- 2025年11月21日
積算とは?意味や費用の考え方、業務全体の流れをわかりやすく解説【建設業ガイド】
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積算とは、建築や土木工事などの建設業務において、必要な費用を正確に算出するプロセスです。
設計図書や仕様書に基づき、材料費、労務費、機械経費、諸経費といったあらゆる費用項目を詳細に計算し、工事全体の原価を積み上げていきます。
この業務は、会社の利益確保や適切な見積もり作成の土台となるため、建設分野では不可欠な工程と位置付けられています。
本記事では、積算の具体的な内容から、見積もりや原価計算との違い、実際の仕事内容や業務の流れ、必要なスキルや資格、そして積算を正しく行うためのコツや最新のトレンドまで、幅広く解説していきます。
コンテンツ
積算とは?
積算とは、建築や工事を行う際に必要となる費用を事前に積み上げて算出する方法です。具体的には、設計図書を基に、建物に必要な材料の数量や、工事を行う作業員の人工(人件費)、そしてそれらにかかる経費、設備、機械の価格など、あらゆる要素を詳細に計上し、全体の費用を算出する業務を指します。
この方法で算出された内容が、後の見積書作成の基となります。
積算は、工事の費用を正確に把握するために不可欠な業務であり、会社が利益を確保して工事を受注するために重要な役割を果たすものです。
下記記事で、初心者向けに積算の仕事内容ややり方に関して解説しています。
ぜひご覧ください。
初心者向け積算解説ガイド:
【初心者向け】積算とは?仕事内容や見積りとの違い、失敗しないためのポイントを解説
見積りや原価計算との違いは?
積算、見積り、原価計算は、建設工事における費用算出に関連する言葉ですが、それぞれ異なる意味合いを持っています。見積りとの違い
見積もりは、積算で算出された原価に会社の利益や一般管理費などを加えたもので、顧客に提示する金額のことです。積算は、あくまでも社内で工事にかかる費用を正確に把握するためのものであり、見積もりは、その積算結果を基に、会社としての適正な利益を確保しつつ、顧客に提示する工事費用の総額を決定する役割を果たします。
つまり、積算が見積もりの基礎となる費用算出のプロセスであり、見積もりはその最終的なアウトプットであると言えます。
原価計算との違い
原価計算は、実際にかかった費用を計算するものです。これに対し積算は、工事を始める前に、設計図書などをもとにこれからかかるであろう費用を算出するもので、費用を算出するタイミングが異なります。
積算は、これから行う工事に対して費用を算出するのに対し、原価計算は、すでに実施された工事の費用を計算するものです。
積算で算出した費用と、原価計算で算出した費用を比較することで、見積もりの精度を検証し、次回の積算に活かすことができます。
積算を構成する費用項目
積算を行う際、様々な費用項目を計上し、工事の総額を算出する必要があります。主要な費用項目としては、工事に直接関わる費用である直接工事費と、工事全体を円滑に進めるための間接的な費用である間接工事費に分けられます。
| 費用区分 | 内訳項目 | 概要 |
|---|---|---|
| 直接工事費 | 材料費 | 材料の購入費用 |
| 労務費 | 作業員へ支払う賃金 | |
| 機械経費 | 建設機械や足場のリース費用など | |
| 間接工事費 | 共通仮設費 | 現場の運営や安全管理にかかる費用(事務所設置、電気・水道など) |
| 一般管理費 | 会社の運営にかかる経費(本社人件費、広告費など) |
積算業務の流れ
積算業務は、建設工事における費用を正確に算出する一連の作業です。この算出の主な流れは、以下の4工程で構成されます。
- 作業ごとに人件費(人工)を算出する
- 必要な材料や機材を算出する
- 全体の工事費(総工費)を算出する
- 必要な書類の作成
積算業務を円滑に進めるためには、各工程における費用の積算を正確に行うことが重要です。
作業ごとに人件費(人工)を算出する
積算における「人工(にんく)」とは、1人の作業員が1日あたりにこなせる作業量を表す単位のことです。人件費を算出する際、作業の難易度や必要な職種、資格、人数を考慮する必要があります。人工は「歩掛(ぶがかり)」という、作業ごとにかかる手間を数値化した標準的な基準から計算できます。
公共の建築工事においては、国土交通省が毎年公表している「公共建築工事標準単価積算基準」や「公共工事設計労務単価」などの積算基準を参考に、作業ごとの単価表を用いて見積を計するのが例として挙げられます。
これらの情報を基に、設計に沿った人件費の計算を行うことで、工事全体における人件費の和を標準的に算出することが可能です。
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建設業者必見!人工代とは?計算方法や目安の単価・請求書の書き方を解説
必要な材料や機材を算出する
積算において人件費の算出を行った後、次の工程として工事に必要な材料や機材の算出を行います。工事の種類や工法によって必要な材料の種類や数量は異なるため、設計図や仕様書から正確に把握することが重要です。材料費の算出においては、使用する数量と仕入れ価格が主な要素となります。
運搬費など、材料を現場に届けるまでにかかる費用も含まれる場合があるため注意が必要です。機材についても同様に、工事に必要な機材の種類と数量を算出します。
これらの算出には、国土交通省が定めている「土木工事標準歩掛」が参考になります。
全体の工事費(総工費)を算出する
工事費(総工費)を算出するには、直接工事費と間接工事費の和を計算します。直接工事費は、建設物の建設に直接関わる費用で、材料費、労務費、機械経費などが含まれます。これらの労務単価は、国土交通省の資料や建設物価、積算資料などを参考に算出します。
間接工事費には、共通仮設費や現場管理費、一般管理費など、工事全体を円滑に進めるために必要な経費が加算されます。
これらの費用を全て計算し、表にまとめることで、全体の工事費を正確に算出することが可能です。
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工事見積における諸経費や一般管理費・現場経費とは?内訳を解説
必要な書類の作成
積算業務の最終段階として、単価やレートなどをまとめた内訳明細書などの書類作成に取り掛かります。内訳明細書は、工事の業務内容や数量、内訳がツリー構造で記載されており、内訳書や明細書として詳細な情報がまとめられています。
書類作成のコツとしては、各工事に必要な材料費や人件費などの項目ごとに、規格や数量、単価を正確に記載することが求められます。
作成した書類に誤りがないか再度確認を行い、積算業務の一連の流れを完了させます。
積算はどんな業種で使われている?
積算は、主に建設業で使われる言葉です。建築工事、土木工事、電気設備工事、空調設備工事、内装工事など、工事内容や費用が個別の案件ごとに大きく異なる業種で広く活用されています。
これらの業種では、設計図や仕様書に基づき、必要な材料費、人件費、諸経費を正確に算出し、工事全体の原価を積み上げて把握することが非常に重要になります。
積算によって算出された原価は、適正な見積書を作成するための基礎となり、企業の利益確保と工事受注に直結するため、多岐にわたる工事関連業種にとって不可欠な業務です。
積算業務を行うために必要な資格やスキル
積算業務においては、専門的な知識とスキルが重要となります。この業務は、建設プロジェクトの費用を正確に算出する重要な役割を担っており、その性質上、専門的な知識と高度な能力が不可欠です。積算の精度は、会社の利益に直結するため、日々の業務を通じてこれらのスキルを磨くことが重要になります。
この項目では、積算業務に役立つ資格やスキルについて詳しく解説します。
積算に必要なスキル
業界の専門知識
積算業務には、建設に関する専門的な知識が不可欠です。具体的な例を挙げると、設計図や仕様書を正確に読み解く能力が求められます。また、工事全体の流れを理解し、適切な施工計画を作成できる能力も重要です。建設業界で使われる専門用語や工事の各過程を深く理解していることも、精度の高い積算を行う上で欠かせません。
これらの専門知識と能力は、正確な積算業務を行う上で必須となります。
情報整理能力
積算は判断の連続であるため、なぜその数量や単価になるのかを明確に整理できる情報整理能力が不可欠です。設計図から工種、数量、単価、そして見積もりへと至る一連の流れを分解し、情報を項目ごとに整理する力が求められます。
また、算出した根拠を論理的に説明できる能力や、見落としに気づきやすいチェック視点を確保することも重要です。
この能力が不足していると、積算が個人の“勘”に頼ってしまい、算出される費用の品質が不安定になる可能性があります。
計算力
積算業務においては、非常に高い計算力が求められます。正確な積算を行うためには、複雑な数値を扱うだけでなく、細かい部分まで計上していく必要があります。手作業での算出には限界があるため、積算専用のソフトを活用することも多いです。
数字に強く、根気よく計算に取り組める人が積算業務には向いているでしょう。
コミュニケーション能力
積算業務では、建築や建設に関わる多くの者と円滑なコミュニケーションを図ることが求められます。例えば、設計者や現場監督、資材の業者など、関係各所との連携が不可欠です。専門知識はもちろんのこと、相手の意図を正確に理解し、自身の意見を明確に伝えるコミュニケーション能力は、業務を円滑に進める上で非常に重要となります。
積算業務に必要になる資格
積算業務において、法律で定められた必須の資格は特にありませんが、業務の遂行に役立つ資格はいくつか存在します。これらの資格は、積算に関する専門的な業務知識や技術を持っていることの証明となり、実務において非常に有利に働くでしょう。
例えば、以下の資格が積算業務の専門性を示すものとして有効です。
- 建築積算士
- 建築コスト管理士
- 建築積算士補
- 施工管理技士
- 木造建築士
積算業務に向いている人とは?
積算業務は、建設工事の費用を正確に算出する重要な役割を担っており、その性質上、高い精度が求められます。この複雑な業務を成功させるには、特定の資質やスキルを持つ人が向いています。ここでは、積算業務に適した人材の特徴をご紹介いたします。
情報を整理して考えるのが得意な人
積算業務は、設計図書から必要な情報を正確に読み取り、工事費を算出するため、情報を整理して論理的に考える力が求められます。建設工事は複雑な要素が多く、多岐にわたる情報を効率的に分類し、適切な項目に費用を割り当てることが不可欠です。
情報の整理が得意な人は、多くのデータの中から必要な情報を見つけ出し、根拠に基づいて適切な費用を算出できます。
この能力は、積算の精度を高め、会社の利益確保に直結するため、積算業務において非常に重要な資質と言えるでしょう。
チェック作業が苦にならない粘り強い人
積算業務では、膨大な資料や数値の確認を何度も繰り返すため、チェック作業を苦にしない粘り強さが必要です。設計図や仕様書、見積書など、一つひとつの資料を丹念に確認し、わずかな計算ミスや記載漏れも見逃さない集中力が求められます。
この粘り強さが、積算の精度を高め、最終的な費用算出の正確性につながるため、会社の利益に大きく貢献します。
また、長時間にわたる作業でも集中力を維持し、細部にまでこだわり抜く姿勢が、信頼性の高い積算結果を生み出す根拠となるでしょう。
向上心がある人
積算業務では、常に新しい知識を習得し、スキルを向上させようとする向上心がある人が向いています。建設業界は技術や法規が頻繁に更新されるため、新しい情報に対応し、自身の知識を常にアップデートしていく姿勢が不可欠です。
向上心のある人は、自ら積極的に学び、業務の質を高めることができるため、積算の精度向上に大きく貢献します。
これにより、会社全体の利益確保にもつながります。
コミュニケーション能力がある人
積算業務では、建築や建設に関わる多くの関係者と円滑な意思疎通を図ることが非常に重要です。設計者や現場監督、資材の業者など、関係各所との連携が不可欠であり、専門知識だけではなく、相手の意図を正確に理解し、自身の意見を明確に伝える能力が求められます。
これらのコミュニケーション能力は、誤解を防ぎ、情報の共有をスムーズにすることで、業務を円滑に進める上で非常に重要となります。
計算が得意な人
積算業務では、非常に高い計算力が求められます。正確な積算を行うためには、複雑な数値を扱うだけでなく、細かい部分まで計上していく必要があるためです。手作業での算出には限界があるため、積算専用のソフトを活用することも多くあります。
数字に強く、根気よく計算に取り組める人が、積算業務に向いていると言えるでしょう。
積算を正しく行うコツ
積算は複雑で正確性が求められる業務ですが、いくつかのコツを押さえることで、より精度の高い見積もり作成が可能です。施工計画や施工条件を具体的に設計し、理解を深めることが重要です。また、現代の積算業務においては、積算ソフトの活用が不可欠であり、計算の精度向上と業務効率化に大きく貢献します。
これらのポイントを意識することで、積算における問題点を減らし、スムーズな流れで正しい積算を行うことができますので、ぜひ参考にしてください。
施工計画を具体的に設計しておく
積算を正確に行うためには、工事の計画を具体的に設計することが重要です。この計が詳細であればあるほど、積算時に必要な項目や数量を正確に把握でき、精度の高い表を作成できます。
特に、施工者として工事に必要な内容を図に落とし込み、施工計画書を作成することが求められます。この計画書には、施工工程や仮設、工法、安全衛生といったさまざまな内容を記載する必要があります。
工程表などの必要書類をしっかり作成できれば、より正確な積算が可能となり、積算業務全体の質を高めることにつながります。
施工条件をしっかり把握しておく
積算業務を正確に行うためには、工事現場の施工条件をしっかり把握することが重要です。現場の状況は毎回異なるため、図面だけでは把握しきれない部分も出てきます。そのため、工事計画中に施工環境や施工時期を確認する中で、追加で発生する費用や必要な業務がないかを計上する必要があります。
夏場であれば熱中症対策が必要となるため、熱中症対策費や対策を行う人数、機械などの有無も考慮する必要があるでしょう。
冬場であれば除雪費用など、季節によって発生する費用も考慮し、全体の費用に含めて算出することが大切です。
積算ソフトを利用する
積算業務の正確な計や効率化には、積算ソフトの利用が非常に有効です。手作業での計算は時間と手間がかかるだけでなく、ヒューマンエラーによる計上ミスや入力ミスが発生し、会社の利益に影響を与える赤字工事につながるリスクもあります。Excelのテンプレートを利用する方法もありますが、無料のソフトではチェック機能が備わっていないため、ミスを根本的に解決することは難しいです。
建設業向けの積算ソフトを導入すれば、材料の選択と数量入力を行うだけで自動で計算が実行されます。これにより、計算方法のミスがなくなり、業務時間を大幅に短縮可能です。
また、事前に利益レートなどを入力しておけば、見積書も簡単に作成でき、ミスなく短時間で正確な見積書を出すことができます。
積算業務をスムーズに行うためには、積極的に専用のソフトを活用し、業務の効率化と品質向上を目指すことをおすすめします。
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積算の最新トレンドと未来
近年、積算業務においてはデジタルトランスフォーメーション(DX)の導入が加速しています。特に積算ソフトの活用は、積算の精度向上と業務効率化において重要な役割を果たしています。積算ソフトは、材料の選択や数量入力だけで自動計算ができ、ヒューマンエラーのリスクを軽減し、計算方法のミスを防ぐことが可能です。また、事前に利益率を設定しておくことで、見積書も短時間で正確に作成できるようになります。
今後は、AIやBIM(Building Information Modeling)との連携により、さらに高度な積算が可能になることが予想されます。
これにより、建設業界全体での生産性向上とコスト削減が期待され、積算士にはより戦略的な視点とデータ分析能力が求められるでしょう。
まとめ
積算とは、建設工事にかかる費用を正確に算出する重要な業務です。設計図や仕様書に基づき、材料費や人件費、諸経費といったあらゆる費用を詳細に計算し、工事原価を積み上げます。見積もりは積算で算出された原価に会社の利益などを加えたものであり、原価計算は実際にかかった費用を計算するものであるため、それぞれ意味合いが異なります。
積算業務には、業界の専門知識や情報整理能力、計算力、コミュニケーション能力などのスキルが求められます。積算を正しく行うためには、施工計画や施工条件を具体的に設計し、積算ソフトを活用することが重要です。
積算に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 積算とは、簡単に言うとどんな意味ですか?
A. 積算とは、工事に必要な「材料・人件費・諸経費」などを一つひとつ洗い出して、工事にいくらかかるかを事前に計算することです。Q2. 積算と見積もりの違いは何ですか?
A. 積算は「原価の計算」、見積もりは「お客様に提示する金額」です。積算で計算した原価に、会社の利益や一般管理費を足したものが見積金額になります。
Q3. 積算はどんな業種で使われる考え方ですか?
A. 主に建設業で使われる言葉ですが、建築・土木・電気設備・空調設備・内装工事など、工事ごとに内容や費用が変わる仕事全般で使われる考え方です。Q4. 積算の仕事はどんな人に向いていますか?
A. 図面や数字を見ることに抵抗がなく、コツコツ情報を整理したり、計算ミスがないか確認するのが苦にならない人に向いています。Q5. 積算を始めるには、まず何から学べば良いですか?
A. まずは、・図面や仕様書にどんな情報が書かれているか
・材料名や工事の基本的な用語
・人件費・材料費などの費用の考え方
といった「基礎用語」と「図面の読み方」から学ぶのがおすすめです。最近は、積算ソフトを使いながら仕事を覚えるケースも増えています。






