建設現場の工程管理を成功させるコツと遅延を防ぐポイントを解説

工程管理が重要視される理由

工程管理は、定められた工期で高品質な建築物を完成させることを目的としており、リソース配分や作業進捗の管理に不可欠です。工程管理がなぜ重要視されるのか、その理由を解説します。

遅延が利益を圧迫する

建設業には必ず納期が設定されており、工程管理を行うことで、進捗状況を明確に把握できます。建設業の納期は長期的に設定されていることが多く、工期期間中に天候や資材などのトラブルが発生する場合も少なくありません。トラブルが起きてしまった場合、作業遅延が発生すると、計画通りに進めるために人員の追加や作業方法の見直しが必要となり、これが追加費用、すなわち原価超過にも直結してしまいます。
特に、余計な人件費や材料費が必要以上にかかることは利益の圧迫に直結します。適切なスケジュール管理によって納期の目処ができれば、必要な職人の手配や経費を見積りが可能になり、作業遅延や予算超過などのリスクを最小限に抑えることができるため、プロジェクトの成功に繋がります。

手戻りがコスト増に直結

適切な工程管理により、作業ごとの手順や日数、必要人員などを詳細に決定でき、完成物の品質や作業品質の向上につながります。もし無理な日程で工程を組んでしまうと、品質の低下や作業員の不満につながる可能性があるため、余裕を持った日程で工程を組むことが求められます。また、工事の流れを把握しておかないと、トラブルやミスが起きた際に対処が遅れてしまい、手戻りが発生する恐れがあります。
手戻りが発生すると、追加の作業時間や資材が必要となり、コストが増大してしまいます。建設業の場合、建築物を完成させるためには多数の工程があり、順序よく進行していくことが求められるのです。工事はマルチタスクで進むことが多いため、全体の流れを把握できていないと、リソース配分や作業進捗に問題が生じ、手戻りや無駄な工数が発生しやすくなります。

協力会社・施主対応にも影響

工程管理は、建設現場においてリソース配分や作業進捗を確認するうえで必要であり、工事関係者との連携に大きく影響します。効率的な工程管理の実現には、工事関係者と工事の進捗度を共有することが重要です。工程表が関係者間で共有できていないと、協力業者の作業開始時期がずれるなどのトラブルの元となります。
日頃から協力業者などの工事関係者と進捗を共有できていると、人員調整や工事を開始する時期の調整をスムーズに行えます。スケジュール管理を通じて納期の目処が立てば、必要な職人を手配でき、スムーズな協力会社との連携が可能です。また、工程管理が適切に行われないと、工期通りに建物が竣工しないだけでなく、原価の上昇につながり、結果的に施主への信頼にも悪影響を及ぼす可能性があります。

工程管理の基本要素

定められた工期で建築物を完成させるという目的を達成するためには、次のような工程管理の基本的な要素を理解し、適切に作業計画を立案することが重要です。

WBS（作業分解）の整理

工程管理の最初のステップは作業計画の立案です。WBS（作業分解）は、この計画立案を支援します。工事には多数の工程があり、順序よく進行していくことが求められるため、WBSにより複雑なプロジェクトを個々の作業項目に分解し整理することで、各作業や工程に必要な時間をできるだけ細かく把握することができます。
これにより、より正確なスケジュールを組むことが可能になります。まず工事全体の流れを理解し、次に各工事の詳細を把握したうえで、工程表を作成します。ただし、全体スケジュールの項目を細かくしすぎると、把握の手間が増え、混乱や認識のズレが生じてしまうため、共有すべきスケジュールを仕分けし、シンプルに保つことも大切です。

作業の依存関係

工事全体の流れを理解し、後工程を考えて動けるようになることは、工程管理のコツの一つです。特に、作業の依存関係、つまりある作業が終了しないと次に進めない関連性を明確にすることは、効率的なタスク管理のために重要です。
ネットワーク工程表は、この作業間の関連性を記入するもので、工事規模が大きく工程数が多い現場に向いています。工事の流れがわかると、次に何が必要か、作業量がどの程度かといった後工程を意識できるようになり、計画通りに工事を進めるうえで重要な、重機の搬入タイミングや材料の手配タイミングを誤るミスを防ぐことができます。

リソース配分

リソース配分とは、作業計画に基づき、工事ごとに必要な人員や機材の計算と配置を行うことです。工事ごとの流れがわかると、人員機材の配置が適切になり、無駄のない工程管理ができます。これにより、余分な人員・機材が必要となくなるため、コスト削減につながるのです。
また、作業に遅れがでていないか、人員機材を持て余していないかなど、作業進捗の際にリソース配分を確認し、調整することが重要です。スケジュール管理を通じて納期の目処ができれば、その予定をもとに必要な職人を手配したり、必要な経費を見積りを取ったりすることができます。

短期・中期計画のバランス

工程管理では、工事の全体像を把握するための「全体工程表」のほか、特定の期間を抜き出した「月間工程表」「週間工程表」「細部工程表」を作成し、運用します。これらの短期・中期計画をバランスよく管理することが重要です。
長期的な全体工事の流れを理解できていないと、トラブルやミスが起きた際に対処が遅れてしまう恐れがあります。一方、月間工程表は工事全体のマイルストーンを管理する役割を持ち、週間工程表は日々の具体的な作業や進捗を管理します。また、工期が短い現場の工程表を作成することは、経験の浅い現場監督が精度の高い工程表を作成する練習として適しています。全体工事の流れを理解し、工事ごとの詳細を把握したうえで、適切な期間の工程表を作成し、管理することが求められます。

工程管理を成功させるコツ

工程管理において、特に重要視されているのが「品質」「コスト」「納期」の3つであり、これらを向上させることが大切です。ここでは、工程管理を成功させるための具体的なコツを解説します。

日次・週次の進捗共有

工程管理を成功させるコツの一つは、工事関係者と工事の進捗度を共有することです。建設業では、トラブルなどで作業計画通りに進まないことが多いため、都度進捗確認を行い、工程表と実績のズレを確かめる必要があります。
日頃から協力業者などの工事関係者と進捗を共有できていると、工事の遅れを取り戻すための細かい調整や、人員・工事開始時期の調整をスムーズに行うことができます。工程管理システムを導入すれば、データをクラウド上に保存し、スマートフォンやタブレットから外部でも情報を確認できるため、工事関係者間の情報共有を効率的に行うことができます。

変更点の即時反映

作業計画を実行しているなかで、計画通りにいかない点や悪い点が浮かび上がってきたら、原因を特定し、改善を図ることが効率的な工程管理には不可欠です。進捗度合いに応じて工程表や作業方法を見直す際、変更点を即時反映できる体制が重要です。
工事が遅れている場合は、作業の同時並行や人員増などの対策が考えられますが、これに伴う工程表の修正は手間がかかります。工程管理システムのなかには、予定変更をドラッグ＆ドロップで簡単に行えるものや、工期変更があってもその工程以降の予定を一括で移動させることが可能なものがあり、エクセル特有のストレスなく修正できるため、変更点の即時反映が容易になります。

現場と事務の情報連携

工程管理の効率化には、現場サイドと事務サイドの情報連携が欠かせません。従来の紙や手書きによるアナログな手法では、情報共有がしにくいというデメリットがありました。工程管理システムを活用すれば、データをクラウド上に保存し、現場にいても工程表の確認や進捗状況の確認を行えるため、事務所に戻る回数を減らすことが可能です。
また、システムによってはチャット機能があり、リアルタイムで現場写真のやりとりができるため、施工管理者は現場に出向かずとも正確に進捗状況を把握できます。顧客管理から工事管理、見積り作成、実行予算管理、請求・入金管理まで、多様な業務に対応しているシステムもあり、一度入力したデータが後工程の業務に活用されることで、情報連携と効率化が実現されます。

遅延要因の早期発見

作業遅延やトラブルの発生は、工程管理の計画に影響を与えるため、遅延要因を早期に発見することが重要です。工程管理の手順では、問題の分析と改善が重要とされています。グラフ式工程表は、作業ごとの進捗状況の把握が容易で、進捗具合を曲線で視える化します。また、予定と実績を一画面で確認できる工程管理システムを利用すれば、工事の進捗確認が容易になり、工程表とのズレを早期に発見できます。
工期遅れの要因には、自然災害や材料の発注ミス、職人の手配漏れなどさまざまな理由があります。これらの原因を判明させ、問題の改善を図ることで、効率的な工程管理が可能です。また、あらかじめ工程表に予備日などの余裕を意識的につくっておくことも、トラブルによる遅延に備えるうえで大切です。

工程管理に役立つツールの特徴

建設・製造業のDX化が進むなかで、さまざまなタイプの工程管理ソフトが登場しており、システムの構築や導入も手軽に行えるようになっています。ここでは工程管理に役立つツールの主な特徴を解説します。

スケジュールの視える化

工程管理ソフトのメリットの一つは、専門的な知識がなくても複雑な工程表の作成が簡単に実施できる点です。システムは、スケジュールを視える化する機能に優れています。例えば、ガントチャート工程表は縦軸に作業項目、横軸に進捗率を記入し、作業の進捗率を把握しやすい特徴があります。
ネットワーク工程表は、作業間の関連性がわかりやすく、効率的なタスク管理ができる工程表ですが、システムを利用することで、工事の流れを明確にし、全体のスケジュールの視える化を支援します。アナログな手書きや複雑なエクセル操作と比べ、システムは工事全体の予定把握や作業ごとの進捗状況の把握を容易にし、工程管理の効率化を促進します。

リアルタイム更新

工程管理システムは、リアルタイムでの情報更新と共有を可能にするクラウド型のものが主流です。これにより、現場にいる作業員も事務所にいる管理職も、スマートフォンやタブレットを通じて最新の工程表や進捗状況をすぐに確認できます。進捗に合わせて更新しなければならないガントチャート工程表のデメリットも、リアルタイム更新機能により解消されます。
システムによっては、予定変更も簡単に操作でき、急な変更があった際にも即時反映が可能です。リアルタイムでの情報共有は、情報連携を円滑にし、作業時間の無駄を削減し、長時間労働を少なくすることにもつながります。

写真・資料の一元管理

工程管理ソフトは、工程表の管理だけでなく、写真や資料の一元管理機能も備えていることが特徴です。システムによってはチャット機能を通じてリアルタイムで現場写真のやりとりができ、施工管理者は現場に出向かずとも正確な進捗状況を把握できます。
また、図面・写真管理を含む多様な業務に対応しているシステムもあり、工事に関するすべての情報を一元化することで、必要な情報にすぐにアクセスできるようになります。これにより、情報探しの手間やミスを防ぎ、本来集中すべき仕事に専念できる環境を提供します。

現場で使いやすい UI

工程管理システムを選ぶうえで、現場で使いやすいUIであることは重要です。ITツールが苦手な人でも抵抗なく利用できるように、直感的に操作できるシステムが多く開発されています。
使いやすいシステムは、操作習得にかかる時間を短縮し、工程表作成の効率化に貢献します。また、テンプレートの活用や過去の工程表の流用も可能となり、誰でも簡単に精度の高い工程表を作成できるようになります。

工程管理と原価管理の関係

工程管理においては、「品質」「コスト」「納期」の3つを効率化・向上させることが大切であり、特にコスト（原価）管理とは切っても切り離せない関係にあります。

遅延が原価超過につながる

工程管理の最大のメリットの一つはコスト削減ですが、作業遅延が発生すると、計画通りに進めるための追加対策が必要となり、原価超過につながります。スケジュール管理によって納期の目処ができれば、必要な経費を見積ることが可能になり、現場管理者が原価管理の一部を把握することで余計なコストを抑えられます。
工程管理が適切に行われないと、原価の上昇につながるため、作業計画の実行中に発生した問題の原因を分析し、改善を図ることが、効率的な工程管理と原価管理の両立に不可欠です。

工期変更によるコスト影響

天候や資材調達などのトラブルにより工期変更が必要になることは建設現場ではよくあります。工期変更は、作業計画の見直しだけでなく、人員配置や材料の手配タイミングの再検討など、多くの追加業務を発生させ、対策によっては追加費用がかかるため、現場の予算を考慮した対応が求められます。
工程管理システムのなかには、工期が変更になった場合に、その工程以降の予定を一括で移動させることが簡単にできる機能があります。これにより、工期変更に伴う事務的な手間とそれに伴う人件費のコスト影響を削減し、工程とコストの管理を円滑に行うことができます。

出来高と予算を結びつける

工程管理を原価管理と統合することで、出来高（作業の進捗度）と予算（原価）を結びつけることが可能になります。グラフ式工程表は、縦軸に出来高、横軸に日数を記載し、作業ごとの予実管理を簡単に行える工程表です。しかし、これを手作業で行うには限界があります。
工程管理システムのなかには、見積り作成、実行予算管理、支払管理、請求・入金管理といったお金に関わる業務に対応しているものがあり、工程情報と連携させることで、工事の進捗に応じてリアルタイムで予算とのズレを把握しやすくなります。出来高と予算の連動管理は、利益率が悪化した原因を簡単に見つけることを可能にし、プロジェクトの「コスト」「品質」「納期」を最適化するために不可欠です。

 「要 〜KANAME〜」で工程と原価を統合管理

建設プロジェクトの成功には、工程管理と原価管理を統合的に行う原価連動管理の必要性があります。なかでも、原価管理ツール「要 〜KANAME〜」は、この統合管理に有用性を提供します。
「要 〜KANAME〜」を使うことで、出来高と予算を結びつけ、原価超過のリスクを早期に発見し、効率的な工程管理と利益確保に繋がります。

工事現場の工程管理のコツについてよくある質問

Q1：工程管理と生産管理の違いは？

A：工程管理と生産管理は名称が似ていますが、管理している範囲が異なります。生産管理は、生産計画から人員配置、品質管理など、生産工程全体に関わる業務を指します。一方、工程管理は、納期の管理を中心としており、定められた工期までに建築物を完成させることを目的に、作業日程や人員・機材の配置を調整しながら全体のスケジュールを管理する業務です。したがって、工程管理は生産管理の範囲の一部に含まれるという関係性です。どちらの管理業務も、建設業の現場では必要不可欠であり、リソース配分や作業進捗の管理に役立ちます。

Q2：工程表にはどのような種類があり、どのように使い分けられますか？

A：工程表には、現場の規模や目的によって使い分けられるいくつかの種類があります。主要な工程表として、バーチャート工程表、ガントチャート工程表、グラフ式工程表、ネットワーク工程表があります。

• バーチャート工程表は、縦軸に作業項目、横軸に日付を記入し、バー（横棒）で進捗度を記します。作成が容易で工事全体の予定を把握しやすいのが特徴で、作業数が少ない短期工事やリフォーム工事に適しています。
• ガントチャート工程表は、縦軸に作業項目、横軸に進捗率を記入します。作成が容易で進捗率を把握しやすいですが、バーチャート工程表と同様に作業間の関連手順が分かりづらいというデメリットがあります。バーチャート工程表と一緒に使用する機会が多い工程表の一つです。
• ネットワーク工程表は、「○」と「→」の記号を用いて工程ごとの関連性を明確にし、工事の流れを視える化します。工事規模や工程数が多い大規模な現場や、難易度の高い複雑な現場に適しており、効率的なタスク管理が可能です。
• グラフ式工程表は、縦軸に出来高（進捗率）、横軸に日付を記入し、曲線で進捗具合を把握します。作業ごとの進捗状況や関連性がわかりやすいですが、作成には経験や知識が求められます。

Q3：工程管理でコスト削減を実現するための具体的なメリットは何ですか？

A：工程管理を実施するメリットの一つは、コスト削減です。適切な工程管理を実現することで、余分な人員・機材が必要となくなり、人件費や材料費が必要以上にかからない状態を作り出せます。工程管理は、作業ごとの手順、日数、必要人員などを詳細に決定し、適切な人員・資材の配置を可能にします。また、スケジュール管理によって納期の目処ができれば、必要な職人の手配や経費を見積ることが可能になり、行き当たりばったりや無駄をなくすことにつながります。作業遅延や予算超過のリスクを最小限に抑えることも、コスト削減に不可欠な要素です。

Q4：若手の現場監督が工程管理を覚えるためのコツを教えてください。

A：工程管理は業務が多岐にわたるため、経験の浅い若手現場監督にとっては習熟に時間がかかりますが、以下の3つのコツを意識して実践することでスムーズに覚えることができます。

1. 工事全体の流れを理解する（全体工期の把握）：まずは工事の流れを一通り把握し、仮設工事に〇〇日、掘削工事は△△日までに完了といった流れを理解することが大切です。全体を把握できていると、後工程を考えて行動できるため、トラブルやミスが発生しても冷静に対処できます。
2. 各工事の流れや作業の把握：全体像を理解した後、各工事の詳細な流れと作業量を把握します。例えば、内装工事におけるLGS（軽量鉄骨）の施工日数やボード取り付け日数など、具体的な情報を覚えることが重要です。これにより、次に何が必要か、どれくらいの作業量があるかといった、先を見据えた工程管理が可能になります。
3. 工期が短い現場の工程表の作成：ある程度工事の流れが掴めたら、数週間程度で終わる短工期の現場の工程表を作成してみましょう。短工期の現場は考慮事項が少なく、経験が浅くても精度の高い工程表を作成しやすく、作成後は必ず上司や先輩にチェックしてもらい、フィードバックを受けて改善を繰り返すことが大切です。

Q5：工程管理の効率化に最もおすすめのツール活用方法は？

A：工程管理の効率化に最もおすすめの方法は、工程管理システムの活用です。システムを活用することで、手書きやエクセルでの管理に比べて、スケジュールの視える化やリアルタイム更新が容易になります。工程管理システムは、専門的な知識がなくても複雑な工程表の作成が簡単に実施できる点がメリットです。また、データをクラウド上に保存するため、現場にいてもスマートフォンやタブレットで情報確認ができ、事務所に戻る回数を減らすことができます。さらに、エクセル特有の複雑な操作（セルの移動や休日設定など）の手間がかからず、業務が効率化することで残業代を抑制できるなど、費用対効果が高い方法といえます。工程管理システムを選ぶ際は、複数のソフトを検討し、自社に必要な機能を搭載しているツールを選択することが推奨されます。