- 2025年06月04日
工事台帳とは?【2025年法改正対応】作成目的から経営に活かす運用術まで徹底解説
案件管理

「工事台帳」と聞いて、単なる経理書類だと考えていませんか?実は、工事台帳は建設業の経営を大きく左右する、非常に重要な「経営ツール」です。正確に作成し、適切に活用することで、工事ごとの利益を最大化し、税務リスクを回避し、さらには企業の成長を加速させることが可能です。
この記事では、工事台帳の基本的な知識から、なぜ作成が義務付けられているのか、Excelとシステムどちらで作成すべきか、そして2025年の建設業法改正が工事台帳にどのような影響を与えるのかまで、徹底的に解説します。貴社の利益最大化とリスク管理をサポートするための実践的な情報が満載です。ぜひ最後までお読みいただき、工事台帳の真の価値を理解し、経営に活かしてください。
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工事台帳の基本を理解する
工事台帳とは?定義と種類
工事台帳とは、個々の工事にかかった費用(原価)を詳細に記録し、管理するための台帳です。一般的には「工事管理台帳」や「工事原価台帳」とも呼ばれ、主に元請業者(発注者から直接工事を請け負った建設業者)が作成します。この台帳を作成することで、工事ごとの収支状況や利益率を正確に把握し、適切な経営判断を下すための基礎資料とすることができます。
工事台帳を作成する目的(意味)
工事台帳を作成しなくても、経営者自身が原価や利益を把握していれば問題ないと思う方もいるかもしれません。しかし、工事台帳を作成することには大きな意味があります。ここでは、工事台帳を作成する5つの目的を紹介します。利益の見える化と経営判断
工事台帳は、工事ごとの材料費、労務費、外注費、経費といった原価を明確にすることで、各工事の正確な収支と利益率を把握できます。「どんぶり勘定」を防ぎ、赤字工事を早期に発見・対策することで、企業の収益性を向上させ、適切な経営判断をサポートします。
経営事項審査(経審)への対応
公共工事の入札に参加するためには、建設業法に基づく「経営事項審査(経審)」を受けることが義務付けられています。工事台帳は、この経審において企業の経営状況や技術力を客観的に証明するための重要な根拠資料となります。正確な工事台帳がなければ、入札に参加できない可能性があります。
税務調査対策
建設業は、他の業種と比較して税務調査の対象になりやすい傾向があります。正確に記帳された工事台帳は、税務調査時に企業の経理処理の透明性と信頼性を示す重要な証拠となります。これにより、追徴課税などのリスクを低減できます。
法令遵守(建設業法)
建設業法では、建設業者が帳簿(工事台帳を含む)を備え付け、適切に管理することが義務付けられています。この義務を怠ると、指導や罰則の対象となる可能性があり、企業の社会的信用を損なうことにも繋がります。
また、工事台帳は「完成工事原価」や「未成工事支出金」といった会計処理上の重要な概念を算出する基盤ともなり、経理担当者にとっても不可欠な書類です。
工事台帳に記載すべき「4つの原価」とその他の重要項目
工事台帳には、工事にかかる全ての費用を以下の「4つの原価」に分類して記載します。材料費
工事に使用する資材の仕入れにかかる費用です。材料そのものの価格だけでなく、購入先からの運賃や荷役費なども含まれます。具体例:木材、コンクリート、鉄骨、電線、配管、塗料、タイル、ガラスなど
労務費
自社で雇用している現場作業員に対して支払われる給与、賃金、諸手当、賞与、法定福利費などを指します。現場監督や設計者など、直接作業に関わらない従業員の給与は一般的に労務費には含まれません。具体例:職人の日当、残業手当、現場手当、通勤手当、社会保険料の会社負担分など
外注費
自社で施工せず、他の専門業者(下請け業者)に工事の一部を依頼した場合に支払う費用です。具体例:電気工事、塗装工事、基礎工事、足場設置、内装工事などを外部に委託した場合の費用
経費
材料費、労務費、外注費のいずれにも当てはまらない、工事を遂行するために必要なその他の費用全般を指します。具体例: 現場事務所の家賃・光熱費、重機や車両のリース料・ガソリン代、事務用品費、通信費、消耗品費、駐車場代、保険料など
これらの原価の他に、工事台帳には以下の重要な項目を記載する必要があります。
- 工事番号
- 工事名
- 工事場所
- 発注者情報(氏名または会社名、連絡先)
- 契約年月日、着工年月日、竣工年月日、引渡年月日
- 請負金額
- 実行予算
- 工事支出金(日付順に詳細を記載)
- 工事受入金(日付順に詳細を記載)
工事台帳の効率的な作り方:エクセル vs 工事台帳システム
工事台帳の作成方法には、大きく分けて「Excel(表計算ソフト)」で管理する方法と、「工事管理システム(工事台帳ソフト)」を導入する方法の2種類があります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、貴社に最適な方法を選びましょう。エクセルで作成するメリット・デメリットと作成のコツ
メリット
導入コストが低い:既にExcelが導入されているPCがあれば、追加費用なしで始められます。
自由なカスタマイズ性:
会社の業務フローや管理したい項目に合わせて、自由にフォーマットを作成・変更できます。
デメリット
入力ミス・数式破損のリスク:手入力が多いため、ヒューマンエラーが発生しやすく、数式が複雑になると破損のリスクも高まります。
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属人化しやすい:
特定の担当者しか扱えない「ブラックボックス化」が進みやすく、担当者不在時に業務が滞る可能性があります。
リアルタイム性・情報共有の限界:
複数人での同時編集が難しく、常に最新の情報を共有することが困難です。現場と事務所間の情報連携にタイムラグが生じやすいです。
データ連携の限界:
会計ソフトや見積ソフトとの連携が手動になり、二重入力の手間が発生します。
作成のコツ
シートの構成を工夫する:「工事情報」「材料費」「労務費」「外注費」「経費」など、項目ごとにシートを分け、集計シートで連携させると管理しやすくなります。
関数を活用する:
SUMIF
で条件に合う費用を集計したり、VLOOKUP
でマスターデータから情報を自動入力したりすることで、入力の手間とミスを減らせます。
入力規則を設定する:
特定のセルに数値しか入力できないようにするなど、入力規則を設定することで、誤入力を防げます。
保護機能を利用する:
数式が入力されているセルを保護することで、誤って数式を削除・変更してしまうリスクを回避できます。
工事管理システム(工事台帳システム)で作成するメリット・デメリット
メリット
入力の自動化・ミスの削減:専門的な入力画面により、入力ミスを大幅に削減。計算も自動で行われるため、集計の手間がなくなります。
リアルタイムでの情報共有:
クラウド型のシステムであれば、現場からスマートフォンなどで入力した情報がリアルタイムで反映され、事務所と現場で常に最新の情報を共有できます。
属人化の防止と業務標準化:
システムが業務フローを標準化するため、特定の担当者に依存することなく、誰でも同じ品質で業務を行えます。
法改正への自動対応:
消費税率の変更や建設業法の改正など、法制度の変更にシステム側が自動で対応するため、常に最新の法令に準拠した運用が可能です。
高度なセキュリティとデータ保護:
データのバックアップやアクセス権限管理など、エクセルでは難しい高度なセキュリティ対策が施されています。
他システムとの連携:
会計ソフト、見積りソフト、給与計算ソフトなどとの連携により、データの一元管理と業務全体の効率化が図れます。
デメリット
導入コスト・月額費用:システムの購入費用や月額の利用料が発生します。
学習コスト:
新しいシステムを導入するため、操作方法を覚えるための学習期間が必要です。
貴社に最適なのはどっち?システム選定のポイント
どちらの方法が最適かは、企業の規模、予算、業務内容、ITリテラシーによって異なります。小規模で予算が限られている場合:
まずはExcelで始めて、業務フローを確立するのも良いでしょう。ただし、将来的な成長を見据え、システムへの移行を視野に入れるべきです。
複数人で工事台帳を管理する場合:
情報共有の効率化や属人化防止のため、工事管理システムの導入を強く推奨します。
公共工事の受注が多い場合:
経営事項審査への対応や法令遵守の観点から、信頼性の高い工事管理システムの導入が有利です。
業務全体の効率化を目指す場合:
会計や見積りなど、他の業務と連携できる総合的な工事管理システムを選ぶことで、データの一元管理と大幅な業務効率化が期待できます。
システム選定の際は、以下のポイントを比較検討しましょう。
必要な機能が揃っているか:
原価管理、請求書発行、日報管理、写真管理など、貴社に必要な機能があるか。
費用対効果:
初期費用、月額費用、サポート費用などを考慮し、コストに見合う効果が得られるか。
使いやすさ:
現場の従業員でも簡単に操作できる直感的なインターフェースか。
サポート体制:
導入後のサポートやトラブル時の対応が充実しているか。
連携性:
既存の会計ソフトや給与計算ソフトなどと連携できるか。
知らないと損をする法的・専門的ポイント
工事台帳の作成・管理において、特に注意すべき法的・専門的なポイントがあります。これらを知らないと、思わぬトラブルや損失に繋がる可能性があるため、しっかり押さえておきましょう。【最重要】2025年建設業法改正と工事台帳の未来
2025年4月1日から施行される建設業法改正は、建設業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を強力に推進するものです。この改正は、工事台帳のあり方にも大きな影響を与えます。ICT活用の推進と技術者専任義務の緩和:
改正により、現場技術者の専任義務が緩和され、ICT(情報通信技術)を活用した遠隔管理が認められるようになります。
これにより、リアルタイムな情報共有が可能なデジタル工事台帳の重要性が飛躍的に増します。現場の状況を即座に把握し、適切な指示を出すためには、紙やExcelでは限界があります。
施工体制台帳の合理化:
発注者がICTを活用して必要な情報を確認できる場合、施工体制台帳の提出が不要になる可能性があります。
工事台帳と施工体制台帳を連携させ、データを一元管理できるシステムを導入している企業が、より効率的な運用を実現できます。
資材高騰への対応:
請負代金の変更協議への誠実な対応が義務化されます。
正確な原価をリアルタイムで把握できる工事台帳は、資材価格の変動や予期せぬコスト増が発生した際に、発注者との交渉において強力な武器となります。
結論、2025年の法改正は、紙やExcelでの管理の限界を明確に示しています。デジタル化された工事台帳は、もはや「効率化ツール」ではなく、法改正に対応し、企業の競争力を維持するための「必須ツール」となりつつあります。
税務調査で狙われるポイントと対策
建設業は、工事の期間が長く、原価計算が複雑であるため、税務調査の対象になりやすい業種です。工事台帳は、税務調査官が重点的にチェックする書類の一つです。以下のポイントに注意して作成・管理しましょう。売上の期ズレ:
工事の完成・引渡し時期が正しく計上されているかを確認されます。工事台帳の竣工・引渡年月日と、請求書や契約書の日付が一致しているか、常に確認しましょう。
棚卸資産の計上漏れ:
期末に残っている材料や未完成工事の原価が、正しく棚卸資産として計上されているかを確認されます。材料費の記録を正確に行い、期末棚卸しを適切に実施することが重要です。
人件費と外注費の区分:
自社従業員への給与(労務費)と、外部の協力会社への支払い(外注費)が明確に区分されているかを確認されます。
雇用契約の有無や業務内容に基づき、明確に区分し、工事台帳に記載しましょう。
社長のプライベート支出:
個人的な支出が会社の経費に混入していないかを確認されます。
工事台帳は、あくまで工事に関連する費用のみを記録し、私的な支出は含めないように徹底しましょう。
意外と知らない消費税の扱い:工事台帳は「税抜き」で!
工事台帳は、「税抜き」で作成することを強く推奨します。その理由は以下の通りです。正確な原価把握:
消費税は、企業が最終的に国に納める税金であり、工事の原価ではありません。税込みで管理すると、本当の原価が見えにくくなり、正確な利益計算が困難になります。
税率変更への対応:
将来、消費税率が変更された場合でも、税抜きで管理していれば、過去のデータに影響を受けずに済みます。
インボイス制度への対応:
2023年10月に開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、仕入税額控除の計算が複雑化しています。税抜きで管理していれば、免税事業者からの仕入れなど、複雑な計算もよりシンプルに対応できます。
工事台帳の保存期間と管理方法
建設業法および法人税法に基づき、工事台帳を含む帳簿書類には保存義務があります。保存期間:
原則として、7年間の保存が義務付けられています。青色申告法人の場合は、欠損金の繰越控除を適用する年度については10年間となります。
管理方法:
紙の場合は、整理して保管し、必要な時にすぐに取り出せるようにファイリングしておきましょう。
電子データの場合は、電子帳簿保存法の要件を満たす形で保存する必要があります。改ざん防止措置や検索機能の確保などが求められます。工事管理システムを導入していれば、これらの要件を自動的に満たせる場合が多いです。
作って終わりじゃない!工事台帳を経営に活かす活用術
工事台帳は、作成して保管するだけではもったいない「宝の山」です。データを分析し、経営に活かすことで、企業の収益力を飛躍的に向上させることができます。工事台帳から読み取るべき経営指標
工事台帳のデータから、以下の重要な経営指標を読み取ることができます。粗利益:
請負金額から工事原価を差し引いた金額。各工事の儲けの絶対額を示します。
粗利率:
粗利益を請負金額で割った割合。各工事の収益性をパーセンテージで示し、工事の種類や規模に応じた収益性の比較に役立ちます。
原価構成比率:
材料費、労務費、外注費、経費がそれぞれ請負金額の何%を占めているか。どの費用が過大になっているかを特定できます。
これらの指標を定期的に確認することで、工事ごとの課題や強みを明確にできます。
利益改善のための具体的な分析方法
工事台帳のデータを活用して、利益改善に繋げるための具体的な分析方法を解説します。実行予算と実績の比較
工事開始前に立てた実行予算と、工事台帳に記録された実際にかかった原価を比較します。差異が生じた場合は、その原因(材料費の高騰、工期の延長による労務費増、追加工事の外注など)を特定し、次回の見積りや予算策定に活かします。不採算工事の早期発見と対策
粗利率が低い工事や、原価が予算を大幅に超過している工事を早期に発見します。原因を分析し、必要であれば工事途中で対策を講じたり、今後の受注判断の材料にしたりします。原価構成比率の分析:
過去の工事データから、各原価項目(材料費、労務費、外注費、経費)が請負金額に対してどの程度の割合を占めているかを分析します。業界平均や自社の目標値と比較し、特定の原価が過大になっていないかを確認。コスト削減のターゲットを絞り込みます。工事種別・顧客別・担当者別の分析
工事台帳のデータを工事種別(木造、RC造など)、顧客別、担当者別などで集計・分析することで、どの分野や担当者が高い利益を出しているか、あるいは改善が必要かが見えてきます。これらの分析を継続的に行うことで、PDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)を回し、企業の収益構造を強化していくことができます。
まとめと次のステップ
工事台帳は、単に「作成しなければならない書類」ではありません。正確な工事台帳は、貴社の経営状況を「見える化」し、適切な意思決定を促し、さらには2025年建設業法改正のような変化にも対応できる、強力な「経営戦略ツール」です。この記事で解説したポイントを参考に、ぜひ貴社の工事台帳の運用を見直してみてください。エクセルでの管理に限界を感じている方、より効率的かつ正確な原価管理を実現したい方は、工事管理システムの導入を検討する時期かもしれません。
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工事台帳についてよくある質問
Q:工事台帳とは何ですか?
A:工事台帳とは、工事現場ごとの取引内容を詳しく記載した台帳です。工事原価管理台帳や工事原価台帳などと呼ばれることもあります。各現場の原価を集計し、材料費、労務費、外注費、経費といった項目に分けて記録することで、現場全体におけるお金の流れを管理します。原価の把握は利益を生み出すために不可欠であり、工事台帳の作成により安定経営につながります。また、現場における労災保険の申告や税務調査の際にも工事台帳が必要になるため、作成しておくことが望ましいでしょう。
Q:工事台帳を作成するのが面倒です。必ず作成するものですか?
A:工事台帳を作成して適切に管理しておくことで、工事ごとの収支がわかるようになり、工事規模ごとの原価予測がしやすくなります。工事台帳がなく、いわゆる「どんぶり勘定」の経営では、正確な収支を算出できない上、税務調査の対応にも困る可能性もあります。自社の発展のためにも、工事台帳の作成は必須と考えましょう。Q:工事台帳に記載する項目を教えてください。
A:工事台帳には材料費・労務費・外注費・経費を記載します。主なポイントは以下の通りです。- 材料費:工事に必要な材料の仕入れ費用のことで、取引にかかった費用も含まれる
- 労務費:現場作業員の給料や諸手当(直接工事に関わった従業員が労務費の対象で、工事現場に常駐している事務員の給与は含まれない)
- 外注費:協力業者など自社が雇用しない作業員に支払う費用、現場の規模が大きいほど外注費が増える
- 経費:工事現場にいる事務員の給与、現場の光熱費、保険料など(材料費・労務費・外注費以外の費用)
Q:工事台帳作成ソフトの選定で重要なポイントは何ですか?
A:何よりも操作性の高さ、収支のわかりやすさが重要です。せっかくソフトを導入しても、操作が難しくて十分に使いこなせなければ意味がありません。「要 〜KANAME〜」なら収支をリアルタイムに把握し、素早い経営判断ができます。スマホから日報を入力して現場の費用や利益を管理できる手軽さで、労力の削減と利益率の向上を実現できるのも特長です。パソコンが苦手な方も安心して利用できるように、万全のサポート体制をとっていますのでお気軽にご相談ください。
Q:工事台帳の作成義務はありますか?
A:工事台帳は、建設業法で定められている経営事項審査に必要な書類です。経営事項審査とは、公共工事を請け負うための競争入札において、建設業者が受けなければならない資格審査で、工事台帳の提出が求められます。Q:工事台帳の保存義務はありますか?
A:建設業法において、建設業者は工事台帳を5年間保存するよう義務付けられています。また、契約書やその他の必要書類も帳簿に添付するか、データ保存しておく必要があります。営業所ごとに、締結した建設工事請負契約に関する事項を記載した帳簿を保存しなければならず、本店での一括は認められていないので注意が必要です。万が一帳簿の保存や備え付けを怠ると、建設業法違反として懲役または罰金が課せられる可能性があるため、保管を徹底しましょう。
Q:工事番号のつけ方を教えて下さい。
A:工事番号は、現場ごとの工事台帳を作成するために必要です。また、未完成工事支出金や受入金、完成工事高や原価、利益といった計算をする上でも重要になります。番号の数字や桁数に細かな決まりはありませんが、管理しやすいようシンプルにすることが大切です。例えば、工事を受注した順に「A01」「A02」と付けていくとわかりやすいでしょう。なお、工期が短く、受注金額が小さな工事は、雑小工事として別の番号を振り分ける方法もあります。
Q:工事台帳の保存期間はいつまでですか?
A:建設業法の「帳簿の記載事項等」において、帳簿や添付書類は原則として5年間保存することが定められています。対象書類は、以下の通りです。- 営業所の代表者名
- 建設工事の請負契約に関する事項
- 下請契約に関する事項
- 添付書類
上記とは別に、元請業者について10年間の保存が義務付けられている書類もあります。下記の対象書類も保存しておきましょう。
- 発注者から直接請け負った新築住宅建設に関する事項
- 発注者から受領した完成図
- 発注者との打合せ記録
- 施工体系図
Q:工事台帳を作成するメリットは?
A:工事台帳を作成することで考えられるメリットは、以下の通りです。- 利益率や収支内容を把握できお金の流れが明確になる
- 完成工事原価や未成工事支出金を算出できる
- 公共工事を請け負う際に必要な経営事項審査にスムーズに対応できる
- 税務調査への対応準備ができる
普段の業務では、経営者や担当者が工事の原価や利益を把握するだけで問題ない場合も多いでしょう。しかし、公共工事の参加や税務調査など、工事台帳が必要な場面を想定すると、日頃から作成しておくことに意義があります。
Q:工事台帳の経費とは?
A:工事台帳の経費は、「材料費・労務費・外注費」の3つに該当しない原価を指します。例えば、工事で使う機材や現場の光熱費、事務員の給与、事務用品の購入費、退職金などが該当します。Q:工事台帳の材料費とは?
A:工事台帳の材料費には、工事で使う材料の仕入れ費用が該当します。材料の原価に加えて、現場までの配送費や運賃、取引先で発生した他の費用などをすべて合計した金額を記載します。Q:工事台帳はいくらから必要?
A:下請金額によらず、工事台帳を作成するよう義務付けられています。以前は、下請金額が総額3,000万円(建築一式工事の場合は4,500万円)以上の場合のみ、工事台帳の作成と発注者への提出が必要でした。しかし、「建設業法などの一部分を改正する法律」により下請金額の条件が撤廃されたため、下請金額にかかわらず工事台帳の作成と提出が義務化されています。