- 2026年09月17日
建設業の原価管理はエクセルとシステムどちらがいい?違いと切り替えの判断基準を解説
原価管理・利益管理

建設業の原価管理は、エクセルでも始められます。工事ごとの売上や原価をエクセルで管理する方法であれば、専用システムを導入せずに原価管理を始めることができます。
一方で、工事件数や入力担当者が増えてくると、エクセルでは管理しづらくなる場面も出てきます。ファイルが複数に分かれて最新の数字が分かりにくくなったり、特定の担当者しか仕組みを把握していなかったり、といった悩みも出てきます。
ここで大切なのは、「エクセルと原価管理システム、どちらが優れているか」を決めることではありません。重要なのは、自社の状況に合った方法を選ぶことです。最初からシステムが必要な会社もあれば、しばらくはエクセルで十分な会社もあります。
この記事では、エクセルと原価管理システムそれぞれの特徴や違い、どんな会社にどちらが向いているか、そしてシステム化への切り替えを考えるタイミングを整理していきます。自社の原価管理方法を見直すきっかけとして、ぜひ参考にしてください。
監修:室田茂樹
株式会社プラスバイプラス 代表取締役
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建設業の原価管理はエクセルでもシステムでもできる
建設業の原価管理にはさまざまな方法がありますが、代表的なのが「エクセルによる管理」と「原価管理システムによる管理」です。なお、建設業における原価管理の基本的な考え方や、原価管理が必要な理由については、別の記事で詳しく解説しています。
エクセルによる原価管理は、すでにエクセルを利用している会社であれば、専用の原価管理システムを新たに導入せずに始めやすい点が特徴です。工事ごとの売上や原価、粗利益といった数字を、自社の管理項目に合わせて自由に表計算で管理できます。
一方、原価管理システムによる管理は、工事台帳や日報、見積り・請求といった情報を一つのシステム上で連携させながら原価や利益を把握する方法です。どういったデータをどこまで集計・管理できるかは製品によって異なりますが、データの集計や情報共有をシステム側でサポートしてくれる点が、エクセルとの大きな違いです。
どちらが自社に適しているかは、会社の規模、同時に進行する工事件数、管理したい項目の数、原価管理に関わる人数などによって変わります。工事件数が少なく、管理担当者も限られているうちはエクセルで十分対応できることが多く、逆に工事件数や関係者が増えてくるとシステムの方が管理しやすくなる傾向があります。
また、「最初からシステムを導入する」か「まずはエクセルで始めて、必要に応じてシステム化する」かは、どちらも現実的な選択肢です。次章からは、それぞれの方法についてもう少し詳しく見ていきます。
エクセルで原価管理する方法
まずは、エクセルでの原価管理について整理します。エクセルでどこまで管理できるのか、どんな会社に向いているのかを押さえておくと、自社の現状を判断しやすくなります。エクセルで管理できる主な内容
エクセルの原価管理表では、一般的に以下のような項目を管理します。- 工事ごとの売上
- 材料費
- 労務費
- 外注費
- 経費
- 予算と実績
- 粗利(粗利益)
- 粗利率
- 月次の集計
なお、工事ごとの原価や利益率をどのように読み解き、経営に活かすかについては、本記事では詳しく扱いません。この点は「工事原価・利益率の管理」に関する記事で解説していますので、そちらもあわせてご確認ください。
エクセルでの原価管理が向いているケース
エクセルでの原価管理は、特に以下のような状況にある会社に向いています。- 原価管理をこれから始める段階
- 同時に進行する工事件数がまだ多くない
- 入力担当者が限定されている
- 管理したい項目がそれほど複雑ではない
- 導入コストを抑えたい
エクセルで原価管理表を作る詳しい方法
エクセルで実際に原価管理表を作りたい方は、「エクセルで原価管理を行う方法」で、表の基本構成や関数の設定、月次集計まで詳しく解説しています。建設業でエクセル原価管理を続けるために必要な運用
エクセルでの原価管理は、作っただけでは長続きしません。継続的に運用していくためには、いくつかのルール作りが必要です。工事ごとに同じルールで管理する
工事ごとに項目の立て方や入力方法がバラバラだと、あとから集計・比較する際に手間がかかります。勘定科目や案件の管理単位をあらかじめ統一しておくことで、月次集計や工事間の比較がスムーズになります。入力担当者と入力するタイミングを決める
「誰が」「いつ」入力するのかを決めておかないと、入力漏れや二重入力が発生しやすくなります。日報や請求書が発生したタイミングで都度入力するのか、週次でまとめて入力するのかなど、自社の業務フローに合わせて運用ルールを決めておくことが大切です。ファイルや入力項目を標準化する
ファイル名の付け方や保存場所、入力項目の並び順などをテンプレート化しておくと、担当者が変わっても迷わず運用を引き継げます。逆に、ファイルごとに構成がバラバラだと、あとから内容を把握するのに時間がかかってしまいます。定期的に数字を確認する
原価データを入力するだけで満足せず、月次・週次など定期的なタイミングで数字を確認する仕組みを作りましょう。予算と実績の差異を確認する習慣があると、原価の増加や赤字の兆候に早めに気づきやすくなります。入力担当者や入力タイミング、ファイル管理など、建設業でエクセル原価管理を仕組み化して運用する方法については、建設業でエクセル原価管理を仕組み化する方法で解説しています。
エクセルによる原価管理で起こりやすい課題
エクセルでの原価管理は手軽に始められる一方、運用を続けるなかで次のような課題が出てくることがあります。ただし、これは「エクセルがダメ」という話ではありません。会社の成長や工事件数の増加、管理に関わる人数の増加などによって、これまで問題なく使えていたエクセルが、自社の運用規模に合わなくなってくることがある、という捉え方が実態に近いでしょう。
入力・転記作業が増える
工事件数や管理項目が増えるほど、入力作業や他のファイルへの転記作業も比例して増えていきます。手作業での入力・転記が中心になるため、件数が増えるほど作業時間の負担が大きくなりやすい傾向があります。ファイルが複数に分かれる
工事ごと、月ごとにファイルを分けて管理していると、必要な情報がどのファイルにあるのか分かりにくくなることがあります。ファイルの数が増えるほど、目的の情報を探す手間も増えていきます。最新データが分かりにくくなる
複数の担当者がそれぞれのタイミングでファイルを更新していると、「どれが最新版か分からない」という状態が起こりやすくなります。特に、共有フォルダでファイルを運用している場合、更新のタイミングによってはズレが生じることもあります。特定の担当者に属人化しやすい
独自の関数やシート構成が複雑になっていくと、作成した本人以外には内容を把握しづらくなります。その結果、担当者が不在のときに確認や修正ができなかったり、異動・退職の際に引き継ぎに時間がかかったりすることがあります。リアルタイムで原価や利益を把握しにくい
エクセルは手動でのデータ入力が中心となるため、工事が進行している最中の原価や利益をすぐに確認することが難しい場合があります。多くの場合、月次や週次などある程度のタイミングでまとめて集計する形になるため、状況の把握にタイムラグが生じやすくなります。エクセルから原価管理システムへの切り替えを考えるタイミング
ここでは、「どの原価管理ソフトを選ぶか」ではなく、そもそも自社が「システム化を検討する段階に来ているかどうか」を判断するための材料を整理します。以下のような状況に心当たりがある場合は、エクセルでの管理から原価管理システムへの切り替えを検討し始めるタイミングかもしれません。
工事件数が増え、集計に時間がかかる
同時並行で進む工事の数が増えると、それだけ入力・集計する項目も増えていきます。毎月の集計作業にかかる時間が徐々に長くなってきたと感じる場合は、一つのサインです。原価管理を複数人で行うようになった
担当者が一人だけの間は問題が起きにくくても、複数人で同じファイルを扱うようになると、入力ルールのズレや更新の競合が発生しやすくなります。管理に関わる人数が増えてきた場合は、システム化を検討する材料になります。入力漏れ・二重入力・転記ミスが増えた
手作業での入力・転記が増えるほど、ヒューマンエラーが発生する可能性も高くなります。入力ミスや二重計上が月に何度も起きているようであれば、仕組みそのものを見直すタイミングといえるでしょう。ファイル管理が複雑になった
工事件数の増加にともなってファイルの数が増え、目的の情報を探すのに時間がかかるようになってきた場合も、管理方法を見直すサインの一つです。最新の原価や利益をすぐ確認したい
「工事が完了してから、あるいは月末になってからでないと利益が分からない」という状態が続いていて、もっと早いタイミングで状況を把握したいと感じている場合は、システム化によって解決できる可能性があります。現場と事務所で同じ情報を共有したい
現場の担当者と事務所の担当者が、それぞれ異なる情報をもとに動いていると、確認のための連絡や手戻りが発生しやすくなります。同じ工事情報を社内で共有したいというニーズが強くなってきた場合も、切り替えを検討する材料になります。これらの項目に複数当てはまる場合は、一度、自社の原価管理の運用方法を見直すタイミングかもしれません。
エクセルと原価管理システムの違い
ここまでの内容を踏まえて、エクセルと原価管理システムの違いを比較表で整理します。どちらか一方が優れているというより、それぞれ向いている状況が異なる点を意識してご覧ください。※原価管理システムの機能や対応範囲は製品によって異なります。以下は一般的な傾向です。
| 比較項目 | エクセル | 原価管理システム |
|---|---|---|
| 導入コスト | 既存のOfficeがあれば追加費用がかかりにくい | 初期費用・月額費用が発生することが一般的 |
| 始めやすさ | すぐに始めやすい | 導入・設定にある程度の準備期間が必要 |
| カスタマイズ性 | 自社の運用に合わせて自由に変更できる | システムの仕様の範囲内でのカスタマイズになる |
| 複数人での利用 | 入力ルールの統一や更新管理が必要 | 複数人での同時利用を前提に設計されている |
| 集計方法 | 手動入力・関数による集計が中心 | 入力したデータが自動で集計されやすい |
| リアルタイム性 | 集計や確認にタイムラグが生じやすい | 工事の進行中でも状況を確認しやすい |
| 属人化のしやすさ | 独自の構成になりやすく属人化しやすい | 操作方法や項目が統一されるため引き継ぎしやすい |
| データ共有 | ファイル単位での共有が中心 | 同じ情報をシステム上で共有しやすい |
| 管理できる工事件数 | 件数が少ないうちは管理しやすい | 工事件数が多くても管理しやすい設計になっている |
原価管理システムにすると何が変わる?
エクセルからシステムに切り替えることで、具体的にどのような変化が期待できるのかを整理します。ここでは、原価管理システム全般に見られる一般的なメリットを中心に紹介します。工事情報を一元管理しやすくなる
見積り・発注・日報・請求といった工事に関わる情報を、工事ごとに一つの場所へまとめて管理しやすくなります。エクセルのように情報が複数のファイルに分散しにくくなるため、必要な情報を探す手間を減らしやすくなります。集計作業を減らしやすくなる
対応するシステムでは、日々入力したデータをもとに原価や利益を自動集計できます。月末にまとめて手作業で集計する必要が減るため、集計にかかる時間の負担を軽くしやすくなります。工事ごとの原価や利益を把握しやすくなる
工事が進行している段階でも、入力されたデータをもとに原価や利益の状況を確認しやすくなります。工事完了後や月末になって初めて利益の少なさに気づく、といった事態を減らしやすくなる点は、システム化のメリットの一つです。複数人で同じ情報を共有しやすくなる
現場の担当者と事務所の担当者が同じ工事情報を確認できるようになるため、「担当者に聞かないと分からない」という状態を減らしやすくなります。情報の確認や引き継ぎもスムーズになりやすいでしょう。なお、原価管理システムの一つとして、工事台帳をベースに見積り・発注・日報・請求・原価管理を一元管理できる建設業向け原価管理システム「要 〜KANAME〜」があります。日々入力した情報が工事台帳に集約されるため、工事の進行中でも原価や利益の状況を確認しやすく、エクセルで起こりやすい属人化やファイルの分散といった課題の解消につながる設計になっています。
詳しいソフトの選び方については、後述する原価管理ソフトの記事もあわせてご覧ください
エクセルとシステム、どちらを選ぶべき?
ここまでの内容を踏まえて、どのような会社にエクセルが向いていて、どのような会社にシステム化が向いているのかを整理します。「システムを導入すべき」と一方的に誘導するものではなく、あくまで自社の状況に照らして判断するための材料としてご覧ください。エクセルが向いている会社
- 原価管理をこれから始める段階の会社
- 同時進行する工事件数が少ない会社
- 原価管理を担当する人数が少ない会社
- 管理したい項目がシンプルな会社
- 低コストでまず始めたい会社
システム化を検討した方がよい会社
- 同時進行する工事件数が多い会社
- 複数人で原価管理を行っている会社
- 入力や集計に多くの時間がかかっている会社
- 転記作業が多く発生している会社
- 最新の収支をすぐに確認したい会社
- 原価管理が特定の担当者に属人化している会社
エクセルから段階的に移行する方法もある
「システム化する場合は、最初からすべてをシステムに置き換えなければならない」というわけではありません。たとえば、まずは工事台帳だけをシステム化し、他の管理は引き続きエクセルで行うなど、製品や自社の業務フローによっては、対象業務を絞って段階的に移行する方法もあります。ただし、エクセルとシステムの併用によって二重入力や情報の分散が増えないよう、どの業務を移行するのかをあらかじめ整理しておくことが重要です。
自社の業務にどこまで影響が出るかを見ながら、無理のない範囲で移行を進めていくことも、選択肢の一つとして検討してみてください。
原価管理システムを導入すると決めたら、次はソフトを選ぶ
エクセルでの管理に限界を感じ、「システム化した方がよさそうだ」と判断できた場合、次のステップは自社に合った原価管理ソフトを選ぶことです。原価管理ソフトにはさまざまな種類があり、機能や特徴、価格帯も製品によって異なります。システム化すると決めた後は、自社に合った製品を選ぶ段階です。建設業向け原価管理ソフトの種類や比較ポイント、選び方については、「建設業向け原価管理ソフト比較5選」で詳しく解説しています。
まとめ
建設業の原価管理は、必ずしも最初からシステムを導入しなければならないわけではありません。工事件数が少なく、担当者も限られている段階では、エクセルでも十分に管理できる会社は多くあります。一方で、工事件数や入力に関わる人数が増えてくると、エクセルでの管理負担は徐々に大きくなっていきます。入力・転記作業の増加、ファイルの分散、属人化、リアルタイムでの状況把握のしにくさなどは、会社の成長にともなって表面化しやすい課題です。
大切なのは、「エクセルとシステムのどちらが優れているか」ではなく、自社の現在の状況に、今の原価管理方法が合っているかどうかを確認することです。
- 今のエクセル管理に大きな支障がなければ、引き続きエクセルで運用を続ける
- 集計や入力の負担、属人化などの課題が目立ち始めたら、原価管理システムへの移行を検討する
- システム化すると決めた場合は、自社に合った原価管理ソフトを比較・検討する







