- 2026年05月14日
建設業の経費率は何%が適正?目安・利益との関係・改善ポイントを解説
原価管理・利益管理

建設業では、材料費や外注費だけでなく、会社運営や現場管理に関わるさまざまな経費が発生します。そのため、「売上はあるのに利益が残らない」「見積りは取れているのに経営が苦しい」と感じる場合、経費率のバランスに原因があるケースも少なくありません。
ただし、建設業の経費率は一律ではなく、会社規模や工事内容、外注比率などによって大きく変わります。この記事では、建設業における経費率の考え方や、数値の裏側にある「自社が利益の残る構造になっているか」を判断するポイントについて解説します。
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建設業における経費率とは
建設業における経費率とは、売上に対してどれだけ経費(一般管理費や現場管理費など)がかかっているかを示す割合のことです。式で表すと、「経費率 = 経費 ÷ 売上高 × 100(%)」となります。
建設業では、直接的な工事費以外に「工事を受注して動かすためのコスト」が必ず発生します。売上規模が大きくなっても経費率が高ければ、手元に残る利益は少ないままです。逆に、売上が小さくても経費率が適切にコントロールされていれば、安定した利益を確保できます。経費率は、会社の収益構造の健全さを測るための「定規」のような指標です。
「諸経費率」との違いに注目
実務上、見積書に記載する「諸経費」の割合を指して経費率と呼ぶことも多いでしょう。これには本社運営コスト(一般管理費)や、現場監督の人件費(現場管理費)などが含まれます。重要なのは、項目名が「諸経費」か「経費」かという分類の正確さではなく、「その案件を完結させるために、工事原価以外に何%のコストを費やしているか」を自社で把握できているかどうかです。
諸経費・一般管理費・現場経費の違いや内訳について詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。
工事見積における諸経費や一般管理費・現場経費とは?内訳を解説
建設業の経費率の目安(相場)
建設業の経費率は、一般的に5〜15%前後が目安とされることが多いです。しかし、この数字はあくまで「平均的な統計上の数値」に過ぎません。実際には、以下のような要因によって適正値は大きく変動します。
工事内容:
小規模なリフォームや電気工事は管理の手間がかかるため高くなりやすく、大規模な土木工事などは相対的に低くなる傾向があります。
施工体制:
自社職人が多い場合は人件費が「原価」に寄りますが、完全外注の場合は管理コストとしての「経費」の比重が変わります。
元請・下請の立場:
書類作成や近隣対応、安全管理の責任が重い元請ほど、経費率は高まるのが一般的です。
そのため、5〜15%という数字を「正解」と捉えるのではなく、自社の過去の実績や事業構造に照らし合わせた「自社にとっての基準値」を持つことが大切です。
自社の経費率は適正か?判断のポイント
「経費率が低いほど優秀な経営」とは限りません。自社の数字が適正かどうかは、以下の視点で判断する必要があります。1. 経費率は「低ければ良い」わけではない
経費を削りすぎると、長期的には経営リスクを招きます。安全・品質管理の低下:
安全設備や保険、管理人員へのコストを削れば、現場事故のリスクが直結します。
管理不足による「利益の垂れ流し」:
現場監督が足りず原価管理が疎かになると、結果として材料のロスや外注費の膨張に気づけず、最終利益を損なうことになります。
経費率は、低く抑えること自体が目的ではなく、「必要な品質・安全を維持しつつ、利益が残る水準でコントロールされているか」を見るための指標です。
2. 工事ごとの「粗利」と紐づいているか
経費率を判断する大前提は、案件ごとの「粗利(完成工事総利益)」の把握です。全体(決算書上)の経費率が10%であっても、粗利が8%しかない工事を続けていれば、当然赤字になります。
工事台帳を活用し、「この粗利に対して、この経費率は許容できるか」という個別の採算管理ができているかが重要です。
小規模案件が多い場合
1件あたりの売上が小さいと、移動・打ち合わせ・書類対応などの管理コスト比率が高くなります。
外注依存が高い場合
外注比率が高い会社では、現場管理や調整業務の負担が増え、間接コストが膨らみやすくなります。
工事台帳は、単なる工事一覧ではなく、案件ごとの売上・原価・利益を紐づけて管理するための重要な管理資料です。
工事台帳の役割や、利益管理との関係について詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。
工事台帳とは?作成目的から経営に活かす運用術まで徹底解説
3. 「見えない経費漏れ」が含まれていないか
経費率が高く見える、あるいは正しく把握できない原因として多いのが、費用の紐付け漏れです。現場ごとのコスト管理ができていない
車両代・ガソリン代・消耗品費などが会社全体で一括処理されていると、どの工事で利益が出ているか判断しづらくなります。
エクセル分散管理による漏れ
日報・外注費・経費精算がバラバラに管理されていると、原価の集計ズレや計上漏れが起きやすくなります。
業界全体で経費率が上がりやすくなっている背景
自社の努力とは別に、外部環境によって経費率が押し上げられている側面もあります。これらを把握しておくことは、適正な見積り(諸経費の設定)を行ううえで不可欠です。材料費・人件費の高騰:
原価が上がれば、同じ諸経費率(%)で計算していても、絶対額としての経費が不足する事態が起こります。
安全管理・コンプライアンスの強化:
近年、行政や元請から求められる安全基準や書類作成のレベルは年々高まっており、これに対応する間接人員や事務コスト(現場管理費)の増加を避けることは困難です。
人手不足による採用・教育コスト:
求人広告費や、若手育成のための教育研修費など、会社を維持するための「一般管理費」が増大する傾向にあります。
経費率を改善し、利益が残る構造をつくる方法
建設業における原価管理の考え方や、利益を見える化する方法については、下記記事でも詳しく解説しています。建設業の工事原価管理のやりやすい方法|難しい理由と実践メリットを紹介
工事台帳による「どんぶり管理」からの脱却
「忙しいのに利益が残らない」状態を抜け出す第一歩は、感覚に頼った経営(どんぶり管理)をやめることです。見積り段階の「予定経費」と、実行段階の「実績経費」を工事台帳で突き合わせ、差異を特定しましょう。
「なぜこの現場は経費がかさんだのか」を分析することで、次回の見積精度が上がり、無駄な支出を抑えることができます。
「忙しいのに利益が残らない」という状態は、経費率だけではなく、工事ごとの原価や利益が見えていないことが原因になっているケースも少なくありません。
工事台帳ベースで、「見積り」「実行予算」「原価」「経費」「粗利」を紐づけて管理できる状態を作ることで、「どの工事で利益が残っているか」「どこで経費が膨らんでいるか」を把握しやすくなります。
建設業向け原価管理ソフト「要 〜KANAME〜」では、工事台帳をベースに、案件ごとの売上・原価・利益を一元管理できます。
情報管理の一元化で「間接コスト」を削る
見積書、日報、請求書がそれぞれ別々のエクセルや紙で管理されていると、転記や確認作業だけで膨大な時間が奪われます。これが「目に見えない経費(事務人件費)」を押し上げる大きな要因です。情報を一元管理できる仕組みを整え、現場と事務の連携をスムーズにすることで、現場を回すための「経費」を圧縮できます。経費の計上ルールを社内で統一する
「どの費用を現場経費とし、どれを一般管理費とするか」の基準が曖昧だと、正しい分析ができません。社内で計上ルールを明確にし、誰が処理しても同じ数字が出る状態を作ることで、経営判断に使える精度の高い経費率が見えてきます。まとめ
建設業における経費率は、会社規模・工事内容・外注比率などによって大きく異なるため、「何%が正解」という一律の答えはありません。重要なのは、「自社の経費率が何%か」ではなく、「その経費水準で利益が残る構造になっているか」という視点です。
経費率を正しく把握するには、工事ごとの原価・利益管理が基本になります。全体の数字だけを追っていると、「忙しいのに利益が残らない」状態が続いてしまいます。
まずは自社の工事台帳や原価管理の精度を見直し、どの工事にどれだけのコストがかかっているかを把握することから始めてみましょう。
経費率の「見える化」が、利益が残る経営構造をつくるための出発点です。
建設業の経費率についてよくある質問
建設業の経費率は何%くらいが一般的ですか?
建設業の経費率は、一般的には5〜15%前後が目安とされることが多いです。ただし、工事内容や会社規模、外注比率、元請・下請の立場によって大きく変わります。そのため、単純に業界平均と比較するのではなく、「その経費率で利益が残る構造になっているか」を確認することが重要です。
経費率が高い会社は経営状態が悪いのでしょうか?
必ずしもそうではありません。安全管理や品質管理を重視している会社、現場管理体制をしっかり整えている会社では、経費率が高くなるケースがあります。
重要なのは、必要なコストをかけたうえで利益が残っているかどうかです。単純に経費率の低さだけで判断するのは危険です。
建設業で経費率が上がる原因には何がありますか?
材料費・人件費の高騰に加え、現場管理や安全書類対応などの間接業務の増加が大きな要因です。また、エクセルや紙で情報管理が分散していると、転記・確認作業が増え、見えにくい管理コストが積み上がるケースもあります。
経費率を改善するには何から始めれば良いですか?
まずは、工事ごとの原価と利益を把握することが重要です。全体の売上だけではなく、「どの工事にどれだけ経費がかかっているか」を工事台帳などで管理することで、利益が出やすい工事・出にくい工事の傾向が見えてきます。
諸経費率と経費率は同じ意味ですか?
実務では似た意味で使われるケースもありますが、厳密には少し異なります。諸経費率は、見積書で直接工事費に対して加算する一般管理費・現場経費などの割合を指すことが多く、経費率は会社全体の売上に対する経費割合を指すケースが一般的です。
ただし、建設業では両者を近い意味で扱うことも少なくありません。





