- 2026年07月21日
建設業の利益改善具体策とは?今すぐ実践できる方法を解説
原価管理・利益管理

建設業界において、案件が順調に増えて売上が上がっているにもかかわらず、手元に利益がなかなか残らないと悩む経営者は少なくありません。特に小規模の建設企業で急に案件が増え始めた時期や、事業規模の拡大を狙って受注を増やしたタイミングに、このような状況に直面しがちです。
本記事では、建設業で利益が出にくくなる原因から、経営を安定させるための利益改善に必要な考え方、そして今すぐ実践できる具体的な施策までを詳しく解説します。
建設業の利益改善の具体策を知りたい方は、ぜひ本記事を参考に自社の取り組みを根本から見直してみてください。
監修:室田茂樹
株式会社プラスバイプラス 代表取締役
コンテンツ
建設業で利益が出にくくなる原因
建設業において利益率が低下し、利益が出にくくなる背景には、業界特有の構造や外部環境の急激な変化など、複数の要因が複雑に絡み合っています。ここでは、利益を圧迫している主な5つの原因について、具体的なデータや状況を交えて詳細に解説します。
原価高騰
昨今の社会情勢により、建築資材の価格や燃料費が急激に上昇しており、業界全体に及ぶ深刻な人手不足から職人の人件費も高騰傾向にあります。建設業では受注から着工、完工までに数ヶ月から数年単位の長期間を要することが多く、数ヶ月前に提出した見積書でそのまま契約を進め、いざ着工の段階になって鉄骨や木材などの仕入れ価格が跳ね上がってしまうケースも決して珍しくありません。このように、外部環境の変化によるコスト増をあらかじめ見積書に見込んでおかなければ、想定していた利益は簡単に吹き飛んでしまいます。建設業の利益改善の具体策を考える上で、原価変動リスクを常に考慮することは最も急務な課題と言えます。
利益率低下
建設業情報管理センターのデータによると、建設業全体の平均的な粗利益率(売上高総利益率)は約25.95%〜26.5%とされています。しかし、業種によって差があり、土木建築業は平均18.05%、建築業は平均19.64%と低迷している分野もあります。さらに、公共工事は入札による価格競争が激しいため、民間工事と比べて利益率が低くなる傾向にあります。
また、元請けか下請けかによっても利益率には大きな差が生じます。他社との過度な価格競争に巻き込まれ、仕事を確実に獲得したい一心で利益を削った見積書を提示してしまうことは、業界全体の利益率を下げる大きな要因です。
相見積りを勝ち抜くために利益を限界まで削って受注した現場は、わずかなミスや手直しが発生しただけで即座に赤字へと転落しかねません。
外注費増加
工事内容の高度化に伴う専門化・分業化が進む建設業では、多くの工程を協力業者に外注することが一般的です。しかし、重層的な下請け構造により、中間段階でマージンが抜かれることで、下位下請けの施工対価が減少したり、元請けから見た全体の外注費が膨らんでしまいます。国土交通省も、多重下請け構造によって中間段階の企業に利益が受け取られるため、下位下請けへのしわ寄せが生じる恐れがあると指摘しています。
事前のすり合わせ不足やどんぶり勘定での発注、長年の付き合いだけで市場の適正価格を検証せずに外注を続けていると、無駄な外注費の増加を招き、自社の利益確保が極めて困難になります。
工程遅延
天候不良や資材の搬入遅れ、あるいは現場での予期せぬトラブルなど、さまざまな要因で予定していた工期が延びるリスクは建設現場に常に潜んでいます。当然ながら工期が延長されれば、それに伴って職人の日当や機材のリース代、仮設トイレのレンタル費用といった追加費用が必ず発生します。仮に予定より工事が1週間長引けば、その間の人件費やリース代が原価に上乗せされることは想像に難くありません。事前に見込んでいなかったこれらの見えないコストが原価を大きく押し上げ、結果として最終的な利益率を大きく引き下げる決定的な原因となってしまうのです。
見積り精度不足
適正な利益を確保するためには、精度の高い見積り作成が欠かせません。しかし、過去の経験や担当者の勘に頼ったどんぶり勘定の見積書を作成していると、実際の工事原価との間に大きなズレが生じます。材料費や外注費の細かな計上漏れ、あるいはリスクを見込んだ予備費の不足など、見積り精度が低いまま工事を受注することは、そのまま赤字受注のリスクに直結します。
商品を販売したその日に利益が確定する小売業などとは異なり、建設業は長期間にわたって経費が発生し続けるため、見積り作成時から工事完了までに原価が変動するリスクを考慮した、正確な根拠に基づく精緻な見積り作成が求められます。
利益改善に必要な考え方
利益が出にくい原因を把握した後は、経営の舵取りや社内の意識を根本から見直す必要があります。建設業の利益改善の具体策を講じる前に、経営者や管理職が持つべき重要な5つの考え方を解説します。売上重視から利益重視へ
従来、建設業界では「売上高至上主義」の傾向が強く、売上規模の維持や拡大のためなら薄利や赤字でも工事を受注する文化がありました。しかし、売上高がどれほど大きくても、利益率が低ければ手元に残る資金は乏しくなり、資金繰りに行き詰まり黒字倒産を引き起こしかねません。
仮に年間売上が1億円あったとしても、工事原価や経費に9,900万円を費やしていれば残る利益はわずか100万円です。この状況で不測の事態が起きれば、会社は即座に倒産危機に陥ります。
会社を持続的に成長・存続させるためには、単なる売上高の追求から脱却し、適正な利益を確実に確保する「利益重視」の経営へとシフトすることが何よりも重要です。
原価管理の重要性
利益を確実に会社に残すためには、徹底した原価管理が不可欠です。原価管理ができていないと適切な原価になっているかを把握できず、気づけば原価率が高くなってしまっていたという事態に陥りがちです。材料費、労務費、外注費、経費の4つの要素を細かく記録し、受注前に立てた実行予算と実際の発生費用に差異がないかを小まめに確認する必要があります。
どんぶり勘定から脱却し、正確なお金の流れを現場単位で把握することが利益改善の土台となります。
データ活用経営
担当者の勘や属人的な経験に依存したどんぶり勘定での経営判断は、資材高騰などの急激な変化に対応しきれないリスクがあります。利益率を向上させるためには、過去の工事実績データ、資材の仕入れ価格の推移、各現場のリアルタイムな原価状況など、客観的なデータを活用することが求められます。見積り作成時にも過去の類似工事のデータを参照することで、より現実的で精度の高い内容になり、赤字受注の回避と確実な利益改善へと繋がります。
継続改善の必要性
建設業の利益改善の具体策は一度施策を打てば終わりというものではありません。建設業を取り巻く市場環境や現場の状況は常に変化しています。そのため、定期的に原価の差異を分析し、新たな無駄が生じていないか、設定した利益率が維持できているかを確認する継続的な改善サイクルが必要です。現場ごとに得られた教訓や失敗の原因を洗い出し、それを次の見積り作成や施工計画に活かし続ける姿勢が、長期的な高収益体質の構築に不可欠です。
利益率基準の明確化
社内で適正な利益率の基準を明確に定めることも不可欠です。建設業で注視すべき利益率には、以下の5つがあります。- 売上高総利益率(粗利率):工事そのものの収益性。(売上総利益÷売上高)×100
- 売上高営業利益率:本社経費などを引いた本業の利益率。(営業利益÷売上高)×100
- 売上高経常利益率:借入金の利息などを含めた総合的な収益力。(経常利益÷売上高)×100
- 自己資本経常利益率:自己資金の運用効率。(経常利益÷自己資本)×100
- 総資本経常利益率:会社の総資産に対する利益率。(経常利益÷総資本)×100
すぐに実践できる利益改善策
考え方を改めた後は、具体的な行動に移しましょう。ここでは、今日からでも取り組むことができる、建設業の利益改善の具体策を5つ紹介します。原価差異分析
利益改善の第一歩は、実行予算(計画値)と実際の発生原価(実績値)のズレ(差異)を分析することです。工事の進行に合わせて、資材費、労務費、外注費などの各項目ごとに差異を確認し、想定よりもコストが膨らんでいる部分を早期に特定します。
なぜ差異が生じたのか原因を究明し、現場ですぐに対策を講じることで、赤字の拡大を未然に防ぐことができます。月1回にとどまらず、可能であれば週1回のペースで予算の消化状況を詳細にチェックする仕組みができれば理想的です。
外注費見直し
原価の大部分を占める外注費や材料費の定期的な見直しは、利益額をダイレクトに増やす上で非常に効果的です。長年の付き合いがある協力業者であっても聖域とせず、現在の市場価格と照らし合わせて取引条件を定期的に協議する場を設けましょう。
複数の業者から相見積りを取って適正価格を比較検討したり、各現場で点在している資材発注を会社全体でまとめて一括発注することで強力な単価交渉を行ったりと、品質を落とさずにコスト削減できる余地を徹底的に探ることが重要です。
工程改善
工程の遅延は職人の追加手配や機材の延長費用など、追加コストの発生に直結します。そのため、現場の工程管理を改善し、無理のない現実的なスケジュールを立案することが重要です。ただし、品質に直接関わるコストを安易に削減するのではなく、施工手順の効率化や手待ち時間の削減、余剰人員の適正配置など、品質に関わらない部分でのコスト削減余地を探索しましょう。
現場の状況を詳細に分析し、作業の無駄を省くことで、利益率の大幅な改善が期待できます。
見積り精度向上
赤字受注を絶対に避け、適正な利益を確実に見込むためには、見積り精度の向上が必須です。どんぶり勘定をやめ、過去の類似工事の実績データを参考にし、工事の規模や難易度を考慮した根拠のある見積書を作成しましょう。
また、社内での見積り作成基準を統一し、工事原価の算出方法や経費の計上基準、予備費の確保、目標利益率の設定基準などを明確に定めることで、担当者ごとの金額のばらつきをなくすことが建設業の利益改善の具体策として非常に有効です。
工事別損益管理
会社全体のどんぶり勘定での収支把握ではなく、工事(現場)ごとに個別の損益を管理することが重要です。建設業では工事進行基準が適用される場面も多く、原価の支払いと売上入金のタイミングにズレが生じやすいため、現時点での利益が見えにくくなります。そのため、現場ごとの原価を正確に把握し、どこで何のための費用が発生しているのかを明確にする必要があります。
進行中にリアルタイムで原価と利益を可視化する管理を行うことが、会社全体の収益力底上げに繋がります。
利益改善を阻害する課題
利益改善の施策を進める上で、社内の旧態依然とした管理体制や既存の仕組みが障壁となることが少なくありません。ここでは、利益率向上を阻む5つの社内課題について解説します。
Excel管理
多くの建設会社で原価管理や見積り作成にExcelなどを用いた手作業が残っていますが、データの収集や集計に多大な時間がかかり、意思決定をすぐに行うことが難しいという大きな課題があります。ファイルが各担当者のパソコンに分散して最新版がわからなくなったり、関数や手入力による人為的なミスが発生したりと、管理が煩雑になりがちです。リアルタイムでのデータ集計が難しいため、迅速な経営判断を妨げる最大の原因となります。
属人化
見積り作成や実行予算の策定、現場の原価管理などが特定の担当者の経験や勘に依存している「属人化」も深刻な課題です。社内の見積り作成基準が統一されていない場合、担当者のスキルや交渉力によって、提出する見積金額や確保できる利益率に大きなばらつきが生じてしまいます。
成功した現場のノウハウが会社全体に共有されないため、建設業の利益改善の具体策を全社で標準化して推進する上での大きな足かせとなります。
情報共有不足
現場と事務所、あるいは経営層との間で情報共有が上手くいっていないと、お金の流れをタイムリーに把握する仕組みが作れず、利益率の低下に直結します。現場で発生している追加工事や予算超過といったリアルタイムな状況が事務所に伝わらないと、原価差異の把握や早期の軌道修正ができません。
電話や口頭でのやり取りでは情報が抜け漏れやすく、現場管理者と経理担当者の緊密な連携を支える仕組みづくりが急務です。
集計遅れ
現場からの日報や請求書などの紙ベースでの報告が遅れ、経理担当者の手作業によるシステム入力に時間がかかると、原価集計に数週間から1ヶ月のタイムラグが生じます。集計が遅れると、工事がすべて完了し、請求書をまとめて集計した段階で初めて赤字に気付くといった手遅れの事態も起こり得ます。
リアルタイムに原価状況を把握できない体制は、異常値を早期に発見してコストを削減する対策を打つ機会を完全に奪ってしまいます。
現場任せ運用
お金の管理や発注を現場の裁量に完全に任せきりにしている状態も非常に危険です。現場では良かれと思って「大は小を兼ねる」という心理から予備の資材を過剰発注してしまったり、予算を気にせず外注を追加したりと、気づかないうちに適正な原価率を超えてしまうことがあり得ます。
経営者が現場のお金の状況をシステムなどで把握し、適切な牽制を効かせながらサポートする仕組みがなければ利益率は改善しません。
利益改善を継続するための仕組み
一時的な利益回復ではなく、長期にわたって高収益体質を維持するためには、属人的な努力に頼らない「仕組み化」が必要です。ここでは、利益改善を継続するための5つのポイントを解説します。
定期分析
実行予算と実績原価の差異分析を、工事が完了してからではなく、進行中にも定期的に行う仕組みを構築します。工事の進捗に応じて原価の発生状況を定期的に確認し、計画値と実績値の差異を分析することで、早期に問題を発見し軌道修正の対策を講じることができます。
この定期分析を週次や月次の定例会議などに組み込み、必ず実施する全社のルーティンとすることが重要です。
データ蓄積
過去の工事で作成した見積書、実行予算、最終的な原価明細などの情報を、会社の資産として一元的に蓄積していくことが重要です。見積り作成時に過去の類似工事の原価データを参照することで、より現実的で精度の高い見積り作成が可能となります。
ファイルサーバーの奥深くに埋もれさせるのではなく、システムを用いて検索・抽出が容易な状態でデータを蓄積・管理することが求められます。
KPI設定
利益改善に向けた具体的な目標値(KPI)を設定し、全社員で共有します。例えば「全工事の平均粗利率を25%以上にする」「資材の過剰発注によるロスを前年比で半減させる」といった明確な数値を設けます。
目標が数値化されることで、各部門の担当者が何を基準に行動し、どのようにコストを管理すべきかが明確になり、建設業の利益改善の具体策に対するモチベーション向上と自律的な行動を促します。
部門間共有
営業、見積り担当、現場監督、経理など、部門を越えた情報共有の仕組みを整えることが不可欠です。見積データと実際の原価データを同一のシステム上で一元管理することで、見積精度の向上と原価管理の効率化が図られます。デジタルツールやチャット機能などを活用し、全員が見積りから原価管理まで同じ最新データにアクセスできる環境を構築することが重要です。
改善サイクル運用
計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)のサイクルを組織全体で回し続ける運用体制を作ります。工事ごとの損益結果を評価し、なぜ高い利益が出たのか、なぜ想定より経費がかかってしまったのかを振り返り、その教訓を次の見積り作成や施工計画の改善に必ず反映させます。この改善サイクルを回し続けることで、少しずつ無駄が削ぎ落とされ、会社全体の利益率が持続的に向上していく基盤が完成します。
要 〜KANAME〜を活用した利益改善の進め方
建設業の利益改善を進めるためには、工事ごとの原価や利益を継続して確認し、数字の変化に応じて対応を考えることが重要です。こうした工事ごとの利益管理を行いやすくするのが、工事台帳をベースにした建設業向け原価管理ソフト「要〜KANAME〜」です。
工事ごとの原価を確認できる
「要〜KANAME〜」では、材料費や労務費、外注費などの原価情報を工事台帳にまとめて管理できます。複数のExcelや紙の資料へ情報が分散している場合と比べて、工事ごとにどのような費用が発生しているのかを確認しやすくなります。
工事ごとの利益を把握できる
工事ごとの売上・原価・利益を確認することで、会社全体の売上だけでは分からない、各工事の採算状況を把握できます。利益率が予定より下がっている工事を確認し、原価が増えた原因や今後の対応を検討するための判断材料にできます。
工事中の利益状況を確認できる
日報や原価情報を入力することで、工事中の原価や利益状況をリアルタイムに確認できます。工事完了後に初めて採算を確認するのではなく、工事の進行中に数字を確認し、必要に応じて発注内容や工事の進め方を見直せます。
蓄積した情報を次の工事に活用できる
工事台帳に蓄積された過去の売上・原価・利益を振り返ることで、類似工事の見積りや予算を検討する際の参考にできます。工事ごとの結果を確認し、原価が増えた原因や利益を確保できた要因を次の工事へ反映することで、継続的な利益改善につなげやすくなります。
建設業の利益改善の具体策についてよくある質問
Q1. 売上を上げるよりも、利益改善を優先すべきなのはなぜですか?
売上が増えても、材料費や外注費、労務費などの原価がそれ以上に増えると、会社に残る利益は少なくなるためです。受注量や売上高だけで判断せず、工事ごとの原価と利益を確認することが重要です。利益率が下がっている原因を把握し、見積りや発注、工事の進め方を見直すことで、利益を残しやすい状態を目指せます。
Q2. 小規模な会社ですが、システムの導入は本当に必要でしょうか?
Excelや紙で問題なく管理できている場合は、必ずしもすぐにシステムを導入する必要はありません。ただし、工事数が増えて情報が複数のファイルに分散している、集計に時間がかかる、工事ごとの利益をすぐ確認できないといった課題がある場合は、システムの活用を検討する価値があります。自社の工事数や管理方法、導入後の運用負担を踏まえて判断しましょう。
Q3. 利益率を高めるための見積り作成のポイントは何ですか?
材料費・労務費・外注費・経費などの原価を漏れなく計上し、必要な利益を加えた金額になっているかを確認することが基本です。過去の類似工事の実績を参考にすると、実際に発生しやすい費用を見積りへ反映しやすくなります。また、資材価格の変動や追加作業の可能性、工期が延びた場合の費用なども考慮し、自社で受注できる金額の基準を決めておくことが重要です。






