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  • 2026年07月30日

建設業の実行予算の作り方|準備から作成後の管理まで解説

原価管理・利益管理
建設業の実行予算の作り方|準備から作成後の管理まで解説


上司や現場から「この工事の実行予算を作ってほしい」と言われたものの、何の資料を確認し、どの順番で手を付ければよいか分からず、手が止まってしまうことはないでしょうか。実行予算は、見積書の数字をそのまま転記すれば完成するものではなく、契約範囲や図面、仕様書、工程表、協力会社の見積りなどを確認しながら組み立てていく必要があります。

この記事では、実行予算を作成する前に確認しておくべきポイント、実際の作成の流れ、社内での確認・承認の進め方、そして工事が始まってからの基本的な管理方法までを、作業順に沿って解説します。

本記事を参考に、自社で使用している資料や様式を確認しながら、実行予算案の作成を進めてみてください。

監修:プラスバイプラス編集部

建設業向けCADや原価管理システムの開発・提供を通じて、現場の業務効率化を支援しています。 日々の業務の中で出会うお客様の声をもとに、図面作成・申請業務・積算・見積り・原価管理などに 関する実務知識を蓄積し、正確で実践的な情報発信を行っています。

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実行予算とは?建設業における役割

実行予算とは、見積書や図面、仕様書、工程表などをもとに、実際の施工条件に合わせて材料費・労務費・外注費・経費を整理した、社内用の工事別原価計画です。

作成した実行予算は、工事が始まった後の実績と比較する基準としても使われます。実際に発生した原価を実行予算と照らし合わせることで、工事ごとの損益状況を早い段階で把握でき、完成してから赤字が判明するといった事態を防ぎやすくなります。

実行予算の詳しい定義や作成目的などについては、「実行予算の意味・目的や、見積り・原価との違い」で解説しています。

ここでは、実際に実行予算を作成する手順と、作成後の基本的な管理方法を中心に解説します。

 

実行予算を作る前に押さえておくべきポイント

実行予算の作成に入る前に、担当・期限・対象範囲・使用資料を確認しておくと、作業を進めやすくなります。

 

作成担当者と作成・承認までの期限を決める

実行予算の作成担当者を明確にしておきましょう。現場の状況を把握している現場責任者や施工管理者が担当するケースが多いですが、会社によって体制は異なります。あわせて、いつまでに予算案を作成し、いつまでに社内の確認・承認を得るのかという期限も、着工までのスケジュールを踏まえて先に決めておきます。

 

契約範囲と必要資料を確認する

見積書や契約書を確認し、自社が請け負う契約範囲(施工範囲、工事条件、支給材の有無など)を明確にします。そのうえで、次のような資料をそろえます。
  • 図面・仕様書(施工内容や使用材料・仕様の確認用)
  • 見積明細(積算した数量・単価の根拠)
  • 工程表(作業順序や工期の確認用)
  • 協力会社から取得した見積り
これらの資料が揃っていないまま作成を進めると、数量や単価の見落としにつながりやすいため、着手前に過不足を確認しておきます。

 

過去案件のデータと単価の基準日を確認する

過去に実施した案件の原価データがあれば、工種ごとの費用水準や材料ロスの実績を参考にできます。過去データと大きくかけ離れた数字になっていないかを確認することで、担当者の主観に偏った予算になることを防げます。

また、材料費や労務費に使う単価は、いつ時点のものを基準にするか(見積り時点か、実行予算作成時点かなど)をあらかじめ決めておきます。資材価格や労務単価は変動するため、基準日を明確にしておかないと、後から金額の妥当性を確認しにくくなります。

 

社内で使用する様式を用意する

実行予算の記載項目や様式が会社ごとに統一されていないと、案件ごとに集計方法がばらつき、比較や引き継ぎがしにくくなります。既存の社内様式があればそれを使用し、なければ次章で挙げる記載項目を参考に、あらかじめ様式を用意しておくとスムーズです。

 

実行予算の作り方

準備が整ったら、記載項目の全体像を確認したうえで、契約範囲の整理から社内承認までを、次のような流れで進めます。

 

実行予算案に記載する項目を確認する

作業に入る前に、実行予算案としてどのような表を作ることになるのか、全体像を確認しておきましょう。実行予算案には、主に次のような項目を記載します。会社の管理方法や工種、会計方針、承認体制によって、実際の項目や分類は異なるため、あくまで参考として捉えてください。
  • 工事名・工事番号
  • 契約金額
  • 工種・作業項目
  • 費目
  • 数量・単位
  • 原価単価
  • 予算金額
  • 発注先
  • 確認者・承認状況
このほか、工事が始まってからの実績金額、発注済み金額、追加・変更金額、残工事の見込み、完成時の原価予測、予算との差額といった項目もあわせて用意しておくと、作成後の管理にそのまま活用できます。記載項目の形が見えたら、実際の入力作業へ進みます。

 

契約範囲と工種・作業項目を整理する

まず、契約範囲と工事条件をあらためて確認したうえで、工事内容を工種・作業項目単位に分解します。この単位が、以降の数量確認や費用算定、実績との比較の基本単位になります。工種・作業項目ごとに予算を入力する単位まで整理できたら、数量と費用の算定へ進みます。

 

数量を確認し、材料費・労務費・外注費・経費を算定する

工種・作業項目ごとに、必要な数量を確認します。見積り段階の設計数量と、実際に現場で調達・使用する所要数量には差が出やすいため、見積明細をそのまま転記するのではなく、施工条件や実際の発注・施工方法を踏まえて、必要となる数量を確認します。

数量が固まったら、材料費・労務費・外注費・経費を費目ごとに算定します。外注費は、協力会社から取得した見積りや過去の発注実績を確認し、施工範囲や条件をそろえたうえで予算額を決めます。案件によっては複数社から見積りを取って比較することもありますが、必ずしもすべての案件で行うとは限りません。材料費や労務費は、前章で確認した基準日時点の単価を使用します。

社内で費目の分類ルールを統一しておくことも重要です。同じ費用を材料費と経費の両方に計上してしまうなど、同じ費用を複数の区分に重複して計上すると、工事全体の原価が実態より大きくなり、費目別の比較も正しく行えなくなります。分類に迷いやすい費用は、どの費目へ計上するかを社内で決め、担当者間で共有しておきましょう。各費目の予算額を整理できたら、材料ロスや価格変動などの条件を反映する段階に進みます。

 

材料ロスや価格変動、現場条件、予備費を反映する

算定した金額に、必要に応じて次のような要素を反映します。
  • 材料の加工ロスや損傷による使用不可分(材料ロス)
  • 資材価格や労務単価の変動リスク
  • 現場特有の条件(狭小地、夜間工事、仮設の制約など)
  • 不測の事態に備えた予備費
予備費をどの程度見込むかは工事の内容やリスクの大きさによって異なるため、一律の金額や割合を機械的に当てはめるのではなく、案件ごとに判断します。

 

受注金額と予算原価を比較する

材料費・労務費・外注費・経費・予備費を積み上げた金額(予算原価)と、受注金額を比較します。受注金額から予算原価を差し引いた金額が、その工事で見込む予定利益です。ただし、実行予算に含める費用の範囲は会社によって異なるため、自社の管理ルールに基づいて確認します。

想定より予定利益が小さい、あるいは赤字に近い場合は、次のような点を確認します。
  • 数量や単価に漏れ・重複がないか
  • 施工方法や発注条件は妥当か
  • 契約範囲に認識違いがないか
これらを確認したうえで、見直せる部分があれば対応を検討します。未確認の数量・単価・施工条件が解消できたら、現場とのすり合わせ・社内承認へ進みます。

 

現場担当者とすり合わせ、社内で確認・承認する

予算案ができたら、実際にその工事を担当する現場責任者に内容を確認してもらいます。現場の実情と数字が合っているかをすり合わせることで、精度が上がるとともに、現場側にも予算への意識を持ってもらえます。

すり合わせが終わったら、社内の承認ルールに沿って確認・承認を受け、関係者へ共有します。承認された時点の予算が「当初予算」となり、以降の工事中の管理はこの当初予算を基準に行います。

 

実行予算を運用する際の注意点

実行予算は、作成して承認を得たら終わりではありません。工事が進む中で実績と比較しながら、当初予算を基準に管理を続けることが重要です。

 

当初予算を残し、追加・変更工事は分けて管理する

承認された当初予算は、上書きせずにそのまま残しておきます。設計変更や施主からの追加依頼が発生した場合は、当初予算を直接書き換えるのではなく、追加・変更分として別に記録します。こうすることで、当初の計画からどれだけ変動したのかを後から確認できます。

 

発注済みだが未請求の原価と、残工事に必要な原価を確認する

工事の途中では、すでに発注済みだが請求がまだ届いていない費用や、これから発生する残工事分の費用が残っています。実績として計上済みの金額だけを見ていると、発注済み未請求分や残工事分が反映されず、完成時の原価の着地見込みを捉えにくくなります。

 

完成時の原価・利益を予測し、差異を確認する

これまでの実績と、発注済み未請求分、残工事の見込みを合わせることで、完成時点でどのくらいの原価・利益になりそうかを予測できます。この予測値を当初予算と比較し、差異が大きい場合は、原因が現場の条件変化にあるのか、当初の見積り・予算作成の段階にあったのかを確認します。

確認した差異の原因は、その場限りで終わらせず、次回以降の見積りや実行予算の作成に反映していくことで、予算の精度を継続的に高めていくことができます。

 

実行予算の作成・管理を効率化する方法

実行予算の作成と運用は、確認すべき情報が多く、案件数が増えるほど手間もかかります。効率化の方向性は、主に次の2つです。

 

社内の様式・入力ルールを統一する

まず取り組みやすいのが、社内で使用する様式や費目・入力ルールの統一です。案件ごとに項目名や分類の仕方がばらばらだと、比較や集計のたびに手直しが必要になります。様式とルールを揃えておくだけでも、作成・確認にかかる手間は減らせます。

 

案件数や管理体制に応じてExcelとシステムを使い分ける

案件数が少なく、管理する担当者も限られている場合は、Excelから管理を始める方法もあります。ただし、Excelで十分に対応できるかどうかは、案件数だけでなく、入力項目の多さ、担当者間での共有方法、更新頻度、管理体制によっても変わってきます。

Excelでの工事台帳の作成・運用方法は、「工事台帳をExcelで作成する方法」解説しています。

一方、案件数が増えたり、複数の担当者が同時並行で管理したりする場合は、Excelでの管理が難しくなることがあります。工事ごとにファイルが分散して転記の手間が増えたり、担当者間で最新版の共有がしにくくなったりするためです。こうしたケースでは、原価管理システムの導入も選択肢になります。

建設業向け工事台帳・原価管理システム「要 ~KANAME~」では、工事ごとの情報を工事台帳としてまとめて管理できます。日報に入力した内容から材料費・労務費を計上できるため、費目ごとの原価を確認する際の転記の手間を抑えやすくなります。工事ごとの原価や利益を確認しやすくしたい場合の選択肢として検討してみてください。

 

まとめ

実行予算を作成する際は、まず作成担当者・作成期限・使用する社内様式を決めたうえで、契約範囲と必要資料を確認することから始めます。そのうえで、記載項目の全体像を確認し、工種・作業項目ごとに数量を確認して材料費・労務費・外注費・経費を算定し、現場とのすり合わせを経て社内の承認を得ることで、実行予算案が完成します。

承認された実行予算は当初予算として残し、工事中は追加・変更工事や発注済み未請求分、残工事の見込みを区別しながら、完成時の原価・利益を予測し、差異を確認していきます。

まずは自社で使っている資料や様式を確認するところから、実行予算の作成に着手してみてください。

 

実行予算の作り方に関するよくある質問

Q1:実行予算は誰が作成しますか?

実行予算は、現場の施工条件や作業内容を把握している現場責任者や施工管理者が中心となって作成することが一般的です。

ただし、会社によっては積算担当者や管理担当者が作成し、現場責任者や経営者が内容を確認・承認する場合もあります。作成を始める前に、作成担当者だけでなく、確認者・承認者まで決めておくことが重要です。

 

Q2:見積書の金額をそのまま実行予算に使えますか?

見積書は実行予算を作る際の基礎資料になりますが、金額をそのまま転記するだけでは十分ではありません。

契約範囲や図面、仕様書、工程表、協力会社の見積りなどを確認し、実際の施工条件に合わせて数量・単価・材料ロス・現場条件などを反映する必要があります。

 

Q3:工事中に追加・変更工事が発生した場合、実行予算はどう管理しますか?

承認された当初予算は上書きせず、追加・変更工事の金額を別に記録します。

当初予算と追加・変更分を分けて管理することで、当初の計画から何が変わり、完成時の原価や利益へどの程度影響するのかを確認しやすくなります。

 

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