「安定した仕事が欲しい」「もっと大きな案件に挑戦したい」とお考えの水道工事店の皆さん、民間工事だけでは事業の限界を感じていませんか?実は、「公共工事」という選択肢が、あなたの事業を大きく変えるかもしれません。
しかし、公共工事を受注するには、乗り越えるべき壁があります。それが「経営事項審査(経審)」です。「難しそう」「うちには関係ない」なんて思っていませんか?実は、これはあなたの事業を飛躍させる大きなチャンスなんです。
この記事では、独立間もない方や、これから公共工事を目指す水道工事店の皆さんのために、経営事項審査の基本からメリット、具体的な流れまでを分かりやすく徹底解説します。
「経営事項審査」とは何か?
経営事項審査とは、国や地方公共団体などから発注される公共工事を直接請け負おうとする建設業者が、必ず受けなければならない審査です。
その目的は、発注者が建設業者の「経営状況」「経営規模」「技術力」「社会性」などを客観的に評価し、公正な入札に役立てるため。つまり、公共工事の発注者が、健全で信頼できる業者を選ぶためのものなんです。
「でも、うちは水道工事店だから関係ないんじゃない?」と思われたかもしれません。水道施設工事も建設工事の一種であり、公共工事として発注されることがある。そのため、公共工事の入札に参加する場合は経営事項審査が必要です。
公共工事を受注するメリットは?経審がもたらすあなたの事業への影響
公共工事を受注するメリットは下記のようなことが挙げられます。
- 安定した受注の確保
民間工事は景気の波に左右されがちですが、公共工事の発注元は国や自治体なので、倒産リスクが民間発注より比較的低い傾向があります。計画的な発注が見込めるため、経営の安定に大きく貢献します。 - 事業規模の拡大と信頼性の向上
大規模な工事に挑戦できる機会が増えます。公共工事の実績は、あなたの会社の社会的信用を飛躍的に高めます。これは、銀行からの融資などにも有利に働く場合があります。 - 安定した経営基盤の確立
民間工事と公共工事をバランス良く受注できるようになれば、景気変動に強い盤石な経営体質を築けます。これにより、従業員の雇用安定にも繋がるでしょう。
「経営事項審査」で評価されるポイント
経営事項審査では、あなたの会社が総合的に評価され、「総合評定値(P点)」として点数化されます。このP点が高いほど、より規模の大きな公共工事の入札に参加できるようになります。P点は、以下から構成されています。
- X1:完成工事高
過去にどれだけ工事を請け負ってきたか、会社の規模を示す最も分かりやすい指標です。 - X2:自己資本額・職員数
会社の自己資本(自己資金)の多さや、常勤の職員数など、会社の体力や規模が評価されます。 - Y:経営状況分析
会社の財務諸表を基に、負債抵抗力や収益性、財務健全性などが分析されます。いわば、会社の健康状態を測る指標です。 - Z:技術職員数・元請完成工事高
工事に必要な資格を持つ技術職員の数や、元請けとして行った工事の完成工事高が評価されます。水道工事店であれば、指定給水装置工事主任技術者や排水設備工事責任技術者などの資格を持つ人材が重要になります。 - W:その他(社会性等)
以下の項目などで、企業の社会的な側面が評価されます。- 労働福祉の状況(社会保険・労災保険・雇用保険への加入状況)
- 営業継続年数
- 若年技術者の育成状況
- 防災協定の締結
- 法令遵守の状況
- 建設業経理事務士の有無
- 研究開発費の投入
- 建設機械の保有状況
- ISO等の国際標準化機構規格登録状況
特に、独立・創業まもない水道工事店の方は、「技術職員」の要件や社会保険への「適切な加入」など、「社会性」の項目を意識することが重要になります。
経営事項審査の申請から公共工事受注までの道のり
「複雑そう…」と感じるかもしれませんが、全体の流れを把握すれば、計画的に準備を進められます。
- 建設業許可の取得
公共工事を受注するには、まず建設業許可を取得していることが大前提です。まだの方は、まずここから始めましょう。 - 決算変更届の提出
毎事業年度終了後、建設業許可を受けた行政庁に、決算状況を報告する書類を提出します。これが経営事項審査の基礎情報となります。 - 経営状況分析の申請(Y点)
登録経営状況分析機関に、財務状況の分析を依頼します。ここでY点が算出されます。 - 経営規模等評価の申請(X1, X2, Z, W点)
許可を受けている行政庁に、X1、X2、Z、W点に関する書類を提出し、審査を受けます。 - 総合評定値通知書の取得
上記2つの審査が完了すると、総合評定値(P点)が記載された通知書が交付されます。これが公共工事の入札資格申請に必要な書類です。 - 入札参加資格申請
P点通知書を持って、公共工事を受注したい国や地方公共団体に「入札参加資格申請」を行います。これが完了すれば、晴れて入札に参加できるようになります。 - 公共工事の入札・受注
各機関の入札情報サイトなどで、募集中の公共工事を探し、入札に参加します。
この全プロセスには、一般的に数ヶ月かかります。また、経営事項審査の有効期間は、審査基準日(通常は決算日)から1年7ヶ月と定められています。継続的に公共工事を受注するためには、毎年受審する必要があるので、早めの準備を心がけましょう。
独立・創業まもない水道工事店が疑問に思うことQ&A
Q1: 独立したばかりで実績が少ないのですが、経営事項審査は受けられますか?
A: はい、受けられます。ただし、完成工事高(X1点)が低い場合など、評価項目によっては点数が低くなる可能性があります。しかし、社会性(W点)や技術者要件(Z点)などで加点を目指すことも可能です。まずはチャレンジすることが大切ですす。
Q2: 建設業許可は取ったばかりですが、すぐに経審を受けられますか?
A: いいえ、経営事項審査は原則として直前の決算期が審査基準日となるため、建設業許可を取得していても、一度決算期を迎える必要があります。そのため、新規に許可を取得したばかりの会社は、最初の決算が到来するまで待つ必要があります。
Q3: 経審を受けるのに、どれくらいの費用がかかりますか?
A: 主に以下の費用がかかります。
- 登録経営状況分析機関への手数料:数万円程度(依頼先による)
- 経営規模等評価・総合評定値申請手数料:1万円前後+業種追加ごとに数百円程度
- 行政書士等への依頼費用:10万円〜20万円程度(書類作成代行やアドバイスを含む場合)
上記はあくまで目安ですが、全てを自分でやれば費用は抑えられるため、時間と手間を考えると専門家に依頼するメリットは大きいです。
Q4: 必要な書類が多くて複雑そうですが、自分でできますか?
A: はい、ご自身で申請することも可能です。ただし、提出書類が多く、記載内容も専門的で複雑なため、不備があると何度もやり直しになる可能性があります。時間や本業への影響を考えると、行政書士などの専門家に依頼することも検討してみることをおすすめします。
Q5: 公共工事の入札って、どうやって探すんですか?
A: 各地方公共団体や国の機関が運営する入札情報サイトで公開されています。例えば、国土交通省の「GEPS(政府電子調達システム)」や各自治体の調達情報ページなどで探すことができます。入札参加資格を取得した後、具体的な案件をチェックしましょう。
経営事項審査を成功させるための準備とポイント
スムーズに経営事項審査を乗り越え、公共工事受注に繋げるためには、日頃からの準備が重要です。
- 財務状況の健全化: 負債を減らし、自己資本を増やすなど、会社の財務状況を健康に保ちましょう。これはY点の評価に直結します。
- 技術者の育成・資格取得: 指定給水装置工事主任技術者や排水設備工事責任技術者など、関連資格を持つ技術者の確保・育成はZ点に大きく影響します。
- 社会保険への適切な加入: 健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険への加入は、社会性(W点)の重要な評価項目です。未加入がないか確認しましょう。
- 書類の整理と保管: 経審では多くの書類提出が求められます。日頃から帳簿付けや契約書、領収書などの整理を徹底し、いつでも提出できる状態にしておきましょう。
「経営事項審査」は、多くの水道工事店にとって慣れない手続きかもしれません。しかし、これらは「面倒な手続き」ではなく、あなたの事業を次のステージへ引き上げるための重要な投資です。
まとめ:公共工事への挑戦で、あなたの水道工事店を次のステージへ!
経営事項審査は、公共工事を受注し、事業を安定・拡大させるための必須ステップです。独立・創業間もない小規模な水道工事店であっても、適切な準備と理解があれば十分に公共工事への道は開けます。
最初は戸惑うこともあるかもしれませんが、安定した受注や会社の信頼性向上といった大きなメリットは、その手間を補って余りあるものです。
この機会に、ぜひ公共工事への挑戦を具体的に検討してみませんか?疑問や不安があれば、専門家への相談も有効な手段です。
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