独立して自分の看板を掲げたばかりころ、希望に満ち溢れている反面、不安な気持ちもあるのではないでしょうか。
「よし、これから頑張るぞ!」と意気込んだ矢先に、元請けから「この工事、もっと早くできない?」とか、「他のところはもっと安くやってくれるんだけどな…」と言われて困っていませんか?
もしそうなら、今まさに、工期ダンピングという落とし穴の入り口に立っているのかもしれません。
この記事では、水道工事店として独立した方が、この厄介な問題にどう向き合い、どう乗り越えていくべきか、具体的な方法を解説していきます。
「工期ダンピング」って何?独立したてが知っておくべき基本のキ
工期ダンピングとは、一言でいえば「常識的に考えて無理な短い工期を要求すること」です。
一般的に「ダンピング」は、採算度外視の安値で受注することを指しますが、工事の世界では安さだけでなく、無理な短納期もセットで考えられます。
たとえば、通常なら5日かかる給排水管の引き直し工事を、「ウチは3日で終わらせてほしいんだよね」と元請けから言われたとします。
なんとか期待に応えようと、無理なスケジュールで工事を進めるかもしれません。しかし、これがまさに工期ダンピングです。
なぜ工期ダンピングが起きるのか?業界構造と失敗談・成功談
なぜ、このような工期ダンピングが起きるのでしょうか。主な原因は、工事を下請けに丸投げする元請け(ゼネコン、ハウスメーカーなど)の都合にあります。
元請けは、施主や発注者から工事を請け負いますが、自社の利益を最大化するために、下請けに支払う費用をできるだけ抑えようとします。その手段が、工期や金額のダンピングです。
この無理な要求に安易に応じてしまうと、どうなるか。
以前、同じような状況になったある水道工事業者の話ですが、無理な工期に応じてしまった結果、睡眠時間を削って急いで作業したそうです。しかし、配管の締め込みが甘くなり、後日水漏れを起こしてしまいました。結局、無償で再工事をする羽目になり、利益はゼロどころか、元請けからの信頼も失いかけたといいます。
一方で、勇気を出してきっぱりと工期の延長を提案した別の業者は、最初は難色を示されたものの、安全性を重視する姿勢を評価され、それ以降は安心して仕事を任せてもらえるようになったそうです。
見積り時にチェックしたい「工期ダンピング」チェックリスト
工期ダンピングに巻き込まれないためには、仕事を受ける前の段階で見抜くことが重要です。次のチェックリストで、元請けからの依頼を冷静に判断しましょう。
- 工事内容に対して、明らかに短い工期を提示されていないか?
- 「とにかく安く、早く」という言葉を繰り返し使ってこないか?
- 他社を例に出して、「他社はもっと安くやってくれるよ」と交渉してこないか?
- 詳細な図面や仕様書がなく、口頭で「だいたいこんな感じで」と曖昧な指示ばかりではないか?
- 過去に請け負った同規模の工事と比較して、工程に無理がないか?
もし、これらの項目に複数当てはまるようなら、その元請けは注意が必要かもしれません。
「早くして!」をスマートにかわす3つの切り返しトーク術
「この工事、もっと早く終わらせられない?」と元請けから言われたとき、どう返答すればいいのでしょうか。感情的にならず、根拠をもって断ることが大切です。
対応法①:具体的にかかる時間を伝える
「かしこまりました。ただ、この工事は、配管の切り回しに〇時間、水圧テストに〇時間、そして清掃と確認に〇時間…と、安全に施工するために最低でも〇日間はかかります。もし短縮してしまうと、手抜き工事につながるリスクがあります。」
このように、具体的な作業工程とそれに伴う時間を提示することで、ただ「できません」と断るよりも説得力が増します。
対応法②:短縮した場合のリスクを伝える
「もし無理に工期を短縮すると、配管のつなぎ目に緩みが生じるなど、将来的に水漏れを引き起こす危険性があります。お客様の大切な家を守るためにも、十分な時間をいただきたいと考えております。」
「お客様のため」「安全のため」という視点で話すと、相手も無理な要求をしにくくなります。
対応法③:人件費・コスト増を冷静に提示する
「工期を短縮するためには、作業員を増やす必要があります。それに伴い、人件費や追加の資材費が発生するため、当初の見積もり金額では対応できかねます。
もし、それでも早めの完了をご希望でしたら、改めてお見積りを作成させていただきます。」 この方法は、元請けの「安く済ませたい」という本音を逆手に取るものです。工期短縮にはコストがかかることを明確に伝え、交渉の主導権を握りましょう。
【安さ・早さより信頼を】「選ばれる水道屋さん」になるための第一歩
独立したての方は、これからたくさんの元請けや顧客と出会うでしょう。
安さや早さでなく、安全で質の高い工事を提供することに誇りを持つことが、長く続く水道屋さんになるための第一歩です。無理な要求を断ることは、自分自身の技術やプライドを守ること。そして何より、お客様の安全を守ることにつながります。
誠実な姿勢で仕事に取り組んでいけば、必ず仕事ぶりを評価してくれる元請けやお客様と出会えます。
さあ、自信をもって「正しい工期」を伝えていきましょう。
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このページでは、
- まず何を準備すればいいか
- お客様をどう見つけ、どう信頼を得るか
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独立したてで「これからどう動けばいいか」に悩んでいる方はぜひご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 元請けとの関係が悪くなるのが怖くて、断りきれません。どうしたらいいですか?
A. 相手を尊重しつつ、冷静に、かつ具体的に説明することが大切です。「断る=関係悪化」ではありません。自分自身の専門家としてのプロ意識を伝え、品質と安全を最優先する姿勢を見せれば、誠実な元請けであれば必ず理解してくれます。むしろ、無理を聞いて品質を落とす方が、将来的に信頼を失うリスクが大きいです。
Q. 小さな仕事でも、無理な工期を要求されたら断るべきですか?
A. 工事の規模に関わらず、無理な工期は引き受けない方が良いでしょう。小さな仕事での手抜きやミスが、大きなトラブルにつながることもあります。プロとしてのプライドを保ち、丁寧な仕事を心がけることが、長期的な信頼獲得につながります。
Q. 相場がわからず、自分の設定した工期や金額に自信が持てません。
A. 独立したばかりの頃は、誰もが通る道です。まずは、信頼できる同業の先輩や、地域の組合などに相談してみるのも一つの手です。また、過去の工事実績を記録しておき、どの作業にどれくらいの時間がかかったかをデータとして蓄積していくことで、徐々に自分の基準が確立されていきます。
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