- 2026年01月08日
工事原価を低減する方法とは?ムダを減らし利益体質をつくる実践ポイント
建設業に関する知識

建設業界において、プロジェクトを成功に導き、安定した利益を確保し続けるためには、適切な原価管理とコスト削減が不可欠です。近年、新型コロナウイルスの影響や世界情勢の不安定化により、鋼材や木材といった資材価格が高騰し、労務費の上昇も相まって、建設業者は深刻なリスクに直面しています。
特に中小企業における建設業の営業利益率は1〜4%程度と非常に低く、工事価格の9割以上が原価や販管費などのコストで占められているのが現状です。このような低利益率の構造下では、わずかな原価の膨らみが企業の経営基盤を揺るがしかねません。
この記事では、工事原価を低減し、利益の出る体質へと改善するための具体的な方法や、現場・事務作業それぞれの視点での改善ポイントを詳しく解説します。また、原価を視える化し、迅速な経営判断を支援する原価管理システムの活用についてもご紹介します
コンテンツ
工事原価が下がらない建設会社に共通する課題
多くの建設会社が「利益が残らない」という悩みを抱えていますが、その原因は単なる外的な要因だけではなく、以下のように社内の管理体制に起因する場合も少なくありません。原価構造が把握できていない
工事原価を低減できない会社では、まず自社の原価構造がどうなっているかを正確に把握できていない傾向があります。材料費、労務費、外注費、経費といった原価の構成要素は、工事ごとに異なり、極めて複雑かつ流動的です。何にいくらかかっているのかという詳細な内訳が不透明なままでは、どこを削るべきかの判断もできません。
現場ごとの数字が見えていない
複数の現場を抱えている場合、会社全体の数字は追えていても、個別の現場ごとに利益が出ているかを把握できていないケースが見られます。現場単位での収支が視える化されていないと、赤字を出している現場が黒字の現場の利益を食いつぶしていることに気づかず、対策が後手に回ってしまいます。
問題点に気づくのが工事終了後になる
原価管理が不十分な会社では、最終的な原価が確定するのが「工事がすべて終わった後」になりがちです。工事が終わってから赤字だったことに気づいても、その工事の利益を回復させる手立てはありません。本来であれば、工事の進行中に予算と実績を比較し、異常を早期に察知する必要があります。
感覚的な管理に頼っている
「これまでの経験上、このくらいの予算で収まるだろう」といった、経営者や現場責任者の「感覚」に頼った管理も、原価が下がらない大きな要因です。過去のデータを客観的に分析せず、どんぶり勘定で見積り作成を行っていると、予期せぬ資材高騰や工期遅延が発生した際に対応できず、容易に予算オーバーを招きます。
コストが増加しやすい工事原価
建設業におけるコスト削減を考えるうえで、まずはどの項目にコストがかかり、どこが増加しやすいのかを理解することが重要です。材料費
材料費は工事原価の大部分を占めるため、その変動は利益に直結します。近年、鋼材や木材の価格が高騰しており、これらをいかに適正な価格で仕入れ、現場でのロス(無駄)を減らすかが課題となっています。労務費
自社の職人や作業員にかかる労務費も、原価管理において極めて重要な項目です。建設業界では人材不足が深刻化しており、一人あたりの人件費は上昇傾向にあります。生産性が低く、同じ作業に多くの時間を要すれば、その分労務費が膨らみ、利益を圧迫します。外注費
土木工事や公共工事などでは、多くの作業を下請け会社に依存することがあります。外注費の適正な管理が行われていないと、必要以上の費用を支払っていたり、逆に下請け会社との連携不足による手戻りが発生したりして、追加費用が発生する原因となります。間接費
現場事務所の維持費や交通費、事務スタッフの人件費などの間接費(経費)も見逃せません。一つひとつの金額は材料費や労務費に比べて小さくても、積もり重なれば大きな負担となります。特に、非効率な事務作業による残業代などは、目に見えにくい「ムダ」として蓄積されます。工事原価を低減するための基本的な考え方
体的な手法に入る前に、コスト削減に取り組む際の基本姿勢を整える必要があります。コスト削減=値下げではない
コスト削減と聞くと、単に「仕入れ先を叩く」「安価で質の低い材料を使う」といったイメージを持つかもしれませんが、それは間違いです。品質を落としてしまえば、将来的なクレームや手戻りが発生し、かえって高くつくことになります。品質を維持しながら無駄を省く「VE(バリュー・エンジニアリング)提案」の視点が重要です。
管理できていないものは改善できない
「管理できないものは改善できない」という言葉通り、まずは現状の原価を正確に記録し、管理する仕組みを作ることが第一歩です。現状の数値が正確に把握できて初めて、どの工程に無駄があり、どの業者に改善を求めるべきかが明確になります。短期ではなく継続視点が重要
一時的にコストを抑えることは可能ですが、利益体質を作るためには継続的な取り組みが必要です。一度の見直しで終わらせず、常に最新の資材価格や施工手順を分析し、改善し続けるサイクル(PDCA)を社内に根付かせることが求められます。
正確な状況把握が第一歩
コスト削減の実行には、まず自社の現状を客観的に把握し、課題を見つけ出すことが不可欠です。基本予算、実行予算、そして実際の工事原価を比較し、どこで乖離が生じているのかを突き止めることからすべてが始まります。工事原価を低減する具体的な方法
ここでは、現場の運用において実践できる具体的なコスト削減策を解説します。見積りと実績の差異を把握する
最初に作成した見積書や実行予算と、実際に発生した原価(実績値)を比較することは、原価管理の基本です。差異が発生している場合、その原因が「見積りの甘さ」にあるのか、「現場での不手際」にあるのかを分析することで、次の対策が明確になります。
現場別に原価を集計・比較する
工事ごとに原価を集計し、現場別の利益率を比較します。特定の現場だけ利益率が低い場合、その現場特有の問題(地盤の悪さ、特定の業者の効率不足など)を特定できます。また、同様の工事内容で利益率が高い現場があれば、その施工方法を他の現場へ展開することも可能です。
原価の異常値を早期に発見する
工事の途中で材料費が急騰したり、工期が遅れて労務費が増大したりした際、その「異常値」をリアルタイムで発見できる体制を整えます。早期に発見できれば、資材の代替案を検討したり、人員配置を見直したりすることで、被害を最小限に食い止めることができます。過去データを次の見積りに活かす
過去の工事で蓄積された原価データを分析し、次の見積り作成に反映させます。過去の実績に基づいた精度の高い見積りを行うことで、受注時点での「赤字受注」を防ぎ、確実に利益が出る工事のみを選別することも可能になります。Excelや手作業管理の難しさ
多くの建設会社がいまだにExcelや手書きの工事台帳で管理を行っていますが、これには次のように多くの限界があります。集計作業に時間がかかる
Excelでの管理は、現場から上がってくる請求書や日報のデータを手入力する作業に膨大な時間を要します。複雑な原価計算をすべて手作業で行うと、事務担当者の負担が重くなり、本来注力すべき分析業務に時間が割けなくなります。
入力ルールが属人化する
Excel管理の多くは、作成した担当者にしかわからない計算式やルールで運用されています。担当者が不在の際や退職した際に、データが追えなくなる「属人化」のリスクが常に付きまといます。データの信頼性が下がる
手入力にはミスがつきものです。入力ミスや計算ミスが含まれたデータでは、正確な経営判断は行えません。また、データの更新漏れが発生しやすく、最新の状況を把握することが困難になります。
経営判断が遅れる
データの集計に時間がかかれば、経営者が数字を確認できるのは月締めが終わった後など、かなり時間が経ってからになります。現場でトラブルが発生していても、数字として現れるのが遅いため、迅速な意思決定ができず、損失を拡大させる要因となります。工事原価低減を実現する仕組みづくり
非効率な管理から脱却し、利益を最大化するためには、ITツールを活用した仕組みづくりが有効です。現場別にリアルタイムで把握
ITツールを導入することで、現場で発生した原価情報をリアルタイムで集約できます。経営者や現場責任者は、事務所にいながら各現場の進捗と原価の推移をいつでも確認できるようになります。原価管理を日常業務に組み込む
原価管理を「特別な作業」にするのではなく、日々の事務作業の中に組み込むことが重要です。例えば、見積書を作成する段階で実行予算を組み、発注や支払いのデータと自動で紐づく仕組みを作れば、意識せずとも正確な原価管理が継続できます。
継続的な原価低減を実現する
システムに蓄積された膨大なデータを分析することで、将来のリスク予測や施工手順の改善が可能になります。この「データの蓄積と分析」のサイクルを回し続けることで、企業としての競争力が向上し、継続的な原価低減が実現します。「要 〜KANAME〜」で原価を視える化
建設業に特化した原価管理ソフト「要 〜KANAME〜」は、まさにこれらの課題を解決するための強力なソリューションです。「要 〜KANAME〜」は、工事台帳をベースにしてすべての現場を一元管理し、原価の視える化を実現します。
- 現場別の利益把握:各工事の予算と実績をリアルタイムで比較し、利益率を即座に算出します。
- 経営分析と生産性向上:蓄積されたデータを元に、どの工種で利益が出ているか、どの業者の効率が良いかを分析し、経営判断をサポートします。
- 異常値の早期発見:コストの突出した異常値をいち早く察知し、対策を講じることを可能にします。
工事原価の低減方法についてよくある質問
Q1. 建設業において、コスト削減が特に重要視されるのはなぜですか?
建設業は他業界に比べて営業利益率が非常に低く、工事価格の約95%が原価や販管費として消費される構造だからです。わずかなコスト増加が赤字に直結するため、資材高騰や人件費上昇といったリスクに対応し、経営を安定させるには徹底した原価管理が不可欠です。
Q2. 建設業のコストを削減するために、まず何から手をつけるべきですか?
まずは自社の現状を把握し、課題を見直すことから始めましょう。特に固定費(通信費、修繕維持費など)は、一度削減すれば継続的な効果が得られるため、優先的に無駄を省くことが推奨されます。また、原価の多くを占める材料費については、品質を維持しつつ仕入れルートを見直す努力が必要です。
Q3. 原価管理システムを導入するメリットは何ですか?
主なメリットは、現場別の原価を詳細に記録・分析することで無駄な支出を特定できること、損益分岐点を正確に把握して採算性の高い受注計画を立てられること、そしてリアルタイムな情報共有により経営判断が迅速化することです。また、事務作業の自動化により経理担当者の負担が軽減され、生産性が向上します。
Q4. 建設業のDX化・IT化は、具体的にどのようなコスト削減に繋がりますか?
契約手続きの電子化による印紙税の削減や、情報共有ツールの導入による連絡のムダの削減などが挙げられます。また、建設業向け原価管理ソフト「要 〜KANAME〜」を活用すれば、データが一元管理でき、作業時間の短縮とミス防止が同時に実現できます。Q5. 材料費のコスト削減を行う際の注意点はありますか?
最大の注意点は「品質の低下」を招かないことです。コスト削減を急ぐあまり、材料の質を落として顧客の信頼を損なえば、かえって大きな損失につながります。中間業者を省く直接仕入れの検討や、複数業者の相見積りによる比較など、品質を維持したまま経済的な選択をする「VE提案」の姿勢が求められます。






