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  • 2025年10月29日

施工管理の原価管理とは?建設業の工事における目的とメリットを解説

施工管理の原価管理とは?建設業の工事における目的とメリットを解説

建設業の現場では、材料費の高騰、人手不足、短納期といった課題が常態化しており、会社の利益を守るために欠かせないのが「原価管理」です。

原価管理とは、工事一件ごとにかかる費用を正確に算出し、予算内に収めることで適切な利益を確保するための一連の管理活動を指します。

具体的には、「予算を超えていないか」「どの現場が利益を出しているのか」「赤字の原因はどこか」といった点を数字で把握することで、安定した収益を出すことにつながります。

しかし、実際には、Excel管理が煩雑で数字が合わない、工事完了後に赤字が発覚する、日報・出面が手作業で遅れるといった声が多く聞かれるのが現状です。

この記事では、施工管理における原価管理の基本から、目的・実践手順・システム化・経営判断までを、現場目線で分かりやすく解説いたします。

コンテンツ

施工管理における原価管理の基本を解説

施工管理における原価管理は、建設工事で発生する費用を正確に把握し、計画された予算内で工事を完了させるための活動です。
その根幹をなすのが、工事にかかった費用を項目ごとに集計・算出する原価計算です。

実行予算と実際にかかった原価を比較分析することで、問題点を早期に発見し対策を講じることが可能となり、利益の確保や経営体質の改善に結びつきます。
まずは、建設工事の原価がどのような費用で構成されているのかを理解することが第一歩です。

 

関連記事:
【すぐ実践できる】原価管理とは?目的やメリット、管理方法の全体の流れをわかりやすく解説
建設業の工事原価管理のやりやすい方法|難しい理由と実践メリットを紹介
 

工事原価を構成する4つの主な費用(材料費・労務費・外注費・経費)

工事原価は、主に「材料費」「労務費」「外注費」「経費」の4つに分類されます。
材料費は、木材、鉄筋、コンクリートといった工事に使用する資材の購入費用です。
労務費は、自社で雇用している職人や現場作業員へ支払う賃金、給与、賞与、各種手当などを指します。

外注費は、鳶工事や電気工事といった専門的な作業を協力会社や下請け業者に依頼した際に支払う費用です。
経費は、これら3つに含まれない全ての費用を指し、現場事務所の賃料や水道光熱費、重機・車両のリース代、保険料などが該当します。
これらの費用を正確に分類し把握することが、的確な原価管理の基礎となります。

 

原価管理の必要性の高まりにある背景

建設業界では、近年特に原価管理の重要性が増しています。その背景には、建設資材価格の高騰や人件費の上昇、そして人手不足といった複合的な要因があります。例えば、ウッドショックや円安などの影響により、木材や鋼材といった主要な建築資材の価格が軒並み高騰し、建設業者の利益を圧迫している状況です。

また、少子高齢化の進展により建設業界の担い手が減少しており、これに伴う労務費の高騰も避けられない課題となっています。 さらに、建設業界特有の複雑な原価計算方法や、手作業による膨大な事務処理も、原価管理を難しくしている要因です。 これらの課題に対応し、適切な利益を確保するためには、より一層の原価管理の徹底が不可欠なのです。

 

材料費の高騰

近年、建設業界において原価管理の重要性が高まっている背景には、複数の要因が複雑に絡み合っています。

特に、建設資材の価格高騰は大きな課題です。2021年に発生したウッドショックでは、新型コロナウイルスによるアメリカの住宅需要増加や中国での木材需要急増などが影響し、木材価格が一時的に急騰しました。

ピークは過ぎたものの、現在も木材価格はウッドショック前の水準には戻っていません。

さらに、ロシア・ウクライナ情勢に起因する原油価格の高騰は、輸送コストの増加に直結し、あらゆる資材の価格を押し上げています。加えて、歴史的な円安の進行も輸入資材の価格高騰に拍車をかけており、今後の価格上昇が懸念されています。

こうした外部要因は企業努力だけでは避けられないため、リアルタイムでのコスト把握と迅速な代替策が求められています。

 

人件費の高騰

近年、建設業界において原価管理の重要性が高まっている背景には、少子高齢化に伴う労働力人口の減少と、それに伴う人件費の高騰があります。

慢性的な人手不足が続く中で、企業は優秀な人材を確保するために、賃金の上昇だけでなく、働き方改革の推進や法定福利費の適正な負担など、従業員の待遇改善に積極的に取り組む必要が生じています。

これにより、企業が負担する労務費は増加傾向にあり、工事原価全体を押し上げる要因となっています。

こうした状況下で、適切な利益を確保するためには、上昇する人件費を含むあらゆるコストを詳細に把握し、効率的な管理を行うことが不可欠です。

労務歩掛りの見える化日報データの自動集計が、赤字化防止の鍵となります。

 

求められる事務作業の効率化

建設業界では、多くの企業が原価管理をExcelなどの表計算ソフトで実施しているのが現状です。

しかし、手作業でのデータ入力や集計は、ヒューマンエラーによる入力ミスや二重入力、ファイル管理の手間など、非効率な業務につながりやすく、事務作業の増加を招いています。結果として、作業全体の効率が低下し、本来の業務に支障をきたすケースも少なくありません。

適切な原価管理システムを導入することで、これらの課題を解消し、データ入力の自動化や情報の一元管理が可能になります。

これにより、事務作業を効率化し、より正確な原価状況をリアルタイムで把握することができ、企業の生産性向上に貢献します。

 

建設業で原価管理が重要視される3つの目的

建設業において原価管理を徹底する目的は、単にコストを把握する行為にとどまりません。
適切な利益を確保して会社の経営基盤を安定させることはもちろん、予期せぬ赤字工事の発生を未然に防ぎ、さらには将来の受注活動に不可欠な見積もりの精度を高めるという、経営戦略上重要な役割を担っています。

ここでは、原価管理が重要視される具体的な3つの目的について解説します。

 

適切な利益を確保して会社の経営を安定させるため

建設業は請負金額が大きく、一つの工事の採算が悪化するだけで経営全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
原価管理を徹底することで、実行予算と日々発生する実際の原価を常に比較し、計画通りに利益が出ているかを確認できます。
もし予算を超過しそうな項目があれば、その原因を早期に特定し、資材の発注先を見直したり、作業工程を効率化したりといった対策を迅速に講じることが可能です。

このようにして各工事で確実に利益を積み上げていくことが、会社のキャッシュフローを改善し、安定した経営基盤を築くことにつながります。

 

赤字工事の発生を未然に防ぐため

赤字工事は会社の利益を損ない、経営体力を著しく消耗させる大きな要因です。
原価管理は、こうしたリスクを未然に防ぐための重要な仕組みとして機能します。
工事の進捗に合わせて原価をリアルタイムで把握することにより、予算超過の兆候を初期段階で察知することが可能になります。

例えば、特定の材料費が想定よりも高騰している、あるいは追加作業の発生で労務費が増加しているといった問題を発見できれば、本格的な赤字に陥る前に対策を打てます。
問題が大きくなる前に迅速に対応することで、最終的な損失を最小限に抑えることができます。

 

次の工事の見積もり精度を高めるため

原価管理の目的は、進行中の工事の利益を確保するだけではありません。
完了した工事の原価データを正確に蓄積・分析することで、将来の受注活動に活かすという重要な側面も持ちます。

過去の同種工事で実際にどれくらいの材料費や労務費、外注費がかかったのかという実績データは、次の工事の見積書を作成する際の信頼性の高い根拠となります。
経験や勘だけに頼るのではなく、実績に基づいた精度の高い見積もりを提出することで、適正な価格での受注が可能となり、結果として会社の競争力強化に貢献します。

 

経営判断に使う原価KPIとアラート設計

KPI 定義 目安/アラート 次アクション例
原価予実乖離率 実績原価 ÷ 実行予算 − 1 ±3%超で要レビュー 工程再編/代替材・発注先見直し
粗利率 (請負 − 実績原価) ÷ 請負 20%未満で重点管理 VE提案、外注条件再交渉
出来高vs原価進捗乖離 出来高進捗 − 原価進捗 ±5pt超で警戒 段取り改善、工種前倒し
労務歩掛り 労務費 ÷ 出来高 **前月比+10%**で対策 要員配置見直し、手戻り是正
 

施工管理が原価管理を徹底する3つのメリット

施工管理者が原価管理を徹底することは、現場レベルでの業務改善だけでなく、会社経営全体に多くのメリットをもたらします。
工事の利益状況をリアルタイムで可視化できるようになるほか、コスト構造を分析することで無駄を削減し、利益率の改善に直接貢献します。

さらに、どんぶり勘定といわれるような経験則に頼った経営から脱却し、客観的なデータに基づいた的確な経営判断を下すための強固な基盤を構築することが可能です。

 

工事の利益状況をリアルタイムで把握できる

原価管理を導入する大きなメリットの一つは、工事の利益状況をリアルタイムで把握できる点です。
従来の方法では、工事が完了して全ての支払いが済むまで最終的な損益が確定しないケースも少なくありませんでした。
しかし、原価管理の仕組みが整っていれば、工事の進捗に合わせて実行予算と実績原価を常時比較できます。
これにより、「現時点でどれくらいの利益が出ているのか」「どの費用が予算を圧迫しているのか」といった状況を即座に把握可能です。

問題の兆候を早期に発見し、手遅れになる前に対策を講じることができます。

 

無駄なコストを削減し利益率を改善できる

原価管理によって各費用の内訳が詳細に可視化されると、どこに無駄なコストが潜んでいるのかが明確になります。
例えば、複数の現場のデータを比較分析することで、特定の資材の仕入れ価格が他よりも割高であることや、非効率な作業手順によって余計な労務費が発生していることなどが明らかになります。

これらの具体的な問題点に対して、仕入れ先の見直し、作業プロセスの改善、省力化技術の導入といった対策を講じることで、直接的なコスト削減が可能です。
こうした地道な改善の積み重ねが、工事全体の利益率を向上させます。

 

どんぶり勘定から脱却し経営判断に役立てられる

経験や勘に依存した「どんぶり勘定」では、客観的な経営状況の評価が難しく、場当たり的な判断に陥りがちです。
原価管理を徹底し、各工事の正確な収支データを蓄積していくことで、データに基づいた論理的な経営判断が可能になります。

例えば、どの種類の工事が最も利益率が高いのか、どの協力会社との連携が最もコストパフォーマンスに優れているのかといった戦略的な分析が行えます。
これらの客観的なデータは、将来の事業展開や設備投資、人材採用といった重要な経営上の意思決定を行う際の、信頼できる判断材料となります。

 

工事原価管理が難しい背景

建設業界では、工事の原価管理が他の産業に比べて複雑であり、難しい業務の一つとされています。

その背景には、建設業特有の会計処理や費用構造、そして従来の管理方法に起因する課題が複数存在するためです。

これらの要素が組み合わさることで、経理担当者にとって工事の原価を正確に把握し、管理する難易度が高まっています。

 

勘定科目が特殊

建設業の工事における原価管理が難しいとされる理由の一つとして、勘定科目が特殊である点が挙げられます。

一般的な企業が使用する商業会計や製造業で使われる工業会計とは異なり、建設業では「建設業会計」と呼ばれる独自の会計ルールと勘定科目が国土交通省によって定められています。

この建設業会計では、工事に関する費用をより細かく分類する必要があり、例えば、一般的な勘定科目である「売上原価」は、「完成工事原価」として計上されます。

また、「材料費」「労務費」「外注費」「経費」といった主要な費用項目も、さらに詳細な内訳に分類されることが特徴です。

このように、建設に特化した複雑な勘定科目を用いるため、経理担当者には建設業会計に関する専門知識が求められます。この特殊性が、工事の原価管理の難易度を高める要因となっているのです。

 

建設業会計特有の勘定科目

建設業会計は、一般的な会計とは異なる独自の勘定科目が存在します。

主要な勘定科目として、工事の売上高に当たる「完成工事高」、工事にかかった総費用である「完成工事原価」、そして完成工事高から完成工事原価を引いた「完成工事総利益」が挙げられます。

完成工事原価には、材料費、労務費、外注費、経費が含まれます。また、まだ完成していない工事に対して支出した費用は「未成工事支出金」として計上され、完成した工事の代金のうち、まだ受け取っていないものは「完成工事未収入金」となります。

反対に、完成していない工事に対して前もって受け取ったお金は「未成工事受入金」、工事の原価に含まれるお金のうち、まだ支払っていないものは「工事未払金」として処理されます。

これらの特殊な勘定科目は、建設業の収益認識基準や工事の進捗状況を正確に反映するために用いられており、建設業における収入と支出を明確に区別し、正確な売上と利益を把握するために不可欠です。

 

建設業特有の「外注費」

建設業における原価計算では、一般的な製造業と違い、「外注費」という独自の費用項目が存在することが大きな特徴です。

材料費、労務費、経費という3つの原価要素に加えて、建設業では工事の一部または全部を外部の業者に委託する際に発生する費用を「外注費」として計上します。

具体的には、専門工事会社や一人親方と呼ばれる独立した個人事業主へ業務を委託した場合の支払いがこれに該当します。

しかし、この外注費と労務費の線引きは曖昧になりやすく、適切な原価計算を行う上で注意が必要です。

例えば、単に人手が足りないため、一時的に他の事業者から応援を依頼した場合、これは「労務費」として処理されます。

一方で、特定の専門工事を一式で請け負わせた場合は「外注費」となります。

このように、同じ「人」が関わる費用であっても、その実態によって勘定科目が異なるため、建設業の経理担当者は、賃金が発生した状況を詳細に確認し、正確な分類を行う専門知識が求められます。

この違いが、建設業の原価計算をより複雑にしている要因の一つです。

 

売上や原価などの分割計上

建設業における工事は、着工から完成、引き渡しまでが長期にわたるため、売上や原価を計上するタイミングが一般的な事業とは大きく異なります。

通常の製品販売では、顧客への納品が完了した時点で売上が確定しますが、建設業では工事の進行度合いに応じて、売上や原価を分割して計上することが一般的です。

この会計処理は「工事進行基準」と呼ばれ、工事の進捗度を合理的に見積もり、その度合いに応じて収益と費用を認識します。

例えば、1年間にわたる大型の建設工事の場合、毎期末にその時点での工事進捗率を算出し、対応する売上と原価を計上していくことになります。

しかし、工事進行基準は進捗度の見積もりに客観性や正確性が求められ、会計処理の中でも特に専門知識と経験を要するため、難易度が高いとされています。

また、2021年4月からは「新収益認識基準」が適用され、対象となる上場企業や大企業などは、顧客への財またはサービスの提供義務が履行された時点で、顧客が支払う対価の額で売上を計上しなければなりません。

この基準の導入により、建設企業は契約内容をより詳細に分析し、収益認識のタイミングと金額を適切に判断する必要が生じ、経理業務の複雑さが増しています。

これらの特殊な会計ルールが、建設業の原価管理をより一層困難にしている要因の一つです。

 

複雑な「共通費」

建設工事における原価管理を複雑にする大きな要因の一つに、「共通費」の存在が挙げられます。

共通費とは、特定の工事項目に直接紐づけることが難しいものの、工事全体を遂行するために間接的に必要となる費用のことです。

具体的には、工事現場で使用する足場や仮設通路の設置費用、現場事務所の賃料や水道光熱費、現場を運営する上で発生する消耗品費などがこれに該当します。

これらの共通費は、さらに「一般管理費等」「現場管理費」「共通仮設費」の3つに区分され、それぞれ算定方法が異なるため、正確な計上が求められます。

特に「現場管理費」は、現場の運営や管理に関わる費用であり、現場管理者の給与や法定福利費、交通費、通信費などが含まれます。これらの費用は、個々の工事作業と直接的な関連性が薄い一方で、工事全体を進める上で不可欠な要素です。

そのため、共通費を正確に把握し、適切な勘定科目に振り分ける作業は、工事原価全体の透明性を高める上で非常に重要となります。

しかし、共通費には工事原価に含めるべきものと、そうでないものが混在しているため、それぞれの費用の性質を見極め、個別に確認しながら計上しなければなりません。

この複雑な仕分け作業が、原価管理の難易度を高め、正確な原価計算を妨げる一因となっているのです。共通費の適切な管理は、工事の収益性を確保し、企業の経営を安定させる上で不可欠な要素と言えます。

 

負担が大きい経理業務

建設業の経理業務では、工事原価の管理が大きな負担となるケースが少なくありません。

多くの企業では、現場で発生する原価情報を紙ベースや個別のExcelファイルで管理しているため、経理部門では各現場から届く多種多様なフォーマットのデータを手作業で集約し、システムへ入力する必要があります。

この手入力作業は、工事の数が増えるほど膨大な量となり、経理担当者の作業時間を大幅に増加させてしまいます。

例えば、日々の材料費や労務費、外注費などの詳細な伝票を一つ一つ確認し、正しい勘定科目に仕分けして入力する作業は、時間と集中力を要します。

その結果、単純な入力ミスや計算間違いといったヒューマンエラーが発生するリスクも高まります。

また、情報がリアルタイムで連携されないため、経営層や現場管理者が必要な時に正確な原価状況を把握しづらく、迅速な経営判断を妨げる要因にもなります。

このような状況では、経理部門が本来の業務である財務分析や経営戦略への貢献に十分な時間を割くことが難しくなり、企業全体の生産性低下につながる可能性も否定できません。

 

施工管理が行う原価管理の具体的な業務フロー

原価管理は、単発の作業ではなく、計画から実行、分析、改善という一連のサイクルを継続的に回していくことが重要です。
現場監督は、品質や安全、工程といった日々の現場管理業務と並行して、このフローに沿って原価管理を実践していく必要があります。

具体的には、工事開始前の「実行予算作成」に始まり、工事期間中の「原価把握」、工事中または完了後の「差異分析」、そしてその結果を次に活かす「フィードバック」という4つのステップで進められます。

 

ステップ1:実行予算を作成する

原価管理の第一歩は、精度の高い実行予算を作成することから始まります。
実行予算とは、工事の請負金額から目標利益を差し引き、実際にその工事を完成させるために使用できる費用の上限額を定めたものです。
見積もり時の積算資料や過去の同種工事の原価データを基に、材料費、労務費、外注費、経費の各項目について、具体的な数量や単価を算出して詳細な予算を組みます。

この実行予算が、工事期間中のあらゆるコスト管理の基準となるため、現実的かつ厳密に作成することが極めて重要です。
この計画の精度が、原価管理全体の成否を左右します。

 

ステップ2:工事の進捗に合わせて原価を把握する

工事が開始されたら、日々の業務で発生する原価を正確かつタイムリーに把握し、記録していきます。
具体的には、仕入れた資材の納品書や請求書、現場作業員が記録する作業日報、協力会社への発注書や請求書といった書類を日々収集し、費目ごとに集計する作業です。

この段階で重要なのは、原価の発生から記録までのタイムラグをできるだけなくすことです。
情報の収集や入力が遅れると、現状把握が不正確になり、予算超過などの問題発見が遅れてしまいます。
迅速なデータ処理体制を整えることが求められます。

 

ステップ3:予算と実績を比較して差異を分析する

定期的に、あるいは工事の工程ごとに区切りの良いタイミングで、ステップ1で作成した実行予算と、ステップ2で把握した実績原価を比較します。
各費用項目が予算内に収まっているか、予算を大幅に超過している項目はないかを確認し、もし予算と実績の間に差異(ズレ)が生じている場合は、その原因を徹底的に分析します。

「予期せぬ資材価格の高騰があった」「設計変更による追加作業が発生した」「悪天候が続き、工期が延長してしまった」など、具体的な要因を突き止めることが重要です。
この分析が、次のアクションにつながる重要な情報となります。

 

原価乖離の原因と打ち手 早見表

兆候 主因 即時対策 再発防止
材料費↑ 単価高騰/発注遅延 代替材・再見積 長期契約/在庫ポリシー
労務費↑ 手戻り/段取り不足 工程再編 事前レビュー標準化
外注費↑ 追加・設計変更 変更契約・出来高精査 変更管理ルール徹底
 

ステップ4:分析結果を次の工事に活用する

原価管理は、一つの工事だけで完結させるのではなく、得られた知見を組織の財産として蓄積し、次に活かすことが不可欠です。
ステップ3で分析した差異の原因と、それに対して取った対策の結果を報告書などにまとめ、社内で共有します。

例えば、予算超過の原因が特定の仕入れ先の価格設定にあったのなら、次回の工事では発注先を見直すといった改善策につながります。
このように、成功事例も失敗事例も含めたデータを全社的なノウハウとして活用することで、見積もり精度の向上や業務プロセスの標準化が進み、組織全体の収益力強化が図れます。

 

原価管理の精度と効率を上げるためのポイント

これまで解説してきた原価管理を形骸化させず、より効果的に実践するためには、その精度と効率をいかに高めるかが鍵となります。
担当者個人のスキルや努力だけに依存するのではなく、組織全体で一貫した取り組みができる仕組みづくりが不可欠です。

ここでは、属人的な管理から脱却し、原価管理のレベルを一段階引き上げるための具体的なポイントとして、社内ルールの統一や原価管理システムの導入について解説します。

 

社内で原価管理のルールを統一する

原価管理の精度を高めるためには、まず社内で統一されたルールを定めることが不可欠です。
例えば、同じ経費でも担当者によって勘定科目の解釈が異なったり、データ入力の粒度がバラバラだったりすると、全社的なデータを正確に比較・分析することができません。

そのため、「どのような費用をどの科目に分類するのか」という仕訳ルールや、「いつまでに、どのフォーマットで報告するのか」といった業務プロセスを明確に標準化する必要があります。
誰が担当しても同じ基準でデータが蓄積される仕組みを構築することで、データの信頼性が向上し、より的確な経営分析が可能になります。

 

原価管理システムを導入して業務を効率化する

エクセルなどの表計算ソフトを用いた手作業での原価管理は、入力ミスや二重入力が発生しやすく、データの集計や共有にも多くの時間と手間を要します。
こうした非効率な業務を改善し、担当者の負担を軽減するためには、原価管理システムの導入が有効です。
システムを活用することで、仕入伝票や日報などのデータを一元管理し、実行予算と実績原価の比較などを自動化できます。

情報がリアルタイムで共有されるため、経営層や管理者はいつでも最新の原価状況を把握でき、迅速な意思決定に役立てることが可能です。

 

自社の規模や目的に合ったシステムを選ぶ

原価管理システムには、大企業向けの多機能なものから、中小企業向けに機能を絞ったシンプルなものまで多種多様な製品が存在します。
システム導入で失敗しないためには、まず自社が原価管理によって何を解決したいのか、その目的を明確にすることが重要です。

「赤字工事をなくしたい」「利益率を5%改善したい」といった具体的な目標を設定した上で、自社の事業規模、従業員のITスキルレベル、導入・運用にかけられる予算などを総合的に考慮し、最適なシステムを選定します。
導入前に無料トライアルなどを活用して、実際の操作性やサポート体制を確認することも有効な手段です。

 

科目ルールと会計連携の標準

  • 科目ルール例:運搬費→材料費/機械リース→経費/一式請負→外注費
  • CSV/連携項目例:案件ID/発注ID/伝票日/勘定科目/税区分/金額/検収日/支払期日
  • 締めスケジュール:現場締め=毎週金曜17時/経理集計=翌営業日/経営レビュー=月初3営業日以内
 

ミニケース

  • ケースA(材料):内装工事で材料単価が想定+7%。週次で検知→代替材+発注先見直しで+2%に抑制。次回見積に単価反映。
  • ケースB(労務):雨天順延で歩掛り悪化。工程を「内作先行→外作後追い」に再編し、人員の遊休を解消。
 

まとめ

本記事では、施工管理における原価管理の基本から目的、具体的な業務フロー、実践のポイントについて解説しました。
原価管理とは、単なるコスト計算にとどまらず、工事ごとに発生する費用を正確に把握・分析し、企業の利益を最大化するための重要な経営管理手法です。

実行予算の作成に始まり、日々の原価把握、予算と実績の比較分析、そして次工事へのフィードバックというサイクルを確実に回すことが、赤字工事を防ぎ、経営の安定化に寄与します。
社内ルールの統一や自社の目的に合ったシステムの導入は、属人的な管理から脱却し、組織全体の収益力を高めるための有効な手段となります。

 

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よくある質問

Q1. 施工管理における原価管理とは何ですか?

施工管理における原価管理とは、工事ごとに発生する費用を正確に把握し、予算内で工事を完了させて適切な利益を確保するための管理活動です。

材料費・労務費・外注費・経費といった原価要素を集計・分析し、実行予算と実績原価の差異を比較することで、無駄なコストを削減し経営の安定化につなげます。

 

Q2. 建設業で原価管理が重要視される理由は何ですか?

建設業では、資材価格の高騰や人件費の上昇、人手不足などにより利益率が低下しやすいため、原価管理が重要視されています。

原価管理を徹底することで、予算超過や赤字工事の発生を防ぎ、利益を確保しやすくなります。

また、過去の工事データを活用して次の見積もり精度を高めるなど、経営判断にも役立ちます。

 

Q3. 施工管理者が原価管理を行うメリットは何ですか?

原価管理を行うことで、工事の利益状況をリアルタイムで把握できるようになり、問題の早期発見と迅速な対策が可能になります。

また、無駄なコストを削減し利益率を改善できるほか、経験や勘に頼るどんぶり勘定から脱却し、データに基づいた経営判断ができるようになります。

 

Q4. 工事原価管理が難しいとされる理由は何ですか?

建設業では、会計処理や費用構造が特殊であり、材料費・労務費・外注費・共通費などを正確に分類・計上する必要があります。

さらに、工事進行基準による売上や原価の分割計上、新収益認識基準への対応などが求められるため、経理担当者には専門知識が必要です。これらの要因が原価管理を難しくしています。

 

Q5. 原価管理の精度と効率を上げるにはどうすれば良いですか?

原価管理の精度を上げるには、まず社内で統一された仕訳ルールや報告フォーマットを定めることが重要です。

さらに、原価管理システムを導入することで、データ入力の自動化や情報の一元管理が可能となり、リアルタイムで原価状況を把握できます。自社の規模や目的に合ったシステムを選定し、運用体制を整えることが成功の鍵です。

 

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