を確認することで、どこで予算超過が発生しているのか把握しやすくなります。工事完了後だけでなく、工事の途中から定期的に確認することがポイントです。まとめ
予実管理とは、単に予算と実績の数字を比較する作業ではなく、企業の目標達成に向けたPDCAサイクルを回すための重要な経営管理手法です。その主な目的は、経営目標に対する進捗を可視化し、計画とのズレを早期に発見・分析して改善につなげることにあります。
基本的なやり方は、予算設定から実績集計、比較分析、改善策の実行、そして次期計画への反映というサイクルを継続することです。
Excelでも始めることは可能ですが、事業規模の拡大に応じて専用システムを導入することで、管理の効率化と精度向上が図れます。






