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  • 2025年12月01日

建設業の実行予算の作り方とは? 利益を守るためのポイントを解説

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建設業の実行予算の作り方とは? 利益を守るためのポイントを解説

建設業において、実行予算とは、工事現場で実際に発生する費用に限りなく近い金額が設定された予算のことです。建設業界では、現場ごとに必要な資材や人員が異なるため、この実行予算の策定が非常に重要になります。実行予算を適切に作成し、管理できなければ、目標とする利益を確保できず、赤字に陥る可能性が高まります。

 

この記事では、建設業の実行予算の作り方や、利益を守るための具体的な管理方法、そしてその精度を高めるためのツール活用について解説します。

実行予算とは?建設業における役割

実行予算とは、建設業において各工事の着工から完成までにかかる全ての費用と予想される収入を詳細に見積り、現場ごとに設定される予算を指します。これは、工事現場における家計簿のようなものであり、具体的な原価目標や利益目標を達成できるように費用の用途を分類する役割を持ちます。
実行予算の主な役割は、「原価計画の立案」と「予算実績管理」の2つに大きく分けられます。

実行予算と見積り・積算との違い

実行予算は、類似する概念である基本予算、見積り、積算と混同されがちですが、それぞれ異なる役割を持っています。
基本予算とは、会社全体で年間で達成する目標を意味し、会社の経営計画に基づいて会計期間単位で作成される予算です。一方、実行予算は工事のプロジェクトが始まりから竣工するまでの期間を対象とする現場単位の予算です。
また、積算とは、設計図面や現場の条件をもとに、工事に必要な資材や人件費などの費用を計算する作業を指します。そして、この積算の結果に利益を上乗せして発注者に提示するのが見積書です。実行予算は、見積書をもとに、実際の業務に基づき、より具体的な費用を見積り作成した予算であり、見積原価よりも実際の工事費用に近い金額で算出されます。

実行予算の役割は「利益計画の視える化」

実行予算の作成の最も重要な目的の一つは、プロジェクトの収益性を事前に予測することです。実行予算を作成することで、具体的な原価目標を設定でき、コストや収益率を予測できます。
実行予算は、プロジェクトの各フェーズでの支出を正確に把握し、調整を可能にすることでコストオーバーランのリスクを最小限に抑えます。特に建設業の収支は、施主からの急な変更依頼や天候の影響など、外部からの影響を受けやすいため、高精度な実行予算を作成することで、収支を適切に管理することが可能です。
実行予算は、原価管理の基盤となり、コスト項目ごとの支出が計画通りに進行しているか確認できる基準になります。この詳細な計画を通じて、利益計画の視える化を実現できるのです。さらに、実行予算は経営層にとって、リソース配分や投資判断など戦略的な意思決定をサポートする重要な情報源となります。

実行予算が工事別損益管理の基礎に

実行予算は、工事別の損益管理を行ううえでの基礎となります。工事が始まってからも、実際に発生した原価と実行予算を比較することで、リアルタイムでの原価管理が可能になります。リアルタイムの原価管理ができていると、「工事が終わってみたら実行予算との乖離が激しくて赤字になった」といった事態を防ぐことができます。
実行予算と実績の乖離をリアルタイムで把握することは、問題を迅速に発見し、損失の発生を最小限に抑えるための対策につながります。また、実行予算は、プロジェクトマネージャーやチームの業績評価の指標としても活用され、予算内で完遂された場合、高い評価につながるでしょう。建設業において、実行予算の作り方を学ぶことは、適切な損益管理の第一歩といえるでしょう。

実行予算を作る前に押さえておくべきポイント

高精度の実行予算を作成するためには、実際の作成ステップに入る前に、必要な情報の精査やリスクの整理など、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。これにより、客観的で現実性のある予算を設定することができます。

設計・見積情報の精査

実行予算は原則として見積書をもとに作成しますが、その前に、設計図面、仕様書、契約書などの必要な情報を収集し、精査することが重要です。収集すべき情報には、工事の全体構造やレイアウトを把握する設計図面、使用する素材や仕上げの詳細を確認するための仕様書、契約条件や納期を見積もるための契約書が含まれます。
見積書には現場に必要な経費だけでなく利益も上乗せされているため、見積りと実際にかかる費用が完全一致しないケースも多いです。そのため、見積りデータは市場価格の参考価格として確認しつつ、より具体的な数字になるように、一部の数字を組み換える精査が必要です。この精査を怠ると、実行予算の正確性が低下します。

原価構成の把握

実行予算を作成する前に、内訳に含まれる費用を明確に把握しておく必要があります。実行予算は、一般的に「現場経費」と「工事原価」で構成されます。そして、工事原価はさらに「直接工事費」と「間接工事費」に分けられます。
  • 直接工事費:工事に直接かかる費用
 ・材料費(コンクリート、鋼材、木材など)
 ・労務費(建設作業員への賃金・給料)
 ・直接経費(水道光熱費など)
  • 間接工事費(共通費):工事の施工に間接的に発生する費用
 ・共通仮設費(仮設事務所、足場、安全確保など)
 ・現場管理費(現場監督の人件費、事務所の維持費、安全管理費など)
 ・一般管理費(工事進行のサポート、広告など)
現場経費は、工事現場の運営にかかる雑費(社員の給料、保険料、通信費、交通費、事務用品費など)を指します。これらの項目を設定したうえで、どのくらいの費用がかかるか検討し、実行予算を決めていきます。

過去案件のデータ比較

客観的に説得力のある金額を予算に設定するためには、過去の予実管理データを参考にすることが非常に重要です。過去のプロジェクトから得られるデータを参照することで、特定の工種や条件における原価や工期の傾向を把握し、実行予算の正確性を向上させることができます。
過去のデータと比較することで、作成者の主観が入りすぎた非現実的な数字になることを防げます。また、過去の実行予算と実績の乖離が著しい場合は、そもそも実行予算の設定が間違っていた可能性を分析し、次回以降の改善につなげることもできるでしょう。データとして蓄積されたロス率の実績などを実行予算の検討に活用することも大切です。

想定リスクの整理

特に建築業は、工事の途中で内容が変更になったり、天候の影響で工事が止まったりするなど、不測の事態が発生しやすい業界です。実行予算の達成がギリギリのラインだと、予算外の出費が発生した際に赤字になる可能性があります。
そのため、実行予算を作成する前に、天候リスク、人手不足、資材不足、設計変更などの不確定要素を評価し、整理しておく必要があるでしょう。リスクを考慮した具体的な対応策として、リスク係数や予備費を設定することがポイント。予備費を事前に立てておくことで、突発的な費用が発生しても迅速に対応できます。

実行予算の作り方ステップ

実行予算の作成は、プロジェクトの成功に直結する重要なプロセスです。具体的なステップとして、まず予算作成者を決定し、必要な情報を収集・精査したうえで、各費用の精確な積算と割り当てを行い、最後に現場と調整して決裁を得ます。

材料費・外注費の正確な積算

実行予算の作成においては、材料費や外注費を精確に積算することが不可欠です。材料費の積算するうえでは「設計数量」と「所要数量」の違いを理解しておきましょう。
設計数量は設計図の情報に基づき算出された資材の数ですが、所要数量は実際に現場で調達・使用する資材の数です。工事では、資材を加工する際の端材発生や、損傷による使用不可などでロスが生じるため、両者の数量には違いが出ます。
そのため、実行予算を組む際は、現場でどのくらい資材のロスや誤差が発生するかを考慮し、具体的な数量を設定することがポイントです。企業によっては材料ロス率を設定しており、その実績データを活用することで、コストダウンにつながる実行予算の検討が可能になります。外注費についても、複数の業者から見積りを取り、比較検討することが推奨されます。

労務費・経費の割り当て

労務費は、現場作業員や機械オペレーターなどの人件費で、労働者のスキルレベルや地域の平均賃金などによって異なります。これらの単価を考慮し、作業時間と作業員数を基に労務費を見積ります。
経費の割り当ても重要です。現場監督の人件費、仮設事務所のレンタル費用や光熱費、通信費、消耗品費など、管理運営に必要な費用を細かく計算します。特に大規模なプロジェクトでは、現場管理者の給与にはボーナスや残業代、交通費なども考慮に入れる必要があります。

リスク係数(余裕率)の設定

リスク係数(余裕率)の設定は、不測の事態に備え、赤字化を防ぐために欠かせません。天候不良による工期延長や予期せぬ地盤の問題、資材価格の急騰といったリスクに対応するため、予備費を設定します。
適切な予備費を設定することで、突発的な費用が発生しても、迅速に対応することができ、プロジェクトの健全な進行を確保できます。見積り時にリスクを考慮し、予備資金を設定することは、精度の高い見積りを行ううえで有効です。

現場とのすり合わせ

実行予算案の作成が完了したら、関係各所に内容を確認してもらい、多角的なレビューを受けることで、予算の正確性をより向上させることができます。特に、現場工程のリーダーを任せた人員には予算案を見せ、該当の現場で達成すべき予算への意識を持ってもらうことが大切です。
また、現場担当者以外の目線からチェックしてもらうことで、予算案の精度が上がります。調整が終わった実行予算は、責任者の決済を得て、最終的な実行予算として承認されます。承認後は、関係者間で共有し、共通の理解を図ることが重要です。

実行予算を運用する際の注意点

実行予算は、作成したら終わりではなく、プロジェクトの進行中も継続的に管理・運用していくことが重要です。運用を適切に行うことで、予算オーバーを防ぎ、利益を最大化することができます。

設計変更への対応

建設プロジェクトでは、施主からの急な変更依頼や、予期せぬ現場の状況により、当初の設計や仕様が変更になることがあります。実行予算は、計画段階の概算の見積りや基本予算をもとに作成されますが、工事の進捗に合わせて更新されることが一般的です。
そのため、設計変更が発生した際は、迅速に対応し、材料費、労務費、工期などに与える影響を再評価して、実行予算を更新する必要があります。実行予算がしっかりしていれば、急な価格変動や変更があった場合でも、迅速に対応策を講じることが可能です。

更新頻度と管理体制

実行予算を効果的に活用するためには、予算実績の差異をできるだけリアルタイムで把握することが大切です。予算と実績の比較や分析に時間がかかり、数ヶ月経ってから振り返るようでは意味がありません。
最低でも月に1回、できれば1週間に1回や2週間に1回など、一定のタイミングで予算実績の管理をおこない、現状を把握したうえで必要な対策を立てていくことが大切です。また、予算作成者を明確に決定しておくことで、問題が発生した際の責任の所在が明確になり、迅速な対応が可能になります。

情報共有の徹底

実行予算は、現場や管理部門、経営層など、多くの関係者にとって重要な指針となります。そのため、透明性を保ち、定期的なミーティングなどを通じて、関係者全員が予算内容を理解していることを確認する必要があります。
実行予算が承認された後は、関連部門や協力会社と共有し、共通の理解を図ります。情報の一括管理やスムーズな共有は、原価管理ソフトの導入によって円滑化されるというメリットがあります。すべてのコミュニケーションを文書化し、コミュニケーション履歴を残すことも大切です。

予算と実績の乖離管理

設定した実行予算に対する達成度合いを確認するため、予算実績の管理、すなわち予算と実績の乖離管理は非常に重要です。
乖離を把握することで、プロジェクトが赤字で進行していないか、どのくらい損失が発生しているのかをリアルタイムで把握することができます。もし乖離が著しい場合は、問題が現場で発生しているのか、あるいは実行予算の設定自体が間違っているのかを分析し、次回以降の改善につなげられます。この乖離管理を継続的に行うことで、予算オーバーを防ぎ、適切な資金配分を行えます。

利益につながる実行予算管理のコツ

実行予算を単なる計画で終わらせず、確実に利益を確保するためには、以下のようなポイントを押さえておくことが重要です。

差異分析の定期実施

利益につながる実行予算管理のコツは、予算と実績の比較を定期的に行い、差異分析を実施することです。差異分析を行うことで、計画と実際の支出のズレの原因を特定し、無駄な支出を削減したり、コストカットの可能性を見つけたりすることができます。
例えば、四半期ごとの評価で現在の支出と予算の比較を行い、異常な支出が発生していないかを確認します。差異が確認された場合、その課題に対して迅速に対策を講じることで、赤字や損失を最小限に抑えることにつながります。この差異分析の結果は、次のプロジェクトの実行予算作成時にも活かされます。

出来高とコストの同期

予算管理を成功させるには、出来高(工事の進捗)と発生したコストをリアルタイムで同期させることが非常に有効です。工事がどの程度進んでいるかという物理的な進捗に対して、費用がどのくらいかかっているかを比較することで、進行状況が計画通りに進んでいるかを正確に把握できます。
もし、出来高に対してコストの支出が早すぎたり、遅すぎたりする場合、それは予算超過のリスクや工程上の問題を早期に示唆している可能性があります。予算実績の差異をリアルタイムで把握できていれば、問題発生時の迅速な対応策が可能となります。

予測原価で先読み管理

実行予算管理の次の段階として、予測原価を用いた先読み管理が挙げられます。これは、現時点での進捗状況と将来のコスト予測を組み合わせて、プロジェクト完了時点での最終的な収益性を予測する手法です。
リアルタイムで実績原価を把握するだけでなく、今後の資材調達価格の変動や残りの工期に必要な労務費などを予測し、実行予算から逸脱する兆候を事前に察知します。これにより、赤字が確定する前に、リソース配分の見直しや資材の大量購入によるディスカウント交渉など、戦略的な手を打つことができます。予測原価による先読み管理は、リスクの早期発見と対策に直結します。

「要 〜KANAME〜」で実行予算を視える化

建設業における実行予算の作り方について、正確性を高め、管理を効率化するために、原価管理ソフトや業務管理ツールの活用がおすすめです。実行予算の作成は精度が求められるうえに時間がかかる作業であり、業務負荷の増大につながるためです。
原価管理ツール「要 〜KANAME〜」は、実行予算の作成と管理の効率化に寄与します。原価管理ソフトを導入することで、見積りデータや過去の予算データを参照して簡単に実行予算を作成できるほか、膨大なデータを処理し、正確な原価計算が可能になり、人為的ミスを軽減できます。
また、データの一括管理により、情報の共有が容易になり、関係者間のコミュニケーションも円滑になります。正確性の高い実行予算を作成し、効果的に管理するためには「要 〜KANAME〜」の導入がおすすめです。

建設業の実行予算の作り方についてよくある質問

Q1: 実行予算と基本予算の違いは何ですか?

A1: 基本予算は会社全体で年間で達成する予算目標を意味し、会社の経営計画に基づいて会計期間単位で作成されます。これに対し、実行予算は現場ごとに設定される予算であり、工事のプロジェクトが始まりから竣工するまでの期間を対象とします。実行予算は、基本予算をもとに、プロジェクトの各段階で実際にかかると見込まれる費用をより具体的に算出したものです。

Q2: 実行予算と見積書の違いは何ですか?

A2: 見積書は、工事を受注するために発注者へ提示する概算の工事費用のことです。積算の結果に利益を上乗せして作成されます。一方、実行予算は、その見積書をもとにして、実際に工事現場で発生する費用に限りなく近い具体的な金額を見積り作成した予算です。実行予算は、見積書よりも高い精度で原価を管理し、利益確保を目的として内部で運用されます。

Q3: 実行予算の作成担当者は誰が担うべきですか?

A3: 実行予算を作成する際は、担当者を明確に決定することが重要です。建築業では、現場の責任者が実行予算作成担当者になるケースが多いです。現場に精通しており、予算面を把握できている人員を選定することで、工事に対する責任を持ってもらうという目的もあります。担当者を決めることで、問題発生時の対応が遅くなることを防げます。

Q4: 実行予算の内訳にはどのような費用が含まれますか?

A4: 実行予算は、大きく「現場経費」と「工事原価」で構成されます。 工事原価には、工事に直接かかる直接工事費(材料費、労務費、直接経費など)と、間接的に発生する間接工事費(共通仮設費、現場管理費など)が含まれます。 現場経費には、工事現場の運営にかかる費用(社員の給料、保険料、通信費、事務用品費など)が含まれます。正確な実行予算作成のためには、これらの原価構成を把握することが不可欠です。

Q5: 実行予算の作成を効率化するにはどうすれば良いですか?

A5: 実行予算の作成を効率化し、精度の高い予算を素早く作るためには、ツールの導入が有効です。主に業務管理ツールや原価管理システムの利用が挙げられます。業務管理ツールは、過去の見積りデータや予算データ、テンプレートを一元管理し、ワンクリックで数字を変更できるなど、作業精度に差が出にくく、決裁速度も上がるメリットがあります。特に原価管理ソフトは、正確な原価計算やリアルタイムの進捗管理を可能にし、実行予算の運用を大きく改善します。

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